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吉田繁治 (経営コンサルタント )

吉田繁治

ビジネス知識源プレミアム:金曜緊急増刊:右往左往する中央銀行(2)
無料記事

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ <1ヶ月にビジネス書5冊を超える知識価値をe-Mailで> ビジネス知識源プレミアム(660円/月:税込):Vol.1323 <Vol.1323号 金曜緊急増刊;右往左往する中央銀行(2)> 2023年3月24日:米欧の銀行危機と、金融商品の価格 ・本稿は、金曜緊急増刊です。 ・有料版・無料版共通とします。 ウェブで読む:https://foomii.com/00023/20230324161231107070 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ホームページと無料版申し込み http://www.cool-knowledge.com 有料版の申込み/購読管理 https://foomii.com/mypage/ 著者へのメール    yoshida@cool-knowledge.com 著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 米欧で、突然表面に出てきた銀行危機(債券の下落)のなかで、FRBの金融政策が「迷走」を続けています。 銀行危機は突然のものではない。危機の準備期間は2年、3年はあります。その間、隠蔽されている。体内で育ったものが、ある日、皮膚を破る。シリコンバレー銀行、シグネチャーバンク、クレディスイス、そして次の大きな噂は、ECB(ユーロの中銀)が0.5ポイント金利を上げ、3.0%にしたドイツバンクでしょう。 満期前のデリバティブ契約は、元本が37兆ユーロ(5210兆円)あるという。金利スワップ(交換)、通貨スワップ(交換)、証券化された債務。契約のときより、金利が上がり、通貨や株価が変動すると、オプション・先物・CDSのように、レバレッジされた巨大損または利益が出る、銀行間契約がデリバティブです。満期日前の損益は簿外であり、分からない。デリバティブは、平時には、金融を安定させます。しかし、金利が上がり債券の価格が下がる金融危機のときには、時限爆弾になります。 FRBは、1か月前の内容を10日前に否定したかと思うと、今度は肯定する。古風な言葉では朝令暮改。見通しがつかない危機のとき起こるものです。 その原因は、FRBが雇用統計、労働の需給と失業率という景気の「遅行指標の動き」を重んじていることが大きい。 圧縮して、論理的に書いています。その論理を、じっくりと辿ってください。個人の、知的な財産になるはずです。本稿の内容は、普通の本には、書いていないことです。自分を投資家としての立場において書いています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1323号 金曜緊急増刊;右往左往する中央銀行(2)> 230324:有料版・無料版共通:金曜増刊 【目次】 ■1.遅行指標の代表が、失業率と不動産価格 ■2.FRBの、金融政策の基本 ■3.経済の、先行指標の代表は、PMI ■4.米国のPMIの、2021年からの動き ■5.曖昧で、多義的な発表:認知と認識の違い ■6.3月22日の、FOMCでの発言(パウエル議長)。 ■7.まとめの解説;銀行の、自己資本の時価での実態 ■8.歴史的なこと ■9.元FRB議長、恐慌学者のバーナンキの反省 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.遅行指標の代表が、失業率と不動産価格 遅行指標とは、景気拡大(需要と投資の増加)や景気の減速(需要と投資の減少)のあとに出てくるデータです。 需要と投資の増減の結果である「物価と金利」は、金融市場による「将来の期待金利」を予想して動きます。一方、雇用、不動産と住宅価格も失業率のように期待金利よりずいぶん遅れて、変化します(6か月から1年の遅行指標)。 【遅行指標の不動産と住宅価格】 例えば、昨日発表された日本の2022年の公示地価(23年1月時点)は前年比1.6%上がっているとされます。  札幌、仙台、広島、福岡では8.5%も高騰しています。地価の統計は、2021年までのゼロ金利とコロナ対策費(60兆円:先行指標)が不動産価格を上げた結果の、遅行指標です。 ↓ 2022年末からは、日本でも、借り入れの長期金利が遅れて0.5%に上がり、米欧では銀行危機です(=マネー量の縮小)。マネーが減ると2023年から2024年には下がるでしょう。  公示地価や失業率などの遅行指標を参考にして投資すると、それは終わったことなので、多くの場合、失敗します。不動産価格が上がり、失業率が下がって、物価が上がった原因の変化を見ておかねばならない。 ◎経済と金融が、大きく方向と枠組みを変えている時期(2022年から2024年)には、FRBの金利政策は、ちぐはぐになります。 金利とマネー量の政策が、実体経済の需要と投資の先行指標になるものだからです。金利が上がり、世界的な銀行危機からマネー量が減ると「別の世界」になるからです。 ■2.FRBの金融政策の基本 ◎ところが、今回のFRBの金融政策は、 ・物価の上昇と、失業率の低さという遅行指標(いわばしっぽ)を、 ・先行きの政策金利と、マネー量の減少という、先行指標の頭で追っています。このため、メビウスの輪のように、裏と表がネジ曲がっています。 〔注;国ごとの遅行もある〕日銀が参照している、日本の物価や不動産の上昇率は、米国の物価や不動産の約6か月遅れです。このため、金融政策と金利上昇でも、金融政策が遅れる米国に、更に約6か月遅れます。株価は,1日遅れです。  なお欧州は、米国とほぼ同時です。英国の物価上昇は2023年2月も10%台と高い。 【FOMC(連邦公開市場委員会)の委員たち:投票権は12名】 米国の金融政策を決める、FOMCの委員は、 ・期待値である「先行指標」と、 ・過去の結果である「遅行指標」を区分して、認識しているとは思えない。(23年3月20日のFOMCの発表内容を見て考えました) 遅行指標である失業率が下がり、物価と不動産価格が上がったからとして、その後に株を買って失敗することも多い個人投資家に、似ています。 ◎投資と金融商品の売買で成功するには、「この数値は、先行指標か、遅行指標か」、強く意識し区分しておかねばならない。 ■3.経済の先行指標の代表は、PMI 数値は、過去のものです。指標のなかで、企業にアンケートをとった購買担当者指数(PMI)などの先行指標は、将来の方向を示唆します。  他方、遅行指標は、終わった過去の傾向を示すだけです。 PMIでは、50以上が景気上昇、50以下は景気後退を示します。2023年3月は47付近であり、景気の下降を示しています。ところがFRBは、米国の景気後退のなかで、今回(23年3月22日)も、物価と、失業率の遅行指標を参照して、銀行の信用危機を逆に深める、0.25%の利上げを決定しました。  利上げは、銀行がもつ既発国債と債券の価格を下げるからです。 (注)米国金利4%から、時価が平均で約20%下がっている債券(及び米国債)の価格は、金利の先行指標です。 ◎PMIの傾向は、株の長期的な売買において参照すべき先行指標です。 ・2021年の半ばが、米国景気のピークでした(PMIが60)。 ・現在は、そのときの60から、47に下がっています(-22%)。 米国株価のS&P500種も、2021年末4760、現在3861です。 PMIの低下とほぼ一致する、マイナス19%です。 【実体経済】 企業は、売上の増加が予想されるときは、購買担当のPMIが示す仕入れや生産を増やします。  減少の予想のときは、PMIに現れる仕入れと生産を減らすからです。 ■4.米国のPMIの、2021年からの動き 米国のPMIでの期待景況感は、2021年半ばをピークに下がっています。ところがFRBは、PMIがすでに下降に向かっていた2022年3月から、利上げをしたのです。これは、逆の、裏返った対策でしょう。  原因は,FOMCの委員たちが、遅行指標を見て、先行指標を見なかったからです。 (米国PMI;1918-2023) https://jp.investing.com/economic-calendar/manufacturing-pmi-829 これでは、FRBの金融政策(景気下降のときの遅れた利上げ)を原因に、景気が一層悪化し、株価も下がるに決まっています。 この表の、65から47へのPMIの低下(-20%)を見てください。 現金の不足から、銀行への預金取り付けも起こるのは当然でしょう。これが、換金化の売りができない長期債への投資が多く、しかも時価の自己資本が脆弱(債務超過)だったSVBとクレディスイスの、突然の破産となって、現れたのです。 ◎PMIの低下速度から見て、FRBは、逆の利下げと金融緩和に転換しないと、 ・貸し出しの減少、マネー量の不足になる金融が引き締まって、 ・銀行の破産、企業の破産、世帯の住宅ローンのデフォルトが増えていくことも、分かるでしょう。(注)分かる=分けて考える。 金利上昇からは、約1年の遅行指標である、米国の中古住宅の価格は、22年末から下がり始めました。リモートワークが増えたため、米国オフィスの価格・賃料(不動産の先行指標)は、前年比で25%も下がっています(2022年)。これは、2023年の住宅価格下落に波及します。商業用不動産が、先行指標であり、住宅価格は約1年の遅行指標です。  不動産では、「金利の上昇開始→(約1年)→商業用不動産下落→(約1年)住宅価格下落→(同時に)ローンのデフォルトの増加→10兆ドルのMBS(住宅ローン担保証券)の下落→銀行倒産の広がり」となっていきます。  不動産は、1.5年前の、2021年がピーク価格だったのです。 ◎ところが、遅れた2023年3月にFRBは、国債・債券価格が20%、不動産価格が25%も下がる中で、逆に、景気の足を下に引っ張る0.25%の利上げをしたのです。 23年4月からは、 ・金融機関がもつ既発国債と債券の価格、 ・ローン金利が上がる不動産は一層下がり、それらの債券をもつ銀行危機は、深くなります。  経済の遅行指標を参照して、「期待の金融政策」を決めるFRBの対策が、対策にならなくなった。期待の金融政策は、「近い未来の方向を金融市場にフォワード・ガイダンス」するものです。 ■5.曖昧で、多義的な発表:認知と認識の違い 以上述べたことは、FOMCやFRB議長のパウエルの発表を、正当に解釈するための、前提です。 10年間の、黒田総裁の発表は「日銀文学」であり、パウエルの発表は「FRB文学」です。数値は少なくアイマイな、言い換えれば多義的な、角度によっては玉虫色の、しかも、過去の金融政策の失敗を隠す言語表現に終始しています。 ◎事実をいえば、 ・中央銀行の利下げと量的緩和(=信用通貨の増発)が資産バブルを作り、 ・金利の上昇と信用通貨の量的な引き締めが、バブルを崩壊させます。 2022年の1年間に、FRBが4ポイントも金利が上げたことによる、国債と債券価格の時価の20%低下(含み損が約1000兆円)は、市場のマネー量の縮小を示すものです。 ◎FRBは、当日の記者向けの文書である「ステートメント」で、利上げ+銀行危機が、自動的に、金融を引き締め(=マネー量を減らし)、経済を悪化させて債券価格も下げていくことまで、示唆しています。 https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230322a.htm <(その部分の引用)Recent developments are likely to result in tighter credit conditions for households and businesses and to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects is uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks. 主旨:最近の銀行破産は、世帯と企業にとって、借り入れの条件が厳しくなって、経済活動と雇用、そしてインフレの重しになっていく。銀行危機の影響は不確かだが、FRBは引き続きインフレと注視していく(2023年2月22日)>(注)FRBは、引き続きインフレと注視していくというのは、前段の、マネー量の縮小との論理矛盾です。 これは、「FRBによるあからさまな銀行危機、企業危機の激化の示唆」です。それならなぜ、FRBは、利下げ期待もあった23年3月に、金融を引き締める0.25%の利上げをしたのか。逆に、利下げをすべきではなかったのか・・・という疑問が残ります。政策が、逆なのです。 パウエル議長が行うFRBの報告は、 ・理性的・数学的な、カント的認識ではなく、 ・経済指標への感情がこもり,行動経済学的が明らかにした障害のある認知を示しています。 当方は、理性的・数値的な、カント的認識を心がけています。 本稿にも、読みにくいことを冒して数字が多いのは、このためです。 正当な数字は、事実を示す認識だからです。 このため、反政府、中央銀行の論になることも、たびたびです。 現実や事実の、1)心理学的な認知と、2)理性的な認識の区分は、実は、容易ではない。メディアは、心理学的な認知を書くものです。(行動経済学の、『ファスト(認知)&スロー(認識)』:2002年のノーベル賞のダニエル・カーネマン』 言葉が示すのは、数字や数式にすれば、間違いが多い「認知」です。 形容詞の「多い、少ない」は、その評価の基準で多さや少なさが変わります。 「ネズミは小さい」とは言えない。人間に基準を置いたとき小さい。アリに基準をおけばネズミも巨大です。玄関の白い階段に、走るアリを見ていると、「昆虫は何を考えて動くのか」、興味がわきます。 ほとんどの場合、1)食物を探す、2)危険を避けることです。立ち止まり、唄っているアリはいない。 過剰な脳をもつ人間だけが、ときに唄い、事実と事実が重なる状況を概念化し、能動的あるいは受動的な言葉を発し、将来も考える。昆虫と動物の観察は,それらの行動の動機を想像すると、おもしろい。解剖学者の養老孟司氏の財産は、昆虫のコレクションという。 脳が、昆虫よりはるかに大きな犬や猫も、近い将来の危険か幸福を予想して、動いています。しかし幸運は期待していない。人間だけが幸運を期待します。だから、時に間違える。犬や猫は、間違えない。 行動経済学の『ファスト(な感情的認知)&スロー(な理性的認識)』を読みながら、考えたことです。仏教の「観」は、認知と認識の両方を同時に行う瞑想でしょう。カントが仏教の観を知っていたら、主著の『純粋理性批判』をどう書いたか? 読書は、文章の行間(数学的飛躍)の想像が、おもしろい。 ■6.3月22日のFOMCでの発言(パウエル議長)。 ▼(1)パウエル氏の発言: われわれは、物価安定の回復にコミットしている。われわれがそうすると国民が信頼していることは、あらゆる証拠が示している。 コメント: FRBが目標に設定した物価安定はCPIの2%台です(現在は6%台)。われわれは物価安定の回復にコミットしているというのは、 ・まだ利下げはしない、 ・逆に金利を上げてマネー量を縮小させるという表明です。 事実、1929年以来、94年ぶりの、銀行への預金取り付けが起こるなかで、短期金利のFF金利を、4.75%~5.0%の枠にまで、0.25ポイントの利上げを決定しました。 4月以降も、利上げをするという姿勢すら示したのです(これは実行できないと見ていますが・・・)。 ▼(2)パウエル氏の発言: パウエル氏は、声明に記された文言を繰り返す形で、米国の銀行システムは健全かつ強靱(きょうじん)だと強調した。金融安定を維持するため、金融当局にはあらゆる手段を活用する用意があると説明した。 コメント: FRBが利上げをすれば、銀行の自己資本を形成している国債と債券の価格は下がって、銀行の資本は、脆弱になります。預金の取り付けが進行する可能性があります。 銀行システムは、「健全かつ強靱(きょうじん)だ」というのは、FRBが、3月22日の利上げを、自己正当化するためです。 本当に健全かつ強靱なら強靭とは言わない。体力があって健康な人は「身体は強靭」とは言わない。かえって、今日は足の筋肉が痛いなどという。 すでに、銀行がもつ国債・債券が20%は下がっているのに強靭とする表現から、逆に脆弱さが見えるのです。福島のあとも、原子力発電は強靭で安全と言っていた日本の経産省と同じです。 2011.3.11のシビアアクシデント(いわば銀行破産)の只中ですらメルトダウンではない、安全だと繰り返していました。 これが政府と政府関連機関の、基本的な性格です(官僚的な態度)。 ▼(3)パウエル氏の発言:最近の銀行混乱は「家計と企業に信用状況の引き締まりをもたらす可能性が高く、そうなれば、経済にも影響が広がる」と指摘。ただその上で、「金融政策面でどう対応すべきかを判断するのは時期尚早だ」と述べた。 コメント: パウエル氏は、米銀の基盤は強固であると繰り返し、預金取り付けをする国民を、逆に落ち着けとし非難しています。この発言は、原因と結果を、ひっくり返したものです。 シリコンバレー銀行は特別だった強調するために、杜撰(ずさん)なマネー運用(=リスクが高く、換金性が低い金利の高い長期債券の保有)を、強く非難しています。 他の銀行には信用機危機はないと言いたかったのです。では、クレディスイスは、どうだったでしょう。噂のドイツバンクは? 虎の子の預金を預ける、銀行の信用が不安だから、国民は取り付けをします。 言葉で「落ち着け」というのではなく、FRBやECBは、銀行資本を脆弱にする利上げとは逆に、 1)利下げをして、 2)国債と債券価格の下落を抑え、 3)銀行資本を強化する増資をするべきでしょう。 ■7.まとめの解説;銀行の、自己資本の時価での実態 米銀大手には、「Tier1(自己資本)÷(リスク債券+安全債券)」は5%しかない。日本の3大メガバンクも、欧州銀行もほぼ同じ5%です。 ところが、4%の金利になって約20%下がった米国債とAAA格の債券は「安全資産」として、リスク資産(貸付金・株など)からは、除外しています。 ◎このため、資産という分母は、約1/2に小さくなっていて、自己資本比率(Tier1)が、リスク資産の10%以上を保っているように見えているのです(政府の公式の見解)。 (注)これは、偽装的で粉飾の自己資本比率の大手銀行と言えますが、BIS規制には対応したものです(バーゼル3)。銀行の本当の自己資本比率は、読者からの質問にもあったことです。 ▼総資産に対する日米の大手銀行のTier1比率は約5%しかない 仮に、国債とAAA格債券に対しても、約20%下がっている時価評価をすれば、大手銀行も本当は資産の約5%しかないので、すでに全行、債務超過(自己資本のマイナス)になります。 このなかで、FRBは今般、0.25%利上げをし、4%の金利で約20%下がっている既発国債(31.4兆ドル)とMBS(不動産ローン担保証券)などの債券(10兆ドル)の価格を、更に約2%下げます。 FRBによる、信じられない金融システムへの政策です。 2021年の、発行金利1.25%の長期債の金利が4%に上がると、時価は以下の計算で下がります。ドルの長短国債の、満期までの平均期間(デュレーション)を8年とします。 円国債1200兆円の平均満期も約8年です。 【ドル国債と債券の、時価(金利4%のとき)】 発行額面41.4兆ドル×(1+0.0125)の8乗÷(1+0.04)の8乗   =41.4×(1.10÷1.37)=41.4×0.80=33.1兆ドル   =8.3兆ドル(1080兆円)下落・・・20%下落 1080兆円の国債+債券(安全資産)、安全資産の時価が下落すれば、米銀とファンド(ノンバンク)の自己資本(推計300兆円)は、すでにふっとんでいて、マイナスになった資本は、1080兆円をのみこむブラックホールになっています。 ◎銀行業の本質は、 ・短期の低金利の負債(顧客の預金)を、 ・預金より2,3ポイント高い金利の長期のマネー(貸付金や債券・国債への長期運用)に、変換することです。 バランスシート(B/S)に記録された、銀行の資産である、債券や国債の時価が下がって売れば大きな損が出るので、売れないときは、マネーが枯渇し、約1か月で顧客からの預金引き出しと、送金に応じることができなくなり、破産します(これがデフォルト)。 米国では、20兆ドル(2600兆円)の、銀行預金があります。 日本では、1698兆円です(22年12月末)。(日銀資金循環表) https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf 金利が上がって、時価での資産の損が大きくなった銀行は、資産の内容に蓋をし、外面で、信用があると糊塗することが習性です。これは、信用を売る銀行の義務です。国民からの信用がなければ何もないのが、銀行と政府です。銀行は、政府に設立が認可されれば、ごくわずかな自己資本で始めることができます。 信用の偽装は、破産した銀行、証券、統合された銀行の全部に、共通します。破産の前の週まで、「われわれの流動性は盤石」と言い続ける。買収される東芝も、将来の業績は好転する、買収の価値は高いとしか言わない。ダイエーも同じでした。企業も信用で仕入れを知れいるからです。 陰謀論めいてきますが、FRBが、 1)以上の国債・債券での時価の損を、数字で認識した上で、23年3月も、国債と債券価格を下げる利上げを行い、 2)今後も、CPI(消費者物価指数)が6%台から2%台に下がるまで、金利を下げず金融引き締めを続けるのなら、パウエル議長の目的は、「現在の、米銀システムの、目的をもった潰し」になるのです。 無邪気に行っているのなら、単にFRBエコノミストの先行指標と遅行指標の混同という無知です。 【不況期のさなかの、遅れた金融引き締めになる】 資産価格と物価の、バブル潰しの結果は、どんな方法をとっても、金融引き締めです。  マネー不足から起こる金融危機(債券の売却難)が集約され、銀行危機になります。普通は売れる国債や債券が、売れなくなるのが信用の危機です。 銀行やファンドの債券トレーダーがもっとも怖がるのは、1)売る債券が20%以上は価格を下げないと売れないこと、2)債券の買い手が、いなくなることです。  こうなると豊富だった流動性(現金)の、急速な枯渇はわかるので、含み損を出さずに早々と手じまいし、職もなげうちます。支払い予定に足る現金がなくなる破産の日が迫っていて、在職していても首切りになるのはわかりきっているからです。 スイスでいちばんのUSBが、帳簿の総資産5341億フラン(76兆円)のクレディスイスを、0.6%の4800億円で買いました。1万人の社員がカットされます。退職金もないでしょう。出ても少ない。  これが、信用だけで成り立つ銀行の社員です。CEOは、隠れて持ち株を約3フランで売っていました(犯罪行為)。現在、株価は0.80フランです。 クレディスイスには4800億円の信用しか残っていなかった。以前、優秀な社員(女性のマネジャーも多い)が多数いて、勢いもあったクレディスイスで講演したことがあります・・・テーマは、日本経済の、低い生産性の問題の原因と対策でした。足を運んだ会社が潰れるのは侘しい。 世界中の銀行とファンド売買している円債券の先物価格は、2021年8月が100、23年2月は94です。0.5%への金利上昇で価格が6%下がっています。  米国債券は、21年8月が100、23年2月は80です(ブルムバーグ)。金利が4%台に上がり、価格は20%下がって、銀行とファンドの危機の中核(空洞)になっています。 こうしたなかで、遅行指標を参照した欧州のECBは0.5ポイント、米国のFRBは0.25ポイント金利を上げ、債券価格を一層下げるのですから、対策は逆転しています。資産と債券の価格バブルは、対策が遅れる中央銀行が作り、中央銀行が潰すのです。 ■8.歴史的なこと:4項 ▼(1)2008年のリーマン危機も、米国の住宅価格の急騰(2000年→2006年に2倍)を潰すための、FRBの利上げから発生しました。不動産バブルの崩壊のあと、FRBのバーナンキは、3兆ドル(390兆円)のドルを増刷したのです。 ▼(2)日本では、1990年からの利上げによる、資産(1985-90年:土地と株が3倍~5倍)のバブル崩壊のあと、1997年にからは、金融危機と、銀行の危機を迎えたのです。 21行もあった都銀は、約5年で、3つのメガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)に統合される「構造改革」になりました(小泉内閣の時代)。 金融の監督官庁だった大蔵省(銀行局)から金融庁が分離されました。省庁の再編(統合)も起こったのです。これは戦後世界で最初でした。日本の金融は、1)資産バブル崩壊と、2)ゼロ金利、3)実験的な量的緩和の3つで,米欧の10年先のことを、行ってきました。 (注)現在世界の、異常な最先端は、40%のインフレのなかで20%から9%に利下げをしているトルコです。近代からの経済学を無視した無茶苦茶な政策ですが、日米欧が、「金融崩壊でどうしようもなくなったあとには」、エルドアンのトルコ風の政策の可能性がないとは言えない。(注)可能性は3%か? https://www.gaitame.com/markets/seisakukinri/turkey.html ▼(3)1929-33年の大恐慌も、第一次世界大戦からの、マネー増刷による株価と不動産のバブルに対して、1913年に発足していたFRBが利上げをしたために起こったものです。 3つとも中央銀行(日銀、FRB、FRB)が主犯です。 ▼(4)2020年のコロナ危機→日米欧で10兆ドル(1300兆円)のマネー増発→ウクライナ戦争から資源・食糧価格高騰→世界インフレ→利上げによる債券価格の20%下落→不動産価格も低下→債券が資産である銀行の危機・破産・・・これが現在です。 ■9.元FRB議長、恐慌学者のバーナンキの、深い反省 リーマン危機の時期の、FRB議長のバーナンキは、これらの恐慌を研究したプリンストン大学の学者でした。デフレ恐慌からの離脱の、ゼロ金利とマネー増発を説くリフレ派の元祖が、バーナンキです。 2022年9月には、主旨変えをして、「(自分が行った)リーマン危機のときの3兆ドル(390兆円)のマネー増刷は、間違っていた。米国の金融の構造を変えなかったから・・・」と述べています。パウエル議長は、バーナンキの講演を知っているはずです。 現在の議長のパウエル氏が、意図的で計画的なら、主な銀行を潰し、その後の、米国の金融構造の改革を目指しているのかもしれません(日本の2000年代初期と同じ)。 銀行の破産後のもっとも近い事例は、最大手のUSB(ユニオン・バンク・オブ・スイス)が、2番手の破産したクレディスイスを30億フラン(4300億円)の捨て値で買収したようなことです。  社員だけは1万人の雇用がカットされます。ベイル・インで、CoCo債(AT-1:2.2兆円の偶発転換社債)を含む出資金は、ゼロになります。一般の預金は、保護されるようです。 (注)CoCo債:金融機関の自己資本比率が、あらかじめ定められた水準を下回った場合、元本の一部または全部が削減される、または強制的に株式に転換される債券。 日本はバブル崩壊と高齢化で米国の先輩です。米国も、日本とドイツの、約20年あとを追って、GDPの増加率より公的年金支給、公的医療費、社会福祉費が増える高齢化に向かっています。 米国と欧州は、現在の財政構造の延長では、 ・今後、日本の2000年からを負って、 ・急激に増えていく公的年金支給、公的医療費、社会福祉費を、賄(まかな)えないのです。 【後記】 本稿はここまでとします。約8時間の原稿を書いたあとは、毎回、脳が空っぽになり、書き尽くしたと感じます。しかし8時間くらい経つと、どこからか、また書くべきことが出て来るので、おもしろい。情報は、出すことで、生まれるもののようです。会社勤務の8時間には、意味があります。書くことと通勤は、同じ冒険でしょう。 今日が終われば、新しい明日がある。犬や猫はたぶん、明日を期待してはいない。死は目覚める明日をなくす。だから怖い。本稿も、圧縮して書いています。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です。】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報 があると、今後のテーマと記述の際、より的確に書くための参考になります。 コピーして、メールに貼りつけ記入の上、気軽に送信して下さい。 感想やご意見は、励みと参考になり、うれしく読んでいます。 時間の関係で、返事や回答ができないときも全部を読みます。 時には繰り返し読みます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com 【登録または解除は、ご自分でお願いします】 (有料版↓) https://foomii.com/mypage/ (無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html 【送信先アドレスの変更や解除は、以下で↓お願いします】 購入者マイページ ログイン:https://foomii.com/mypage/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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