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増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)

増田悦佐

20世紀はいつ終ったのか? 後篇 世紀末が26~27年遅れでやって来る米中利権大国

●    アメリカ経済の没落はいつ始まったのか


前号「20世紀はいつ終ったのか? 前篇 世紀末が10年早くやって来た日本」では、政治・経済・外交・軍事すべてが混濁した現代世界において、1990年代にリセットを終えてしまった日本がいかに有利かについて解説しました。

そこで、今号前半では第二次世界大戦直後には強大な政治力、経済力、軍事力を独り占めして長期にわたって世界帝国として君臨するかに見えたアメリカが、なぜその後延々と長期低落傾向をたどったのかに焦点を当てます。

そして後半では、アメリカのライバルとも後継者とも目される中国がアメリカとまったく同じ利権大国であって、アメリカとほぼ同時、具体的には今年から2027年までのあいだに没落せざるを得ないことを指摘します。

前号の11枚目のスライド「米英日ユーロ圏の全要素生産性推移:1890~2015年」には、アメリカ経済の絶頂期が、じつはやっと10年越しの大不況をやり過ごし、第二次世界大戦に突入した1940年代初頭あたりに来ていたことが描かれていました。

日欧諸国の生産設備や社会インフラが徹底的に破壊された中で、先進諸国中で唯一生産設備の社会インフラもほぼ無傷で残っていたアメリカが、なぜこんなに惨めな長期低落傾向をたどってしまったのでしょうか。

そこには、物理的なモノはいくらでも造り直すことができるけれども、一旦定着してしまった法律や社会的な制度が経済活動を束縛する力がいかに大きいか、明瞭に示されています。次の2段3枚組グラフをご覧ください。



まず上段は、全要素生産性の年間平均伸び率によって切り分けたアメリカ近現代経済史の時代区分です。

ここで、全要素生産性とは何か、おさらいをしておきましょう。毎年のGDPを説明するために投入した労働力の量と投入した資本の質と量を2つの説明変数として回帰方程式をつくってデータを投入します。

そうすると、労働力と資本の2つだけでは説明しきれない残余が出ます。たいていの場合、この残余はプラスで、時代が進むに連れて大きくなっていきます。つまり同じ量の労働と同じ質と量の資本を投入しても、得られるGDPの量はほぼ毎年少しずつでも大きくなっていくのです。

そこで、これは科学技術の進歩インフラの充実、国民の健康状態の改善、社会全体の治安の良さといった経済全体に好影響を及ぼすさまざまな要因が改善方向に働いているか、劣化方向に働いているか、そしてそれがどの程度の変化なのかを示す代理変数と見なされています。

アメリカの場合にも全要素生産性はプラスの伸びが続いているのですが、成長率にかなりのデコボコがあります。まず、1890~1920年代は当時覇権国家だった大英帝国から覇権を奪い取るために国力を蓄える助走期と見ていいでしょう。

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