… … …(記事全文12,778文字)● 気候変動の原因は二酸化炭素含有率の変化だけか?
1980年代頃から「産業革命以来人類はあまりにも多くの二酸化炭素を排出してきた。その結果、地球上で異常な温暖化が進むことによって人類だけではなく動植物全体が絶滅し、地球は生命のない死んだ惑星となる危機に瀕している」といった議論をする人が西欧諸国を中心に増えてきました。
ほんとうに生きもの全体が死に絶えるほどの危機が迫っているとしたら、こうした議論が盛んになってから50年になろうとしているのですから、もうそろそろどこかにその兆候が現れてもいい時期でしょう。
しかし、現実には大都市中心部や先進諸国の幹線道路沿いなどでヒートアイランド的な「温暖化」は進んでいますが、地球全体の平均気温は過去15年ほどほぼ横ばいです。
今回は、気候変動危機説を批判するだけではなく、この危機を回避するためとして導入されてきた「再生可能」エネルギーによる発電や内燃機関(エンジン)で走る自動車のEV(電気自動車)への転換がいかに効率も悪くて、深刻に環境を劣化させるかについて、なるべく自然科学の先端を行く知見を織り交ぜながら論じたいと思います。
冒頭の小見出しにも書きましたが、「二酸化炭素排出量の拡大→地球温暖化→生物大量絶滅」を語る人たちの最大の間違いは、あまりにも単純に原因と結果を結びつけてしまう直線的な思考様式にあります。
ふつうに考えても、動物にも植物にも暑さに弱い種も強い種もいますし、逆に寒さに弱い種も強い種もいます。それなのに、地球が温暖化すればするほど繁殖しやすくなる種まで温暖化が原因で絶滅するという議論には無理があります。
もし、「現在進行中の温暖化は今まで地球上の生物が経験したことがないほどの暑さまで進んでいて、この極端な暑さに耐えられる種は存在しない」と言うなら、それなりに話の筋は通りますが、現実とは大違いです。
次の年表形式のグラフでご覧いただけるように、現在地球を包んでいる大気の平均気温は、過去約5億年間でいちばん寒かった時期より約2℃高いだけですが、現在より12~13℃気温が高かった時代を我々生物の遠い先祖たちはしっかり生き抜いたのです。
さらに「大気中の二酸化炭素含有量が上がると、気温も上がる」という主張についても、ごく大ざっぱに言えばそういう傾向があるというだけで、何千万年という尺度で二酸化炭素が減っているのに気温が上がった時期もあれば、二酸化炭素が増えているのに気温が下がった時期もあったのです。
また、二酸化炭素が過去5億年にわたって150~6000ppmの範囲内で推移し、大気温が12~27℃の範囲内で推移していた中で、現代の二酸化炭素含有量は最低水準よりたった200 ppm多いだけの400ppm、気温は最低気温よりたった2℃高いだけの14℃です。
ですから、気候変動危機説の妥当性を議論するには、そもそも「二酸化炭素が多すぎて温暖化が危機的な状態になっている」という事実認識自体が非常に説得力に欠けることを押さえておくことが重要です。
増田悦佐の世界情勢を読む
増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)