Foomii(フーミー)

世界情勢ブリーフィング

JD(国際政治・経済の研究者、作家、元外交官)

JD

本メルマガでは世界情勢を読み解くためのポイントを解説します。

私は、外務省、外資系組織等で勤務した後、研究者・コンサルタントになりました。現在は執筆、講演、企業のアドバイザー活動等を行っています。

官庁と外資系組織では、主に米国とアジアを担当しました。外交と国際的なビジネスの最前線で活動しながら、情報収集・分析を行い、政府首脳や外資系企業・金融機関の方々に向けたブリーフィングを行いました。

米国の大学院を修了し(国際政治学)、米国、中国、英国で数年間勤務したことがあります。英語、中国語、スペイン語を習得し、これまで70か国以上を訪問しています。現在も、米国、アジア、中東を中心に、頻繁に現地に出張して調査を行っています。世界各地に政府関係者、研究者等の友人がおり、日常的に連絡をとっています。

世間には誤った情報、ミスリーディングな分析、知ったかぶりな論評があふれています。その状況を残念に思ったことがメルマガを始めたきっかけでした。

世界情勢を理解するには、まず、世界の全体像、歴史、思想、政治学・経済学・法学等の知見が必要になります。これには学問的・専門的な知識と分析能力が求められるため、長年にわたる研究と実務の経験が必要になります。

また、近年の世界情勢の動きは極めて速く、一日ごとに状況が激変します。これを正確におさえるためには、日々の情報のアップデートとインサイダーから得られる情報が欠かせません。

世の中にあふれる情報の多くは、このいずれか、あるいは両方が欠けています。

学者や専門家は情報のアップデートが十分でないことがあります。また、実務経験がある人は稀です。私から見ると、机上の空論としか思えない主張をよく見かけます。

一方、メディアやブロガーは毎日のニュースは知っていますが、学問的・専門的な知見が欠けています。実務経験もありません。たとえば新聞やネットを見ると最新の情報は出ていますが、その背後にある構造的な事情については解説がないことがあります。

また、特にネットやメディアに寄稿する自称「国際政治評論家」は、その多くが人脈や実務経験がないので、本当の意味で押さえるべきポイントを見抜けていません。知見がないにもかかわらず、注目を集めたいがために、ただの「妄想」としか思えないことを平然と述べている人もいます。

本メルマガは、学問的・専門的知見と最新の情報(ニュースのみならずインサイダーの知見含む)の両方に基づいた総合的な分析を提供しています。

また、誰が読んでも納得がいく「分かりやすさ」を重視しています。読者の方のご質問にはほとんどすべて回答しています。

さらに、折に触れて、海外の現地事情、語学、映画、文学、エンタメなど文化的な話題も取り上げています。幅広い視点で、楽しみながら世界の理解と教養を深めることができると思います。

メルマガは午前0時または早朝に配信しています。一日が始まる前のアップデートにご活用下さい。

各記事のトピックとアウトラインはグッチーポストのウェブサイト(プロフィール欄参照)で随時公開しています。過去の記事は一部無料公開しています。

また、記事は単独販売もしております(330円(税込))。

まずはブログやサンプル、単独記事からでもご覧いただければと思います。よろしくお願いします。

タイトル
世界情勢ブリーフィング
価格
880円/月(税込)
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2019年11月11日発行(通算第376号)
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世界情勢ブリーフィング
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ツイッターを始めて1か月になりました。その間のツイート数は約350。我ながら思った以上に沢山つぶやきましたね。
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読者の方とのやりとりや「リツイート」にもだいぶ慣れ、フォロワー数も増えました。引き続きトランプ大統領を見習って(笑)、ツイッターでもメルマガでもインパクトのある発信を追求します。

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先週の動き
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11/3(日)
・中・ASEAN首脳会議(バンコク)
・香港で政府に対する抗議デモ
・サウジの国営石油会社サウジアラムコが株式の一部を国内の証券取引所タダウルで公開すると発表

11/4(月)
・米国がパリ協定離脱を正式に国連に通告
・米財務省がイランの人権侵害等を理由にハメネイ最高指導者の側近9人とイラン軍の最高機関を経済制裁の対象に指定
・米下院の情報特別委員会がウクライナ疑惑に関するヨバノビッチ前駐ウクライナ大使とマッキンリー元国務長官補佐官の証言記録を公開
・NYの第2巡回区控訴裁判所がトランプ大統領の会計事務所に対して同大統領の過去8年分の納税記録を検察当局に提出するよう命じる判決(トランプ側は最高裁に上訴する方針)
・イラン原子力庁のサレヒ長官がウラン濃縮に使う新型の高性能遠心分離機を複数台導入したと発表
・習近平国家主席が香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と会談(上海)
・東アジアサミット(バンコク)
・米・ASEAN首脳会議(同)
・RCEP首脳会議(同)
・ASEAN+3首脳会議(同)
・日・ASEAN首脳会議、日・メコン地域諸国首脳会議、日中(李克強首相)、日印、日・インドネシア、日・タイ、日・シンガポール、日比、日越首脳会議(同)

11/5(火)
・ミシシッピ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州知事選、サンフランシスコ市長選等
・トランプ大統領が、11月4日のメキシコ北部でのモルモン教信徒の米国人の殺害を受け、メキシコの麻薬カルテルに対する「戦争」への支援を表明
・米下院の情報特別委員会がウクライナ疑惑に関するソンドランド前駐EU大使の証言記録と11月4日付で提出した追加文書(ウクライナへの軍事支援の見返りとしてバイデン前副大統領の調査を求めた内容に証言を修正)を公開
・中国国際輸入博覧会(上海、~6日)
・イランのロウハニ大統領がフォルドゥの施設にある遠心分離機を11月6日から再稼働させると表明(核合意の義務履行停止の第4弾)
・イエメンの正統政府と南部移行評議会がサウジの仲介により権力分担の協定に署名(リヤド)

11/6(水)
・米中の「第1段階」の通商合意の署名は12月3~4日にNATO首脳会議が開催されるロンドンで行われる可能性があると米政府高官が述べたとロイターが報道
・米司法省がツイッターの元従業員2人を含む男3人をサウジ王家に批判的なツイッター利用者に対するスパイ行為でサンフランシスコの連邦裁判所に起訴したと発表
・米下院の情報特別委員会がウクライナ疑惑に関するテイラー駐ウクライナ代理大使の証言記録を公開
・トランプ大統領がウクライナ疑惑についてバー司法長官に同大統領は法律違反をしていないことを公の場で説明するよう要請したが、同長官は拒否したとの報道
・中仏首脳会談(習近平国家主席)(北京)
・香港の親中派として知られる何君堯議員が刃物で胸を刺され負傷
・英下院が解散(12月12日に総選挙)
・英国のケアンズ・ウェールズ担当相が辞任を表明
・英労働党がワトソン副党首が辞職と総選挙への不出馬を表明

11/7(木)
・NY州最高裁がトランプ大統領の慈善団体「ドナルド・J・トランプ財団」の資金の不正な政治利用について同大統領との合意に基づき同大統領に対し複数の非営利団体への200万ドルの支払いを命じる判決
・米主導のホルムズ海峡の民間船舶の安全確保のための有志連合(米、英、豪、サウジ、UAE、バーレーン、アルバニアが参加)がバーレーンに司令部を発足
・米下院の情報特別委員会がウクライナ疑惑に関するケント国務次官補代理の証言記録を公開(トランプ大統領はクリントン元国務長官の調査も望んでいたとの内容)
・米下院の情報・外交・監視の3委員会でペンス副大統領のウィリアムズ補佐官がウクライナ疑惑に関する非公開の証言
・ドナルド・トランプ・ジュニアがウクライナ疑惑の内部告発者とされる人物の氏名をツイッターに投稿
・米共和党のセッションズ前司法長官が20年のアラバマ州上院選への出馬を表明
・中国商務省が米中通商協議について追加関税を段階的に撤廃する方針で一致したと発表(ナバロ通商製造政策局長は否定)
・イラン原子力庁がフォルドゥの施設にある遠心分離機の再稼働を発表
・イラン原子力庁が10月28日にIAEA査察官の立ち入りを拒否したと発表
・韓国が南北軍事境界線を越えて韓国側海域に入り拿捕された漁船に乗っていた北朝鮮住民2人を北朝鮮側に追放したと発表

11/8(金)
・トランプ大統領が米中通商協議について追加関税の撤廃は合意していない、米中首脳会談の場所はアイオワ州等になると発言
・トランプ大統領がロシアの招待を受け20年5月9日の軍事パレードの機会に訪ロを検討していると発言
・米下院の情報特別委員会がウクライナ疑惑に関するNSCのウクライナ政策担当官のビンドマン陸軍中佐の証言記録を公開
・マイケル・ブルームバーグ前NY市長が20年大統領選挙の民主党予備選挙(アラバマ州)の立候補者として登録
・香港の民主化デモに参加して11月4日に建物から転落した男子大学生が死亡
・EU財務相理事会(ブリュッセル)
・ブラジルのクリチバ連邦刑事裁判所が収賄罪等で有罪判決を受けて収監されていたルーラ元大統領を判決が確定していないことを理由に釈放

11/9(土)
・香港で11月8日に死亡した男子大学生のための大規模な追悼集会
・ベルリンの壁崩壊から30年

●オフ・イヤー選挙(ケンタッキー州、バージニア州、ペンシルバニア州)とブルームバーグの大統領選出馬検討

米国では、大統領選と中間選挙いずれも行われない年(奇数年)にも選挙があり、「オフ・イヤー選挙」と言われます。そのほとんどは地方レベルの選挙で、ケンタッキー、ルイジアナ、ミシシッピ、ニュージャージー、バージニアの5州では州知事選が行われますが、州議会や市、郡レベルでも様々な公職について選挙が行われます。

17年のオフ・イヤー選挙では、バージニア州知事選で民主党のラルフ・ノーザムが勝ったことが話題になりました(なお、その後ノーザムは学生時代にアフリカ系の差別を助長する軽率な行動をとったことが分かり、激しく非難されるという騒動がありました)。

・「バージニア州知事選と共和党・民主党の将来」(17/11/7)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=4627
・「バージニア州知事選」(17/11/13)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=4643
・「バージニア州のスキャンダル」(2/11)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=6889

先週、今年のオフ・イヤー選挙が行われました。州知事はケンタッキー、ルイジアナ、ミシシッピの3州が改選時期です。いくつかの選挙で大きなサプライズがありました。

まずケンタッキー州知事選では、共和党の現職マット・ベビンを民主党のアンディ・ビシア州司法長官が破りました。ケンタッキーは鉄壁のレッド・ステートで、16年大統領選ではトランプ大統領が30ポイントの大差をつけて勝利した州です。共和党にとっては衝撃的な敗北でした。

しかもトランプは投票前日の夜、ベビンの応援に駆けつけ、「ベビンが再選されなければ私にとって『史上最大の敗北』になる。そうさせないでくれ!」と訴えていました。トランプの応援も虚しく、不吉な予言は現実になりました。

次にバージニア州議会選では、これまでは共和党が上下両院で僅差で過半数を占めていましたが、民主党が両院で過半数を獲得しました。民主党が上下両院で過半数を占めるのは26年ぶりです。

またペンシルバニア州の郡レベルの選挙でも、これまで共和党の牙城だった選挙区の多くを民主党が奪いました。

さらに大統領選については、マイケル・ブルームバーグ前NY市長がアラバマ州の民主党予備選挙の立候補者として登録の申請を行いました。登録期限ギリギリの申請でした。まだ出馬表明はしていませんが、真剣に検討していることを意味する行動です。

これらのイベントは、今後の米国政治、特に大統領選を見る上でどのような意味をもつのか。今週解説します。

●イランのフォルドゥの核施設の稼働

イランのロウハニ大統領が核合意(JCPOA)の段階的履行停止の第4弾に入ることを宣言し、中部フォルドゥの1044基の遠心分離機にウランガス(六フッ化ウラン)が注入され、ウラン濃縮が再開されました。核合意においてフォルドゥの施設は研究施設とされ、そこでのウラン濃縮は禁止されていました。

・「イランの核合意履行の段階的停止」(7/12)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=7637
・「イランのウラン濃縮度引き上げ等の可能性(トランプ・ロウハニ会談の可能性)」(9/2)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=7890
・「イランの核合意の義務停止第3弾」(9/9)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=7913

サレヒ原子力庁長官はウラン濃縮度は5%まで引き上げられると発表しました。濃縮度は20%まで引き上げることができるが、現時点ではその必要性はないと述べています。

これに先立ち、米国務省はハメネイ最高指導者の側近9名(ハメネイの次男で、最高指導者候補ともいわれるモジュタバ・ハメネイ含む)を制裁対象に加えました。この措置は、79年の米国大使館占拠事件発生から40年という節目に合わせて発動されたものです。

これらの先週の動きについてポイントを解説します(※メルマガに限定)。

上記記事で述べたとおり、元々イランは濃縮度を20%まで引き上げると宣言していましたが、今回もその可能性を示唆しながら、5%までの引き上げにとどめました。

イランの動きは計算されており、あくまでもJCPOAの崩壊ではなく、EU、中国、ロシアにJCPOAの遵守を促すことを目標にしている、という姿勢を維持しています。フォルドゥでの再稼働も、すぐに元に戻すことが可能な(reversible)措置にとどまることを強調しています。

一方、フォルドゥという場所での再稼働は、これまでの措置以上に挑戦的な意味合いを含んでいます。フォルドゥの施設は地下80メートルの地点にあり、機密性が高く、空爆への耐性も極めて高いからです。このため今回の措置は、これまでの核合意の義務履行の停止の中で最も重大と受け止められています。

先に述べた国務省の制裁を見ても明らかですが、トランプ政権の「最大限の圧力」をかける方針は変わっていません。EU側も、仲介役を果たそうとしているマクロン大統領が今回の措置はイランの方針の変化だと述べ、強く非難しています。

とはいえ、米国もEUも今以上に強い措置に出る可能性は低いとみられています。EUがとり得る最大の牽制は核合意の「紛争メカニズム」(35日間のレビューを経て結果次第で合意が破棄される(=国連の制裁が復活する))の発動ですが、このオプションがとられる兆候は見られません。

トランプ政権には、中国企業のイラン原油購入を止めさせるという選択肢があります。しかしこの行動に出ると、現在の米中通商協議に重大な悪影響が及びます。現時点でこのオプションがとられる兆候も見られません。この点からも、トランプ政権が米中合意の実現に強い期待をかけていることを読み取ることができます。

米国とEUの圧力が大きく高まることはありませんが、イランに歩み寄る動きも見えません。その状況を見て、イランは来年初めに核合意の義務履行停止の「第5弾」に踏み込む可能性は高いとみられます。厳しい状況が続きます。

●ASEAN首脳会議・RCEP首脳会議

RCEP首脳会議では、インドを除く15か国がRCEP協定について条文ベースでの交渉を完了し、20年の署名に向けて法的審査を開始するとの共同声明を発表しました。そしてインド外務省の局長は「今後インドはRCEP交渉に参加しない」と発言しました。

6年以上にわたる交渉は、インドを置き去りにする形で合意に至ることになりました。今後の展望について解説します(※メルマガに限定)。

RCEP交渉においては、主に中国とインドが市場開放に対して強い抵抗を示していました。日本としては、レベルの低いFTAを締結しても仕方がないと考えているので、これら閉鎖的な国々とのギャップがなかなか埋まらない点は以下の記事で解説したとおりです。

・「RCEP閣僚会合」(18/7/11)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=5751

ただ、近年、中国は市場開放に対して相当に前向きな姿勢を示すようになったようです。背景に米国との「貿易戦争」と「新冷戦」があることは間違いないでしょう。米国が入っていない経済枠組みを発足させることは今の中国にとって、将来的にも大きなメリットが見出されます。

ここで取り残されたのがインドです。インドは中国との間で貿易赤字が拡大しており、国内の製造業、農業、サービス業は自由化に強く反発しています。モディ首相は、本来外資導入をテコにしたプロ・ビジネス型の改革を追求していますが、インドでは既得権の政治力が極めて強く、野党の国民会議派は与党BJPに対抗すべくこうした勢力の利益を代弁し、特に農村で勢いを増しています。

ちょうどRCEP首脳会議の前の週にはマハラシュトラ州とハリヤナ州で選挙がありましたが、そこでBJPは議席を大幅に減らしました(第1党は維持)。大きな要因は経済の減速ですが、特に農村で票を失ったことが響いています。

RCEP交渉の直前までモディは前向きなメッセージを出していました。中国はセーフガード導入によってインドの警戒を和らげようとするなど大幅な譲歩を検討したといわれています。しかし、上記の事情にかんがみ、最終的にゴーサインは出せなかったのでしょう。

日本としては、インド抜きで行くべきか難しい判断を迫られます。インドという巨大な経済圏を含めないことは、経済効果はもとより、中国主導の秩序になることが懸念されます。米国との関係でも、今のトランプ政権はASEAN首脳会議への欠席を見ても分かるとおり、アジア域内の動きに無関心ですが、将来的には懸念を抱くかもしれません(だからこそTPPのテコにできるという可能性はありますが)。おそらく日本としてはギリギリまでインドの説得を続け、状況によっては20年中の署名を見送るのではないかと思います。

なお、インドのRCEP離脱は「モディ政権の強権」によるものであり、モディは「インドのトランプ」になっていて、中国やインドを混乱させている・・という内容の大手メディアの記事を見かけました(ツイッター上では記事のリンクも引用しました)。本メルマガの読者の方であれば分かると思いますが、インドのことを知らない人が思い付きで書いたお粗末な記事と思います。

そもそも貿易の自由化と国内産業の育成のどちらを優先するかは通商政策上の判断であって、インド国内の専門家の間でも見解は分かれます。そして最近では前述のとおり国内政治上の考慮がありました。モディの「強権」やヒンドゥー保守主義と同列に論じるのはナンセンスです。

こうした一知半解な「分析」に皆さんが惑わされないよう、引き続き発信を続けたいと思います。

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今週の動き
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11/10(日)
・スペイン総選挙
・ルーマニア大統領選挙
・祝賀御列の儀(皇居・宮殿~赤坂御所)

11/11(月)
・ベテランズデー

11/12(火)
・トランプ大統領がNY経済クラブで講演(NY)

11/13(水)
・米・トルコ首脳会談(ワシントンDC)
・エスパー国防長官が韓国、タイ、フィリピン、ベトナムを訪問
・パウエルFRB議長が上下両院で経済の見通しに関する証言
・米下院の情報特別委員会のウクライナ疑惑に関する公聴会でテイラー駐ウクライナ代理大使とケント国務次官補代理(ウクライナ担当)が公開の証言
・BRICS首脳会議(ブラジリア、~14日)

11/14(木)
・トランプ大統領が通商拡大法232条に基づく自動車追加関税の実施について判断を下す期限
・「イスラム国」掃討作戦に参加する有志連合国の外相会議(ワシントンDC)
・アフガン大統領選挙の暫定結果発表
・大嘗祭(~15日)

11/15(金)
・米下院の情報特別委員会のウクライナ疑惑に関する公聴会でヨバノビッチ前駐ウクライナ大使が公開の証言

11/16(土)
・APEC首脳会議(サンチアゴ)が中止
・ASEAN拡大国防相会議(ADMMプラス)関連会合(バンコク、~19日)
・スリランカ大統領選挙

●米中の「第1段階」の通商合意

APEC首脳会議は中止になりましたが、以下の記事で述べたとおり、米中ができるだけ早期に「第1段階」合意を目指す状況に変わりはありません。

・「米中通商協議の「第1段階」の基本合意」(10/14)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=7987

先週、中国商務省が追加関税を段階的に撤廃する方針で一致したと発表し、その直後にナバロ製造政策局長、そしてトランプ大統領が「そんな合意はない」と否定する一幕がありました。また、トランプは米中首脳会談の場所はアイオワ州等になるだろうと発言しました。

今後の展望について解説します(※メルマガに限定)。

中国商務省の勇み足は驚きでした。そもそも「合意が実現した」という重大な事実を商務省報道官レベルで発表することに違和感があります。中国の狙いは、米国に合意を急がせるための圧力と合意条件に関する牽制であり、商務省としてはおそらく「その方向で交渉は進んでいる」というトーンを伝えたかったでしょうが、踏み込み過ぎた表現になってしまったと推測されます。

当然ながらこうした中国の発表はトランプ政権にとっては逆効果です。合意が実現していない段階で主導権をとられたような形になるからです。とはいえ、現在の交渉に悪影響が及ぶことは考えられません。その後のトランプの発言を見ても、合意の実現に向けた強い意欲が示されています。

ただ、中国の農産品輸入の規模と米国がどこまで追加関税の撤廃に応じるかについてはまだ立場に開きがあり、時間が必要のようです。先週の初めには、今週(11月13日~14日)のBRICS首脳会議に習近平国家主席が出席した後、米国に立ち寄るのではという憶測がありましたが、その実現可能性はなさそうです。

そうすると次に考えられるタイミングは12月3~4日のロンドンでのNATO首脳会議です。ただ、トランプが合意の実現に強い期待をかけている限り、もはやタイミングはそれほど問題ではありません。

米国の株価は好調であり、しかも合意が実現すればマーケットは即座に反応します。むしろ大統領選に向けて、どのタイミングで発表するのが最も高い政治的効果を見込めるか、という発想でトランプは動くでしょう。

おそらくトランプは、マーケットに与えるインパクトを重視して、12月15日に発動予定の追加関税第4弾の第2陣のみならず、9月1日に発動した第1陣の撤回まで含めること、さらに中国が1ドル=7元を下回るレンジでの元高誘導を条件に「為替操作国」認定を外すことまでも、最終的には視野に入れていると考えられます。

・「米中協議の継続」(9/6)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=7907
・「対中追加関税の引き上げの延期」(9/16)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=7928

●ウクライナ疑惑の公聴会

今週からウクライナ疑惑によるトランプ大統領の弾劾調査のための公聴会がいよいよ始まります。まずテイラー駐ウクライナ代理大使、ケント国務次官補代理(ウクライナ担当)、ヨバノビッチ前駐ウクライナ大使が証言を行う予定です。公開のイベントであり、TV中継されます。全米で大きな注目を集めることになるでしょう。

なお、ウクライナ疑惑については、トランプ大統領とその側近は、内部告発者が民主党のスパイだという主張を繰り返しています。この点について、先週、オンライン・メディアのReal Clear Investigationが内部告発者とされる人物の氏名を公表し、その人物は民主党員でバイデン副大統領(当時)の下で働いたこともあると指摘。それをドナルド・トランプ・ジュニアや保守系ラジオ・パーソナリティのラッシュ・リンボーらが拡散したことが話題になりました。

しかし、内部告発者が誰かという議論はもはや問題にならなくなっています。現役の政府高官、一次情報にアクセスしていた人物を含め、政府関係者がこうして証言をしているからです。

そもそも内部告発者の氏名を公表させるのは、明らかに制度趣旨に反する行為であり、これを主張している人々は共和党や保守系メディアでもごく一部です。FOXすら今回の氏名報道はストップをかけています。バイデンの下で働いていたというのも、バイデンの下で働いていたというのも、オバマ政権からのスタッフであれば当然のことです。

日本でも、こうした背景を伝えることなく、「内部告発者は民主党員でバイデンの部下だった(魔女狩りの手先だ)!」とそのままスクープのように伝える「識者」がいるようです(ツイッター上では記事のリンクも引用しました)。これではトランプ陣営の言い分に乗せられて、その広報の一翼を担っているだけです。これを本気で伝えているとすれば、リテラシーの欠如を暴露するものであり、かなり恥ずかしいことと思います。

●スペイン総選挙

スペインでは、4月の総選挙の結果、ペドロ・サンチェス暫定首相率いる中道左派の社会労働党が第1党となりましたが、過半数は獲れず、急進左派ポデモスをはじめとする野党との連携に向けた交渉に入りました。しかし、交渉期限(7月下旬の信任投票の否決から2か月後の9月23日)になっても話はまとまらず、以下の記事で述べたとおり、9月24日、国王のフェリペ6世は議会の解散と11月10日の再選挙の実施を勅令で公布しました。

・「スペイン議会の解散・再選挙」(10/1)
 https://guccipost.co.jp/blog/jd/?p=7956

世論調査によれば、社会労働党が1位になるものの、やはり過半数は獲れず、ハング・パーラメントになると予想されています。ただ、カタルーニャの独立運動が再びさかんになっていることを受け、極右のVOX(4月の総選挙で初めて議席獲得)が票を伸ばす可能性があります。そうなると、社会労働党を中心とする左派連合ではなく、国民党が主導する右派連合のシナリオが高まります。

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あとがき
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■ Last Christmas - Official Trailer(8月13日付Universal Pictures)
https://www.youtube.com/watch?v=z9CEIcmWmtA

今年もクリスマスの季節が近づいてきました。クリスマスといえば、私のような80年代世代には、ジョン&ヨーコ、バンド・エイド、山下達郎、ワム!、ユーミン、稲垣潤一ですが、ワム!の名曲『ラスト・クリスマス』そのままのタイトルという直球の映画が登場。

たまたまツイッターで流れているのを見て、主演の女性がどこかで見たことあるような・・と思ったら、『ゲーム・オブ・スローンズ』のデナーリス様でした。こんな風に普通の人として見るのは初めてで、新鮮でしたね。

そして、主演の男性もどこかで見たと思ったら、『クレイジー・リッチ』の主演俳優でした。小島よしおではなかったですね。

さらによく見ると、『クレイジー・リッチ』で主役(小島よしおではない人)の母親を演じていたミシェル・ヨーも出ています。ミシェル・ヨーといえば私には香港カンフー映画のアクション・スターで、『クレイジー・リッチ』で見たとき何か感慨深いものがありましたが、再び小島よしおではない人と共演。

ちなみに『クレイジー・リッチ』にはドラマ『シリコン・バレー』のジン・ヤンも出ていました。アジア系の俳優は常連が多いという事情もあるかもしれませんが、私には嬉しい驚きでした(マニアック過ぎてすみません)。

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