… … …(記事全文2,384文字)消費税は直接税であるが、多くの事業者は消費税増税時に増税分の「追加費用」を価格に転嫁をする。
つまりは、消費税が増税されると、消費者物価が上昇する。結果、消費税は「消費者が負担している」ように見える。
もっとも、そんなことを言い出すと、法人税も、固定資産税も、所得税も、住民税も、社会保険料も、全て売上が原資だ。つまりは、消費者が支払った金額から「負担」されている。
結局のところ、消費税は、法人税などと同じく、企業の「利益」を小さくする費用の一つに過ぎないわけだが、ここでは、
「消費税が増税されると、全ての事業者が増税分を価格に転嫁する」
と仮定しよう。
その場合、消費税には、
「所得の低い人の負担割合が高く、所得が高い人の負担割合が低い」
という逆進性が生じる。
消費性向が高い低所得者は、「負担」した消費税が所得に占める割合が大きい。
逆に、消費施工が低い高所得者は、「負担」した消費税が所得に占める割合が小さくなるわけだ。
逆進性解消のために欧州諸国は軽減税率を適用しているが、実にややこしい。
例えば、
「ハンバーガーを持ち帰りで買うと、税率が低くなる。店で食べると(外食に該当するため)税率が高くなる」
といった問題も生じてしまう(日本も同様だが)。
というわけで、逆進性解消のために「給付付き税額控除」という考え方が登場した。
カナダやシンガポール、ニュージーランドなどがは、給付付き税額控除で逆進性対策を行っている。つまりは、
「消費税負担分を低所得者に還付する制度」
である。
例えば、日本で年収が300万円の人がいたとする。基礎的な食料支出に対し、給付付き税額控除を適用する。
食料支出が年間100万円とすると、消費税10%の場合、約10万円が給付されることになる。
確かに、年収300万円の人は食料支出に対する消費税を「負担していない」ことになり、逆進性は解消方向には向かう。
問題は、給付付き税額控除には、需要創出効果がほとんどないという点である。
週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~
三橋貴明(経世論研究所所長)