… … …(記事全文13,596文字)イスラエル軍によるガザ侵略戦争は、あくまでも故郷にとどまろうとするパレスチナ人の絶滅を目論むジェノサイドであることがますますはっきりしてきました。
南アフリカ共和国政府による「イスラエルのジェノサイド告発」を受けて、今月25日にはオランダのヘーグにある国際司法裁判所が画期的な判断を下しました。
「イスラエルはパレスチナ人に対してジェノサイド(人種絶滅、民族浄化)をおこなっていると疑うに足る根拠がある。イスラエル政府はジェノサイドを防ぐために最善の努力をし、1ヵ月以内に改善点を報告せよ」と命じたのです。
これで少しは抵抗する手段を持たないパレスチナの女性や子どもたちを完全武装したイスラエル軍兵士が大量虐殺する事態が緩和するかと思ったのは、まったくの早計でした。
緩和するどころか、イスラエル軍はますます非武装民間人の虐殺を拡大しています。
● タカ派の本性を剥き出しにしたジョー・バイデン
さらに、この暴挙の最大の金主となってイスラエルに武器弾薬を送りつづけているアメリカ政府が「国際司法裁判所や国連はアンチセミティズム(反ユダヤ主義)に毒された組織だから、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を停止する」と言い出しました。
今やアメリカの忠実な子分になり下がったイギリスや、いまだにナチスドイツの亡霊を持ち出されるとイスラエルになんの反論もできないドイツが追随するのは予想できました。
ですが、露骨な人種差別を許せば自分たちが不利になることはわかりきっているはずの日本政府まで、右にならえで拠出金を停止してしまったのには、あきれるほかありません。
イスラエル軍がもう3カ月以上にわたってパレスチナでおこなっているのは、あからさまな人種差別、宗教差別にもとづく迫害であり、虐殺です。
のんきな日本人はあまり真剣に考えていませんが、欧米諸国の知識人、とくに「私は進歩的で開明的なリベラルです」と自称する人たちのあいだにも、頑固な人種差別主義者は大勢います。口に出せば社会的地位にかかわるので言わないだけです。
イスラエル政府高官やイスラエル軍将校が「パレスチナ人は人間以下の動物だから、何人殺そうと犯罪にはならない」といった発言をすると、自分が言いたくても言えなかったことを言ってくれたと喜んでいる連中がいるのです。
その典型が、これまで痛々しいほどの老衰ぶりを見せていたアメリカのジョー・バイデン大統領でしょう。
イスラエルのガザ侵略が始まるや否や、今までどこに隠していたのかと思うほどの「決断力」で、イスラエル軍によるパレスチナ民間人の大量虐殺を支持し、支援しつづけてきました。
それどころか、凄まじい経済封鎖で食糧確保もままならないパレスチナ人にとって命綱になっているUNRWAによる救援活動を兵糧攻めで阻止すると平然と宣言したのです。
増田悦佐の世界情勢を読む
増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)