… … …(記事全文13,274文字)今年最後のウェブマガジンをお届けします。
「来年のことを言うと、鬼が笑う」と言いますが、長く尾を引きそうな問題山積の現代社会で、私はひとつだけ確実に来年中に決着がつく問題があると見ていますので、その点について書こうと思います。
何についてどんな決着がつくかというと「EVは実用に堪えない」という事実が世界中に周知徹底されるということです。
エンジン車の性能では日本のメーカーに勝てないと諦めて、社運・国運を賭けてEVに経営資源を突っこんだ米中独の自動車メーカーが壊滅状態になり、日本車メーカーは、日産以外ほぼ全社が順当に性能の良さ、割安さ、堅牢さを再評価されるでしょう。
まず、あれだけ鉦や太鼓で宣伝に努めても、世界中のEV市場がいかに狭くて不便なものかというところから見ていきましょう。
● 大騒ぎしても普及の進まない自動車EV化
次の2枚組グラフをご覧ください。
左は2022年現在でどれほどのEVが登録され、公道を走れる状態になっているかを示すグラフです。登録済みEV台数では1100万台の中国が圧倒的にリードしているように見えますが、これはまったく信用の置けない数字です。
実際に走れる状態になっているEVは、おそらくこの半分か3分の1程度にとどまるでしょう。もっと少ないかもしれません。そう推定する理由は、後ろのほうでくわしく説明させていただきます。
ひんぱんに公道を走っているEVがいちばん多いのは、たぶん2位のアメリカでしょう。しかし、2022年時点ではたった210万台、登録済みの乗用車・軽トラックの総数が2億数千万台ですから、1%にも満たなかったのです。
なお、プラグイン・ハイブリッド車を合わせると2022年末の段階で全登録車中の1.2%に達していたようですが、いずれにしても圧倒的な少数派にとどまっているのは間違いありません。
増田悦佐の世界情勢を読む
増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)