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増田悦佐の世界情勢を読む

増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)

増田悦佐

気候変動危機説のウソと農業縮小論

このところグローバリスト集団の総司令部とも言うべき世界経済フォーラム(WEF)を中心に「農業は人為的二酸化炭素(CO2)ガス排出量の3割以上を占めているから、農業を根本的に変えないかぎり、CO2排出量のネットゼロ化は達成できない」といった主張が目立ちます。

そして、世界中でもネットゼロ化にもっとも熱心なーロ圏各国政府の農業いじめ政策に抗議して、多くの農民が大型トラクターで公道を占拠したり、政府や自治体の建物に堆肥をぶちまけたりといった派手な反対運動をくり広げています。

地球全体を「温暖化の危機」が襲っているというのはほんとうなのでしょうか。もしそれがほんとうだったとしても、その危機はCO2排出量を削減することでしか解決できないのでしょうか

さらに、CO2排出量削減のためのCO2排出税の徴収はユーロ圏農業に破滅的な影響を及ぼしているのですが、もし今年の大統領選でバイデンが再選されたら、アメリカの農業にも似たような被害が及ぶでしょう。アメリカの有権者たちはそれを許すでしょうか。

今回はこうした問題に焦点を当てて考えてみようと思います。


●    CO2濃度が上がると、大気温も上がる?


最初に検討しなければならない重要な問題があります。世界中の気候変動危機説を唱える人たちは「CO2濃度が上がれば、気温も上がる。CO2濃度が下がれば、気温も下がる」ことを前提に、温暖化対策としてCO2濃度を下げようとしています。

でも、これは自明の前提と考えていいことなのでしょうか。

まったく違います

地球が誕生したのは約46億年前、その地球上に生命が誕生したのは約38億年前のことでした。

ですが、その後長いこと深海の冷たい海底のところどころに、マグマが直接吹き出して暖かくなっている場所があって、その周辺に生息する地味で小さな生きものしかいなかった時代が約30億年と、想像を絶するほど長かったのです。

私たちが肉眼で見てわかるような動植物がさまざまな姿かたちで一斉に誕生したのは約5億4000万年前のカンブリア紀初頭、「カンブリア紀生命大爆発」と呼ばれる時期のことでした。

その生命大爆発以降だけでも、じつに5回それまでに地球上に存在していた生物種の75%以上が絶滅するという大量絶滅期がありました。

そういう時期に必ず大気中のCO2濃度が上がり、大気温も上がっていたのかというと、全然そうではなかったのです。

次のグラフをご覧ください。



紫の折れ線がCO2濃度、そして水色の折れ線が大気温です。

非常に大ざっぱな言い方をすればCO2濃度が高ければ気温も高いと言えますが、一律でそう言い切ってしまうにはあまりにも例外となる時期が多かったことに気づきます。

しかも「CO2濃度が上がっているのに大気温は下がった」とか「CO2濃度が下がっているのに大気温は上がった」とかの例外的な時期が、猿人誕生以来でもたかだか400万年の歴史しか持たない我々人類にとっては気の遠くなるほど長い何千万年という期間にわたって続いたこともあったのです。

もう少し細かく見ていくと、過去5回に及んだ生物種大量絶滅は、ほとんどCO2濃度と大気温が逆向きに動くという例外的な時期に起きていたことに気づきます。

最初の大量絶滅生物種の85%が消滅したオルドビス期末には、CO2濃度は緩やかに上昇していましたが、大気温は急激に低下していました。

2回目の大量絶滅が起きて生物種の82%が失われた後期デボン紀には、CO2濃度は急上昇してから急降下という目まぐるしい動きでしたが、大気温は急低下を続けていました。

… … …(記事全文13,110文字)
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