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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.720: 補助金で新工場建設ラッシュ! しかし、「日の丸半導体」の復活はありえない


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          山田順の「週刊:未来地図」                 

                     No.720 2023/05/14

              補助金で新工場建設ラッシュ!

 しかし、「日の丸半導体」の復活はありえない

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  熊本、北海道、広島、三重------日本各地で半導体の新工場の建設ラッシュが続いている。かつて世界を席巻した「日の丸半導体」の復活を目指し、政府が計4兆円もの補助金をつぎ込むことになったからだ。

 しかし、これで日本が再び世界の半導体産業をリードできるかといえば、それはありえないという。私が話を聞いた専門家、関係者は、そう口を揃えた。結局、半導体生産の下請け工場ができるだけではないか、というのだ。

[目次]  ───────────────────

■台湾「TSMC」の進出で大フィーバーの熊本

■世界最先端の2ナノを目指すラピダス

■半導体産業につぎ込まれる政府資金は4兆円

■1980年代、日の丸半導体は世界一だった

■IT進展の時代の変化に適応できなかった

■海外に引き抜かれて日本には人材がいない

■マレーシアと同じ、ただの「下請け」になる

■「ラピダス」は「IBM」のリスクヘッジ

■人材不足で国際競争に負けるのは必至

■日本政府はいったいなにを目指すのか? 

■主戦場はAI、半導体がその開発を支える!

■日本の官僚と政治家は未来が見えていない

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■台湾「TSMC」の進出で大フィーバーの熊本

 

 すでに多くの報道があったので、台湾「TSMC」がやって来た熊本県菊陽町のフィーバーぶりは周知のことと思う。不動産は高騰し、町の飲食店・コンビニなどは大繁盛、道路は渋滞し、まさにバブル期のような状況になっている。

 台湾「TSMC」は、世界最大手の半導体ファウンドリー。新工場を熊本につくることを発表したのが2年前。以来、建設計画はトントン拍子で進み、この2月24日に開所式が行われた。と、同時に、第2工場の建設も発表されたので、フィーバーはいまも続いている。

 新工場の稼働は年内とされ、日本政府は第2工場を含めて、総額1兆2080億円を支援する。

 これまで発表されたTSMCの総投資額は約200億ドル(約3兆1000億円)だから、日本政府はその3分の1超を支援するわけだ。また、TSMC熊本工場の運営会社には、ソニー、デンソー、トヨタも出資した。

 これでは、TSMCが日本に工場を建てないわけがない。ただし、第1工場で生産するのは、一世代前の回路線幅12ナノ(ナノメートル=10億分の1メートル)。第2工場では、3年後までに6ナノのロジック半導体を生産するというが、いずれも最先端の半導体ではない。

 

■世界最先端の2ナノを目指すラピダス

 

 TSMCの新工場建設とともに注目されているのが、北海道千歳市に工場を建設中の「ラピダス(Rapidus)」。こちらは、1昨年誕生したオールジャパン体制の新会社で、2025年に試作ラインを稼働させ、2027年には生産を開始するという。

 つくるのは、最先端の2ナノ。これまで日本の半導体メーカーは40ナノまでしかつくっていないので、こちらは画期的な挑戦である。

 そのため、ラピダスは米「IBM」の支援を仰ぎ、現在、IBMの研究拠点に約100人の技術者を派遣して、技術習得を進めている。ラピダス設立にあたって、政府は計3300億円の支援を決定したが、今後の進捗次第で追加支援も行うことになっている。

 私は昨年、千歳市を訪れたが、すでに不動産価格は高騰し、関連企業も集まり出して、熊本と同じようなフィーバーが起こっていた。今年2月27日、衆院予算委員会の分科会で答弁に立った斎藤健経済産業相は、「失敗が許されないプロジェクトだ」と強調した。

… … …(記事全文7,557文字)
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