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吉田繁治 (経営コンサルタント )

吉田繁治

ビジネス知識源プレミアム:緊急増刊:中央銀行への信認とは、通貨への信認である
無料記事

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ <1ヶ月にビジネス書5冊を超える知識価値をe-Mailで> ビジネス知識源プレミアム(660円/月:税込):Vol.1325 <Vol.1325号 緊急増刊:中央銀行への信認とは通貨への信認である> 2023年3月31日:米欧の銀行危機と、金融商品の価格 本稿は増刊として、有料版・無料版に共通とし、シングルテーマとします。有料版のみの正刊は、毎週木曜日に送っています。 ウェブで読む:https://foomii.com/00023/20230331125033107351 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ホームページと無料版申し込み http://www.cool-knowledge.com 有料版の申込み/購読管理 https://foomii.com/mypage/ 著者へのメール    yoshida@cool-knowledge.com 著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 今回の増刊号のテーマは、財務省・日銀が国会で答えることのできなかった、「中央銀行への信認とは何か?」を、事例の分析から探求するものです。 日銀が国債を買って円を増発することを(MMT:現代貨幣論の仮説)を、景気浮揚策として要求した自民党の西田昌司議員(参議院)に対し、財務省は「(限度を超えると)財務省・日銀への市場の信認が失われる可能性がある」と答えています。 ところが、この「信認」が何であるかについての追加質問には、財務省・日銀は答えることができなかった。 情けないことですが、これが財務省と日銀(企画課長)の、金融知識の水準です。企画課長は、日銀の金融政策を起案する中枢にいる官僚です。 (財政金融委員会:22年3月15日) https://www.youtube.com/watch?v=4d722ze-j2w 米欧で2023年3月10日から始まった銀行の危機に対して、米国財務省・FRBと、ドイツのシュルツ首相は、いずれも「銀行預金は、全額を保障する。銀行信用は盤石である」と答えています。 銀行危機の波及(システミックなリスク)を止めるのに、緊急秘密会議を開いて対策に必死です。世界的な金融危機になった2008年のリーマン危機を繰り返さないためです。ドイツ銀行が、今、危機の渦中にあります。 米銀の5位の大手、チャールズ・シュバウも、危機になっています。2023年は好調だった株価が、1日で80ドルから62ドルへ急落しました。原因は、金利が上がって保有国債と債券の20%下落があり、預金取り付けが起こっているからです。 【ドル危機の兆候】 世界の各地で、一回の預金引き出しの制限が始まっています。原因は、世界の銀行の、ドルの流動性(ドルの預金量)が減っていることです。ドルを補充しなければならない。これは「ドル買い/自国通貨売り」になるので、銀行の自国通貨の流動性(現金)も減っているのです。 米欧のドル、ユーロ、英国ポンド、スイスフラン、円の金融は、基軸通貨ドルを通貨交換の媒介通貨としてつながっています。 米国FRBとユーロのECBそして日銀は、目には見えない通貨交換の太いパイプ(送金回線のSWIFT手順)で連結しています。米欧日の中央銀行は、マネーを融通し合う組織です。われわれの通貨交換と国際決済は、中央銀行間の、差額の送金になっているのです。西側世界の銀行は,1つのチェーンストアです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1325号 緊急増刊:中央銀行への信認とは通貨への信認である> 2023年3月31日:有料版・無料版共通 【緊急増刊 目次】 ■1.52年で賞味期限が切れたドル基軸体制 ■2.ドル・ユーロ危機の、序幕が開いた ■3.テーマは、中央銀行と通貨への信認 ■4.トルコの事例研究:通貨が16分の1に下落した ■5今回は、中央銀行のマネー増発の限界が近い ■6.後記:バブル崩壊後の長期成長 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.52年で賞味期限が切れたドル基軸体制 「媒介通貨」は、外貨交換のとき、仲介として使われる通貨です。たとえば、円で人民元を買うときは、「円→ドル→人民元」というように、基軸通貨のドルが中核になります。「円→人民元」の直接交換は、ゼロではありませんが、少ない。ドルが、世界の通貨の翻訳機械になっているとイメージしてもいい。 イメージは、インターネット(TCP/IPの通信手順)での、世界の情報の連結です。ドルの銀行危機は、ドルと通貨交換しドルをもつユーロの危機になり、ドルの対外債権をもつ円の危機になります。 インターネットのノード(結節点:いわば関節の分岐的)にある中継コンピュータの信号の波がダウンしたことと同じです。電子の波が弱まると、十分な通信ができません。ドルの銀行危機は、一定の時間をおいて(リーマン危機のときは1年3か月でした)、全米と、日本を含む世界に、波及します。超大国の貿易が、世界の商品価格に影響を与えることと同じです。 金融や通貨の送金と取引は100%がデジタル化され、通信回線とコンピュータのなかをデジタルの電子信号として光速で移動し、目には見えない。 紙幣の時代(1960年代まで)は、お札が見えました。1万円は1g、1億円が10Kg(スーツケース大)、1兆円は1万倍の100,0000Kgであり、4トントラック25台分です。仮に日銀が、10兆円を印刷し、現金が枯渇し決済と預金の払い戻しが不能になった破産間際の銀行に運ぶと、4トントラックで250台分です。本店の近くにいれば、誰でも、銀行の危機が見えます。 ところが、FRBが通信回線で10兆円分のドル(トラック250台分の100ドル札)をシリコンバレー銀行に送っても、誰の目にも見えない。 1980年からの銀行危機では、預金の取り付けがあっても見えない。銀行会計の債務と、資産である債券と現金残高を示すバランスシートのデータによるしかない。銀行危機を逃れる、大口預金の引き出しと、安全とされている大手銀行への送金も、オンラインであり他人には分からないのです。 政府・中央銀行は、政府財政の危機や銀行の破産危機のときは、 ・政府が、すぐ売れる国債を、緊急に銀行に貸すか(国債担保のリバースレポでの、現金供給になる)、 ・中央銀行が、増刷したマネーをいくらでも送金して貸すので、銀行預金は安全だと言います。 (注)紙だった国債、債券、株券も1990年代に電子化されています。100%が電子証券です。CBDC(中央銀行が発行する通貨価値と連動するデジタル・キャッシュ)へは、至近です。黒田総裁は2026年からと述べています。 参議院の西田氏が主張するように、中央銀行が国債を買って通貨を増発するMMTを行うかぎり、「政府の財政危機、銀行の危機はない。起こっても収めることができる。預金は100%安全」としているのです。 通貨や証券は目に見えない。「中央銀行への信認とは、その通貨価値への信用である」ことを具体例で示さねばならない。 【通貨の価値と、物価の原理】 通貨価値とは、その人に効用をもたらす商品や資産の購買力のことです。物価が10%上がると通貨価値は10%下がります。 外貨との通貨レートは、それぞれの国での購買力のことです。「原理的には」、物価が10%上がる国の通貨(ユーロ)は、物価が4%しか上がらない国の通貨(円)に対して、同じインフレの過去から、6%下がった点が、均衡点になります。均衡点は、通貨レートの変動幅(ボラテリティ)の中心点です。 ・・・「原理的には」とは、自国通貨に心の思い入れのないロボットが通貨を売買したときです。自国通貨に愛着を持つ人が多く、失望の心をもっている人は少ない。 短期的には、原理からずれた自国通貨の価値を高く見て売買をするが、長期的には、購買力の通貨価値の原理に収束していきます。 【日替わりの緊急情報】 たった今シリコンバレー銀行、クレディスイスに続いて、3月30日現在、全米5位の銀行、チャールズ・シュワブ・グループが危険になってきました。 ◎今回は、大手銀行への危機の波及が早い。預金者の心理において、シリコンバレー銀行とクレディスイス破産で。不安が増しているのでしょう。。 23年3月は、週末の金曜日ごとに、金融の大ニュースが出ました。4月は、一体、どうなっていくか・・・濃霧の夜を氷山に向かって進むタイタニック号のように、視界不良です。 船上では、富裕者たちが正装で華やかな会食、ダンス、室内楽の演奏。ダンス・ダンス・ダンス(村上春樹)。これから6か月は続くか? 6か月、金融危機とインフレは終わったという楽観が続くでしょう。人は、近い将来は楽観的に見て、悲観は遠ざけます。船長(中央銀行の議長、総裁)も、濃霧のなか氷山に気がついていなかった。 日本の経営者アンケートでは、景気が回復したという。米国では、住宅価格は、20%から低下してもまだ約5%/年上がっています。2023年は、株価も大きくは下がっていない。電子の金融は、見えない。平穏です。ただし株価が下がったメガITと金融の雇用カットは、激しい。 新聞・TVは、楽観情報を選んで流します。一般的なメデイアの、ミッションでしょう。難しい用語の金融専門的なリポートは紹介されない。事実データによる予想は、実は難しい。データと情報の重みの計量が必要だからです。 【総資産・総負債920兆円のチャールず・シュワブの危機が発現】 シュワブ・グループの総資産・負債は7兆ドル(920兆円)。クレディスイス(総資産・負債5314億フラン:7.4兆円)の124倍と巨大です。 日本で最大の、三菱UFJ(総資産・負債373兆円)の、約2.5倍です。 日本の約3倍の米銀システムにとっても、核兵器の規模です。 シュワブの株価は、3月8日の76ドルから55ドルに暴落しています(-28%)。なお、米国の銀行株全体は、3月8日から現在まで、3週で25%下がっています(暴落のレベル) 原因は、米国の金利が4.75%に上がったことによる、保有国債の満期前の時価下落、約20%でした(-1000億ドル:13兆円が表面化)。危機を直感した預金者からのオンライン引き出しによって、現金が不足し、満期前の国債とMBS債券を売る必要が出て、含み損が実損になったことです。 FRBは、この巨大銀行を、ドルの増刷で救済できるでしょうか。(注)日本と米国でも、この報道がありません。 マンハッタン島の街路を歩くと、ドイツ語に見えるシュワブ(Schwab)銀行がたくさん目につきます。イエレン財務長官とFRBのパウエル議長はともに「米銀の信用は盤石」と言い続けています。 すでに、いくらかは不明ですが、預金引き出しに不足する数兆円規模のドルを、FRBが注入しています。シュワブ・グループの資産規模は、920兆円であり、FRBの規模(8.3兆ドル:1080兆円)に匹敵するくらい巨大です。(FRBの資産・負債の規模) https://fred.stlouisfed.org/series/WALCL 大口預金者の不安から、預金流出が続き、国債・債券の売却損(簿価の約20%)が拡大していくと、FRBも助けきれない恐れがあります。 シュワブが破産すると、日本と欧州の銀行を巻き込んで、世界に銀行危機が広がります。FRBは,何が何でもシュワブを破産させてはならない。チャールズ・シュワブは「Too Big to Fail」です。 シュワブの事例は、金利上昇による国債・債券の含み損(約20%)が現実化したケースです。 【米国の国債+債券+MBS=51.4兆ドルが、20%下落】 米国と海外の銀行がもつ発行金利0.25%から1.25%のドル国債は ・総計で31.4兆ドル(4080兆円)、 ・AAA格の不動産ローンのMBS債券は10兆ドル(1300兆円) ・社債等の証券は10兆ドル(1300兆円)、 合計では、51.4兆ドル(6680兆円)もあります。 ドルの金利は、4.5%に上がっているので、20%の含み損(帳簿価格-売却時価)があるとすると、総額は6680×20%=1336兆円です。FRBでは救いきれません。 (注)国債と債券の。金利変化との関係での価格の公式は、以下です。(長短の債券の残存期間=日米とも平均デュレーションは8年付近) 国債・債券の総額×{(1+発行時金利)の8乗÷(1+上昇した金利)の8乗}・・・1ポイントの金利上昇につき、発行額面から約20%、債券市場での転売価格(時価)が下がります。 売る前は含み損です。国債・債券は発行残高が51.4兆ドルと大きいので、20%は10.28兆ドル1336兆円の、銀行資産の空洞になります。 加えて、まだ5%上がっている住宅価格に約1年先駆けて、リモートワークが35%に増えた商業用不動産(全米)は、25%下がっています。 CMBS(商業用不動産ローン担保証券)も、25%から40%は下がっているでしょう。銀行がもつ、金利が国債より高かったCMBSの価格が、回復する見込みはない。 米銀の、「システミックな全体危機」が明確になってきました。 米ドルの信用恐慌(=ドルの価値低下)の序幕があいたと言っていいでしょう。。 破綻銀行(シリコンバレー銀行、クレディスイス)では、ついに預金の引き出し制限が始まりました。多額の預金流出が止まらないからです。 ◎全米で186の技銀行が破産と予想されるという論文が発表されています。(政府系シンクタンク:フーバー研究所) 日本メディアは報じません。原文は、英語です。 https://www.gsb.stanford.edu/faculty-research/working-papers/monetary-tightening-us-bank-fragility-2023-mark-market-losses 日本の国会では、世界には通じない、のんびりした議論が交わされています。議員の意識が、ガラスの金魚鉢に閉じ込められています。新聞も、あさっての世界、昔から同じです。 極東の島国はいつも平和か、とも思えます。NYやロンドンでは、ウォール街とシティのパブから世界が見えます。東京では見えない。大阪では更に見えない。金融情報ではシンガポールが上でしょう。 代わりにインターネット情報があります。判断し、区分して見極めれば、長期投資のチャンスも見えます。インターネットは世紀を変える発明です。 太陽光に代わる、水素エネルギーの有力部品メーカー、ゴールド、800万円台から230万円に下がり現在は370万円台のビットコイン。いずれも賭けですが、ゴールドは、リスクの大きな賭けではない。 「長期投資では、悲観論が多く価格が低いとき、これはというものを見つけて、買わねばならない」。(注)短期の回転売買の投資は、数週間の短期予想トレンド(罫線のグラフ)に従った売買です。 人口増加地帯以外の不動産は、向こう5年は、リスクが高い。 金利変動にもかかわらず、米ドルとユーロの危機が迫っている感じです。 ■2.ドル・ユーロ危機の、序幕が開いた まだ、舞台の一段低い地下から聞こえる、ハ短調の前奏曲と指揮者しか見えない。イエレン財務長官+FRB議長パウエル氏+ECBのラガルド総裁の頭と指揮棒・・・悲劇は、始まっていない。 米国FRBは、国債を売って5000億ドル(6.5兆円)は絞ってきたドルの増刷の、大規模な再開を迫られています。 4月には10兆円、20兆円、30兆円・・・週を追って、拡大していくでしょう。FRBが、緊急にドルを供給しないとシュワブのような大手まで潰れていき、選択肢はない。 2023年秋からの、米銀全体のシステミックな危機が確定した感じがします。その間金利は下がらず(=国債と債券の価格は上がらず)、銀行の国債と債券の売却損が、日々、大きくなっていくからです。 【銀行危機と政府の財政危機は連結している】 国債は銀行と機関投資家が買います。銀行が危機になると買えなくなって、国債が満足に売れなくなった政府の財政も破産に向かいます。 米国では、満期が来た借換債を含むと、1年に5兆ドル(650兆円:円国債の3倍)の新規国債を発行して、市場で売らないと政府財政が破産します。毎月54兆円のドル国債の新規発行です。これを、信用が低下した銀行が買わないと、国債価格が暴落し、金利が高騰するのです。 バイデン政府(財務省)は、なりふりは構わず、日銀にも米国債を買うことを、要請するはずです。当時の教育大(筑波大学)の駒場高校然とした植田和男氏が、新総裁になる日銀は、買うのか? 駒場には植田氏のタイプの人が、多かった。米国債を大量に買えるのか? 日銀が買うと、「円売り/ドル買い」いになるのである程度は、米銀の危機+米国の財政危機からのドル暴落を防止できるからです。あくまで「ある程度」ですが・・・ 【世界はドル国債売り】 中国の人民銀行は、合計で3兆ドルあった「ドル国債+ドル債券」を売って、ドルの米銀預金も引き出し、金(ゴールド)の現物と、現物がないときは金ETFを買い増しています。準備通貨のドルの価値がこれから3年は下がると想定しているからです。人民銀行は、米子留学、銀行・ファンド勤務者の牙城です。 科挙の伝統がある中国は、学歴を日本よりはるかに重んじる社会です。通貨と世界金融では、宋鴻兵の、中国でベストセラーになった名著、『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』、『通貨戦争』があります。国際金融リテラシーの基本書でしょう。 ドルから離れている中国・インド・新興国(グローバル・サウスの諸国)の買いのため、2022年から23年の金価格は上がっています。現在1グラムが9200円台です(円では歴史的最高値)。23年間、ほぼ上げ基調を続けていて、円価格は9倍です(年平均+10%)。 本源的な通貨である金に対して、いくらでも増刷ができる信用通貨の円の価値は毎年10%下がってきたと見ていい。13年で550兆円も増刷した信用通貨の、金に対する本質的な価値は下がるしかない。 今後2年、下落する信用通貨ドルに対する大きな上昇が始まるでしょう。ビットコインの回復が先鞭をつけるかも知れません。 【金価格の上昇】 米ドル下落危機のときは、基軸通貨のドルの国際的なアービトラージ(代替資産)の金価格が上がります。それが世界の中央銀行の、ドルを売ったときの、金の買い増しです。 ・ドルを売って金を買う中国人民銀行+インド+中東諸国が、買いの先頭です(2022年:1200トン:鉱山生産3000トンの40%)。 https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/d-gold.php 欧州では1位の、預金が多いドイツ銀行(資産・負債:1.7兆ドル:220兆円)が危機を言われます。 ・デリバティブの契約元本が6000兆円。金利スワップが80%(4800兆円)ですが固定金利を売り、変動金利と交換していれば、金利が0%から3.5%に上がったユーロでは、大きな損が出ています。ユーロの中央銀行のECBが、すでにマネーを入れているでしょう。 ■3.テーマは、中央銀行と通貨への信認 シュワブの緊急ニュースから、テーマに戻します。 銀行危機のときも、通貨を増発して注入する中央銀行への信認が失われなければ、FRBが3兆ドル(390兆円)を増刷して銀行を救ったリーマン危機として終わる。 増刷する通貨への信認が失われれば、銀行危機が信用恐慌(全米の1万1000の銀行が閉店)になり、実体経済の恐慌になっていく(1929-33年の大恐慌と同じ)。 【日本の対外資産】 日本経済の強みだったドル建ての対外資産1249兆円(不動産23兆円、証券とドル預金1226兆円)も、ドル金利の上昇とドル安が重なって円に対して30%以上は下がり、米国債を買っている国内銀行と、不動産ローン証券のMBSを買っている機関投資家の危機になって行きます(損失が358兆円:全銀行が債務超過、ファンドは下落)。 これが日銀の円の増刷の必要になっていきます。日本の対外純資産(411兆円)が、ドル火災が、SWIFTの通信回線で瞬間移動し、消失します。 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/iip/data/2021_g.htm ドル建て債券については5%と高いヘッジコストを払ってドル安をヘッジしたものが50%です。50%は、ナマのママです。 米国金利の上昇による、ドル国債と債券の下落分(現在は約20%)のCDSのような保障のヘッジは、かけていない。もろに金利の上昇による価格下落の損(20%)が発生します。 「変動金利を売って、固定金利を買う金利スワップ(将来の金利リスクの等価交換)」は、ある程度はかっているでしょう。しかし、それよりはるかに大きな国債と債券の元本の下落へのヘッジはない。 ■4.トルコの事例研究:通貨が16分の1に下落した 政府・中央銀行への信認が失われた典型的な事例はトルコのリラです。 2021年12月のインフレ率が36%、22年12月64%、23年は40%の物価上昇です。インフレ率40%は、通貨リラの40%下落です。 通貨下落を補うために40%に向かう金利でなければならない。経済理論では、インフレのときは、中央銀行は金利を上げ、通貨量は減らさねばならない(これが金融引き締め)。ところが、トルコ中銀の金融政策は逆です。金利は8.5%に下げ、リラを増発しています。40%のインフレのなかの、真逆の金融緩和。 政府は、最低賃金を54%上げ、物価上昇を補うヘリコプターマネー政策をとっています。トルコ中銀は、赤字国債を買って40%の期待インフレのなかで通貨を増発しています。国債のGDP比は50%くらいですが、対外債務がGDPの50%と大きい。国家財政は破産していますが、正常に続いているように見えるのです。 【リラの暴落:16分の1】 トルコ中央銀行と通貨への信認を示すのは、リラのレートです。 リーマン危機の2008には、1リラが85セント(0.85ドル)でしたが、現在は5.2セント(0.052ドル:6.8円)。 リラは、世界の通貨基準(基軸通貨)のドルに対して16分の1に下落しています。インフレのなかでリラの金利を、逆に下げて通貨を増刷してきたトルコ中銀とリラへの信認は、地に落ちたのです。 国民が銀行に預金をしていると、リラの価値は、8.7%の金利があっても、年率で17%下がっています。預金が1000万円なら170万円/年の損です。普通の考えの人なら、自分の預金をユーロ、ドル、スイスフラン、ビットコインに換えるでしょう。 自国の通貨を大量に売って、外貨を買うことを、マネー・エクソダスとも言います。日銀と円預金を信認している日本人が、600兆円の量的緩和による円安の2013年から2023年まで決して行わなかったことです。 1ドル80円から130円に下がっても(-38%)、1300兆円の預金を外貨に換えなかったのです。日本人は,政府・日銀・円を信用しています。円の信用というより、日本人は、円安の円預金であっても、外貨に換える習慣がない。つまり、金融リテラシーの素地がない。 トルコ、中国、米国、インドを含むアジア、南米、中東、欧州を含む海外では考えられない。預金の外貨への交換は、外貨規制をしている中国以外は、無制限に実行できます。 ◎中東の大国トルコ(人口8478万人:GDP 106兆円:参照ロシアのGDPが230兆円)で起こったことが、中央銀行と通貨への,大きな信認の低下です。これが、2008年から2023年までの15年間、リラが16分の1に下がった原因です。 ◎インフレ(通貨価値:商品購買力低下)の中で、中央銀行が金利を上げず、絞るべき通貨量を増刷すれば、無茶な金融政策をとる中央銀行と通貨への信認は、失われます。 【リラの、外貨への逃避】 一国金融の時代は外貨に換える方法はなかった。しかし1995年の金融ビッグバンの後のマネーは外貨規制はない。自分の資産を守るため無制限に外貨買いができます。 ◎財務省・日銀が、国会で答えることができなかった中央銀行=発行通貨への信認の低下は、「マネー・エクソダスからの通貨レートの暴落」として現れます。 米国、欧州、日本は、現在、インフレです。中央銀行が金利を上げず(逆に下げて)、銀行危機のためとして通貨を増発すれば、現在のトルコと同じことが起こります。 ◎6%インフレのドルと、10%付近のユーロにとっては、銀行危機への対策マネーをFRBとECBが増発して貸与したとき、トルコのリラに似たことが、経済の原理から起こるでしょう。 ◎今回はリーマン危機のときと違い、中央銀行の通貨増刷に限界があるのです。資産額が上位の大手銀行が危機になったとき、十分な量のマネーの増刷できないということです。 (米国の4大銀行は、JPモルガン・チェース、バンクオブアメリカ、シティバンク、ウェルズ・ファーゴです。日本の大手は、三菱UFJ、三井住友、みずほです。) ■5今回は、中央銀行のマネー増発の限界が近い ◎今回の銀行危機に対しては、FRBとECBは、危機を収める十分な量のマネーを供給できない。通貨信用が続く、一定量を超えて増発すれば、ドルとユーロの暴落の恐れがあるからです。 ◎限界は、米ドルで3兆ドル(390兆円)、南欧が弱いユーロでは2兆ユーロ(280兆円)、国債残が1200兆円の日本では100兆円か。 損をするドル預金、ユーロ預金が引き出され、価値を保つ円、スイスフラン、人民元、中東マネー、インドルピー、そして何よりも金の安全資産か、ビットコインのリスクマネーに変わると、FRBとECBがマネーを増発しても、自国通貨の預金が減る銀行の危機は、深化していくのです。 今回、ドルの増発の限界は、5兆ドル(650兆円)、ECBは4兆ユーロ(570兆円)と見ています。インフレ率は、米欧より低くても、日銀の資産=通貨増発量が、737兆円に膨らみ(23年3月)、100%を超えた円では、100兆円の増刷が限度でしょう。 今回は、銀行危機が連鎖するシステミックになると、経済原理的に、中央銀行が預金を守るのに十分なマネーを供給ができない。 通貨への信認の限度を超えて、通貨の増発を行えば、トルコのリラを追うでしょう。リラは年率で17%下落を、15年も続けました。 【信用の臨界点に接近した】 ◎中央銀行は、コロナ後のゼロ金利(2020-21年)、1年後からインフレを引き起こした通貨増発12兆ドル(1560兆円)により、銀行危機救済の役割を、終えたのでしょう。 世界的な金融危機の勃発は,当初予想の2024年3月ではなく2023年秋に近接したかも知れない。2008年の金融危機のとき、3月に全米5位の銀行だったベアスターンズ破産したあと、6か月後が米銀全体に広がったシステミックな危機でした。「リーマン危機」と言われますが、破産したリーマンの名前でシンボリック命名であり、本当は、「米銀全体の信用収縮が連鎖した危機」でした。 ◎〔リードタイムの短縮〕 6か月は、銀行の信用危機が多の銀行に波及するリードタイムだった。今回は、2024年3月ころと予想していたが、大手のシュワブ銀行の危機によって、6か月に短縮された感じがしています。 【今回の世界的な金融危機のあとは、CBDC】 混乱の2、3年あとは、各国で実験が行われているEBDC(中央銀行発行のデジタル通貨)でしょう。 紙幣は残りますが、大部分はEBDCになります。スマート銀行に預金しPC、携帯,電子式のクレジットカード(スマートカード)で引き出して使う。PAYPAYのようなものです。紙幣の取り扱いが少なくなって銀行は統合され、街の支店の多くが消えます。コンピュータとAIがあれば、銀行Mの機能を果たせるからです。紙幣の時代の銀行は、絶滅危惧種になりました。ゼロ金利の国債の運用が多い地銀で進んでいる統合・合併は、その先駆けです。 紙幣の銀行は、ATMも要らず、機能が無効になっていくでしょう。工場のAI化、無人化と同じ進化です。進化は、自然淘汰の進歩ではない。あらたな、展開です。 ■6.後記:バブル崩壊後の長期成長 AIの時代が、1億人が登録したchatGPTとともに始まりました。高校の教科書の知識のレベルなら十分な回答をします。大学や大学院の専門レベルはムリです。Wiki-Pediaの全情報を格納しているという。 医学も含む学問は絶対的な真理ではない。「前提→論理→確率的な仮説的結論」の構造をもつ仮説です。仮説とは、検証前のものです。確立されたガンの診療法も、治療の失敗がすくなかった事例からの仮説です。 常に、前提が問題です。経済学では、数学的に合理的な売買行動をする人間が前提です。金融投資にも有効な行動経済学は、経済学の前提に、疑問を出しています。 合理的な人間が前提の経済学では、 ・将来期待の心理的な集合知から来る信用恐慌と、 ・期待値の集合知で動く株価の変動の原因は解けない。  予想もできない。 鍵は、行動経済学の、人間がもつプロスペクト(期待)の理論にあります。(ダニエル・カーネマン:『ファスト&スロー』)  「ビジネス知識源」ですから、原理への知識まで言うのが義務です。 経済学的期待は、個人が無意識のうちにできあがる集合知になると、 1)正帰還(電気回路ではポジティブ・フィードックの発振)で、自己実現もしますが(=経済学的なバブル価格:金融兼和の2022年まで)、 2)今回の、金利の上昇から生じた金融危機のように、負帰還(ネガティブ・フィードバック)で、金融商品と不動産のバブル価格の全体を崩壊させ、底値にまでもって行きます。 ・銀行危機、通貨危機、株価と債券価格の暴落がこれです。 底値で、世界が終わるのではない。経済には、底値の焼け跡に春の芽吹きのように、新世代が登場します。 3)見方が一定しない混乱の2年くらいで、底値に行ったあとは、長期に反発し、再び、上がり、別の展開が始まります。 たとえば日本の敗戦後の焼け跡のあと(国債と預金が無効になり金融も崩壊)、1960年代は、奇跡的と言われた高度成長の10年でした(GDP3倍、世帯所得3倍、株価18倍)。 ・太宰治的に、戦前の貴族の斜陽の側に身を置くか、 ・戦後のソニー(井深氏、盛田氏)の側を見るかです。 たぶん3年のうちに、新しい時代が来るでしょう。 ◎これからの3年は、それくらい大きな歴史的転換期でしょう。 日経平均は、1950年は100円、1960年は1800円でした(18倍:年率32%↑)。今日は、2万7782円(63年で1800円の15倍:年率4.4%↑と低い)。恐慌と金融崩壊後の株価上昇が、いかに激しいか分かります。 時々刻々と、金融の情勢(=マネーの動き)が変化しています。 こうした危機の時期、人の心理は、経済指標より大きくブレ、変化しています。危機が終わったあとは、成長が来る。これが経済の長期サイクルです。暗いトンネルには、先があるのです。 米国では、6%のインフレと、わずか0.25%、ユーロでは0.5%の、微妙な金利の変化で、預金への不安心理が揺れているのです。インフレが9~10%、金利が3.5%の欧州は米国より深刻です。しかし、伝わってくるヨーロ危機の情報は少ない。そのコアは、資産・負債で欧州1のドイツ銀行です。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です。】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報 があると、今後のテーマと記述の際、より的確に書くための参考になります。 コピーして、メールに貼りつけ記入の上、気軽に送信して下さい。 感想やご意見は、励みと参考になり、うれしく読んでいます。 時間の関係で、返事や回答ができないときも全部を読みます。 時には繰り返し読みます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com 【登録または解除は、ご自分でお願いします】 (有料版↓) https://foomii.com/mypage/ (無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html 【送信先アドレスの変更や解除は、以下で↓お願いします】 購入者マイページ ログイン:https://foomii.com/mypage/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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