… … …(記事全文13,956文字)● 日増しに狂気が進む第2次トランプ政権と向き合う
今月もまた前後篇2回にわたってアメリカの政治・経済・社会・外交軍事の腐敗堕落ぶりをお伝えします。
就任後わずか2ヵ月強で狂気をますます募らせている第2次トランプ政権を代表するふたりの人物、ドナルド・トランプとイーロン・マスク、そして現代アメリカ社会がいかに病んでいるかを象徴するアレックス・カープについて、北米大陸と南アフリカの政治・社会思想史にも踏みこんで考察します。
この3人のうち、アレックス・カープは、日本ではあまりご存じない方が多いかもしれません。「人間には優等人種と劣等人種があり、西欧系白人とユダヤ人は優等人種で、それ以外は皆殺しにしてもかまわない劣等人種だ」と公言して、米株市場とプアホワイトのあいだで絶大な人気を博している狂人です。
そして今回のサムネイルまん中に描かれているのは、まだ大統領選たけなわだった去年秋の『ジ・アトランティック』誌の表紙です。檻に入れた巨象を積んだ馬車の御者になったトランプが、馬車馬を鞭打ってホワイトハウスに向かっている場面です。
「部屋の中の巨象」とは、みんなが存在を知っているけれども、口に出して指摘するのが怖い事実を意味します。トランプがホワイトハウスに住み着かせようとしているこの巨象はいったい何者なのかというのが2回連載の中心テーマです。
第2次トランプ政権がいかに凶悪で狂暴かについては、堂々とアメリカ合衆国大統領と名乗った上でトランプがトゥルース・ソーシャルに投稿したガザ住民への最後通告をご覧ください。
トゥルース・ソーシャルとは、まだイーロン・マスクに買収されてXと改名する前のツィッターで自分のアカウントが凍結されていた頃、お手盛りでつくったSNSのことです。
いやしくも一国の元首ともあろうものがここまで露骨に脅迫と恫喝を記録に残すものだろうかと我が眼、我が耳を疑うようなことばが次々に飛び出してきますので、原文と対訳双方を掲載しておきます。
バイデン政権の頃は「民主党は弱者・マイノリティの味方」という偽善もあって、なんとかイスラエル政府・軍・民間人がパレスチナ人に対しておこなっている残虐行為を否定しようとして苦しまぎれのウソをついてきたのですが、トランプにはその気配もありません。
「今やヨーロッパ系白人と同等の優等人種に昇格させてやったユダヤ人ひとりの命にはアラブ系イスラム教徒千人分、一万人分の価値があるのだから、ユダヤ人にテロ攻撃を仕掛けるような連中は皆殺しにして当然だ」と心の底から信じているのです。
こうしたトランプの強硬姿勢については「長年本業としてきた不動産屋の交渉術として、最大限のハッタリを噛まして相手から譲歩をもぎ取るための演技であって、本心からパレスチナ人など皆殺しでかまわないと思っているわけではない」との擁護論もあります。
完全に間違っています。たとえ同じように見える相手から譲歩を引き出すためのハッタリであっても、トランプは交渉相手がヨーロッパ系白人キリスト教徒のときと、相手が非白人で「邪教」の信者のときではレトリックがまったく違うのです。
念のため申し添えておきますと、連邦議会議員以上の公職に就いている政治家たちはほぼ全員イスラエルロビーから巨額のワイロを受け取っているので、イスラエルの命令には全面服従ですから、ユダヤ系との交渉はありません。
我々日本人は相手が非白人、非キリスト・ユダヤ教徒であれば平然と「皆殺しにするぞ」と脅しても良心が咎めない人たちがヨーロッパ系キリスト教徒の中にけっこう大勢いるという事実を奇異に感じ、そんなはずはないと思いたがります。
ですが、トランプ的な白人は非ヨーロッパ系で白人ではない異教徒について、相手が自分自身の意思や感情を持っているという認識がなく、自分の偏見に満ちた世界観で「こう思っているはずだ」と憶測したことがそのまま真実だと思いこんでいるのです。
ハッタリを噛ませるとき以外にも自分の本心を隠したほうが得なこともある程度の認識もないトランプは、このところひんぱんに「非白人非キリスト教徒には自分の意思や感情がない」という趣旨の発言をくり返しています。
「人間の10人や20人殺したところで、反対派を全部追い出して地上げの既成事実さえつくってしまえば、こっちのもんだ」と思っていた悪徳不動産屋の頃から倫理的に成長した気配はまったくありません。
当時そのままのゴロツキ不動産屋として大統領になり上がり、「パレスチナ人の10万人や20万人殺したところで、地上げの既成事実さえつくってしまえばこっちのもんだ」と平然とうそぶいているのです。