… … …(記事全文10,478文字)● 日銀は中央銀行界のゴジラ
日本銀行は今年3月19日にマイナス0.1~0.0%から0.0%~0.1%に引き上げていた政策金利を、2024年7月31日の金融政策決定会合でさらに0.25%に引き上げると発表しました。
そこで今までずっと「金利はタダ同然だし、返すころには円がもっと安くなっているから元利返済負担はもっと安くなる」と安心しきって借りた円で他国の金融資産を買って利ザヤを膨らます円キャリーという手法が全面崩壊して、円は高騰、日米を始めとして主要国の株価がいっせいに下落したというのが定説になっています。
ところが次のグラフをご覧いただくとわかりますが、じつは円が米ドルに対して過去37年間で最安値を付けたのも、日経平均株価が最高値を付けたのも、日銀による今年2度目の利上げより約3週間前のことだったのです。
上段は米ドルの対円レートですが、7月10日に過去37年間で米ドルは最高値、円は最安値となる1ドル161.6円をつけました。そして、下段を見ると翌7月11日には日経平均株価が4万2224円の史上最高値をつけていたのです。
その直後からドル円は円高の方向に、日経平均は下落の方向に急転換していました。つまり、国内金融市場に関するかぎり、7月31日の日銀利上げはもう決まっていた円高・株安への方向転換を追認するものでしかありませんでした。
日銀利下げが非常に大きなインパクトを持ったのは、むしろアメリカ株を始めとする世界の金融市場に対してでした。
増田悦佐の世界情勢を読む
増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)