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山田順の「週刊:未来地図」
No.728 2024/07/03
バイデン老化パニック(2)
認知症は予防できるのか? 治せるのか?
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もし、認知症を治せるクスリがあったなら、バイデン大統領は問題なく選挙戦を続けられるだろう。しかし、いまのところ、そんなクスリは開発されていない。去年、アメリカで承認され、日本でも承認された新薬「レカネマブ」は、初期症状の進行を抑えるクスリにすぎない。ただ、それでも画期的なクスリである。
今回は、この新薬「レカネマブ」を中心にして、認知症は予防できるのか? 認知症は治せるのか? という視点で、認知症の現状を探ってみたい。
[目次] ─────────────────────
■老化が進んでいることは間違いない
■レーガンと同じアルツハイマー型認知症か
■原因物質「アミロイドベータ」の蓄積を抑制
■治験効果が見られた27%をどう捉えるか?
■発症したら段階的に重症化して死んでいく
■いま処方されているクスリの効果は疑わしい
■多くの医者はレカネマブ治療に消極的
■クスリよりQOL(生活の質)の改善が重要
■バイデンはなおも自分への支持を訴える
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■老化が進んでいることは間違いない
バイデンは、ディベートで自爆した後の6月28日、ノースカロライナ州で行った演説で「私は以前ほどうまく討論はできない。しかし、事実の伝え方はわかっている。仕事の仕方はわかっている。11月にはこの州を勝ち取るつもりだ」と述べ、大統領選からの撤退を否定した。
こんなことをあえて言わなければならないほど、今回の大統領選挙は異常だ。バイデン81歳、トランプ78歳。高齢老人の2人が、どちらが大統領にふさわしいかと討論すること自体、哀しすぎる。
もはやバイデンが認知症か、あるいはその初期的な状況にあるのは確かである。たとえ認知症と診断されなくとも、あの言い間違いの多さ、視線の虚ろさ、表情にハリがないことのどれをとっても、老化が進んでいることははっきりしている。
■レーガンと同じアルツハイマー型認知症か?
認知症には、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭葉変性症」の4種があるが、全体の約6割がアルツハイマー型である。高齢になって発症する認知症のほとんどが、アルツハイマー型認知症である。
歴代のアメリカ大統領では、レーガン大統領がアルツハイマー型認知症を患い、晩年は自分が誰かさえもわからなくなった。
バイデンもレーガン大統領と同じく、アルツハイマー型認知症と思われ、現在の状態を見れば、日米で承認されて使われるようになった抗認知症の新薬「レカネマブ」(商品名:レケンビ)が効果を発揮する可能性がある。
レカネマブは、日本のエーザイと米製薬大手バイオジェンが共同開発したもので、アメリカでは2023年1月にFDA(米国食品医薬品局)によって承認され、日本でも追随承認されて使用されるようになった。
これまでに抗認知症はいくつも登場したが、レカネマブほど、治験の結果がよかったクスリはなく、その点で画期的な新薬とされている。