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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.730:もう止めるのは不可能! 温暖化から逃れる「気候オアシス」はどこか?


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             山田順の「週刊:未来地図」                 

                          No.730 2024/07/09

                      もう止めるのは不可能!

      温暖化から逃れる「気候オアシス」はどこか?

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 今年もまた「猛暑」となり、連日の猛暑報道が続いている。しかし、それはレポーターが街に出て、温度計を手に「暑いです」と訴え、道行く人に「本当に暑いです」と言ってもらうだけ。あとは、気象予報士のなぜ暑いのかの解説と、全国最高気温ランキングの提示など、まるで「猛暑エンタメ報道」である。

 こんな状況では、温暖化が止まるわけがない。政府も温暖化対策を真面目にやる気配すらない。

 そこで、今回は、すでに世界中で始まっている温暖化からエスケープするための「気候オアシス」への移住現象を見ながら、今後、私たち(と次世代)はどこに住めばいいのかを、世界視点で考えてみたい。

[目次]  ─────────────────────

■史上最悪のヒートと史上最大のハリケーン

■IPCC最悪シナリオでは海面上昇1m超え

■温暖化から逃れるための2つのポイント

■東京は世界でもっとも水害に弱い都市の一つ

■水没都市ランキングで最上位はジャカルタ

■海岸沿いの物件より海岸から離れた物件

■香港とシンガポールの“水没”不動産下落

■温暖化の進行による「勝ち組」と「負け組」

■2070年までに30億人が居住不可能に

■不動産価格が下落し保険料が急騰した豪州

■温暖化に無関心でいると“気候難民”になる

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■史上最悪のヒートと史上最大のハリケーン

 

 まず、今年の温暖化、気候変動の異常ぶりから述べてみたい。今日、7月8日、日本各地は今年の最高気温を記録、全国150地点以上で35℃以上の「猛暑日」となった。 

 最高気温は、和歌山の新宮で39.6℃、東京の府中で39.2℃、私が住む横浜も36.7℃となり、これはもう、外に出られる気温ではない。ちょっと歩いただけで汗だくになり、日向にいれば確実に熱中症になってしまう。

 猛暑は、日本だけでない。今日までの報道を振り返ると、なんと言っても衝撃的だったのは、サウジアラビアでメッカへの“大巡礼”中にイスラム教徒が1300人以上も熱中症で死亡したことだろう。記録的なヒート(熱波)で気温が51.8℃になったというが、これは人間が生きていける気温ではない。

 このほか、インドのニューデリーでも52.9℃を記録したが、40℃以上となると、もう世界中でザラに記録された。ギリシアではクレタ島で44.5℃が観測され、観光名所コース島では大火災が発生した。火災と言えば、やはり40℃以上を記録したカリフォルニアのサンターバーバラでは大規模な山林火災が起こった。

 記録的な気温上昇も驚きだが、それ以上に衝撃的だったのは、カリブ海で発生した風速70mを記録したカテゴリー5のハリケーン「ベリル」だ。

 ベリルは史上最速でカテゴリー5となり、グレナダやジャマイカなどカリブ海の島国やメキシコのユカタン半島を直撃し、いったん弱まったものの再び勢力を取り戻してテキサスに上陸した。

 この原稿を書きながらCNNを見ると、ヒューストンが暴風雨の被害に見舞われている状況が映し出されている。

 

■IPCC最悪シナリオでは海面上昇1m超え

 

 温暖化による気候変動は、年々激しくなり、いまや世界中で猛威をふるっている。もうここまでくると、パリ協定が目指す目標「世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃以内に抑える努力をする」は、とうてい無理と思われる。

 すでに、気温上昇は1.3℃に達しており、早ければ2、3年で1.5℃を超えてしまう。そうなると、さらに温暖化は加速してし、予想より圧倒的に早く臨界点を超えてしまうだろう。

 温暖化がもたらすのは、気温上昇はもちろんのこと、それにともなう大規模な気候変動、そして人類社会の大変動である。

 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書(AR6)によると、最悪シナリオ(2100年に4℃上昇)では、干ばつと豪雨はいっそう深刻化し、豪雨の雨量は約30%増加、海面は63~101㎝上昇する。

 しかし、ここ2、3年、そして今年の状況を見ると、最悪シナリオ以上になるの間違いないと思える。なぜなら、「カーボンニュートラル」と言いながら、その対策に真剣に取り組んでいる国は少ないからだ。とくに、日本は2周も3周も遅れている。

 

… … …(記事全文7,315文字)
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