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増田悦佐の世界情勢を読む

増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)

増田悦佐

大帝国が滅びるとき――腐敗は芯から始まり、 破綻は周縁からやってくる 前編

イスラエル軍によるガザ侵略戦争は、あくまでも故郷にとどまろうとするパレスチナ人の絶滅を目論むジェノサイドであることがますますはっきりしてきました。

去年の11月にも取り上げた話題ですが、アメリカ政府、民主・共和の2大政党、官僚機構、3軍及び海兵隊、さらに大手マスコミにいたるまで、なぜこれほどおおっぴらに残虐行為をおこなうイスラエルを支援し続けるのでしょうか。

もう一度この問題の解明に取り組みます。イスラエル軍による凶悪な戦争犯罪が根絶されるまで、何度でもあらゆる角度から彼らを無条件で全面的に支援するアメリカ政府と、こんなにひどい政府を支持する米国民の責任を追及するつもりです。


●    法治国家から放置国家に転落したアメリカ


まず次の2段組写真をご覧ください。



左上は去年の正月元旦のガザ市内中心部です。慢性的にイスラエルとの「国境」もエジプトとの国境も封鎖され、あらゆる物資の搬入に苦労が絶えない中で、ここまで整然とした街区を創りだしたパレスチナ人の皆さんには敬服します。

右下は、まったく抵抗する手段を持ち合わせない非武装の民間人が大多数のこの街区を完全に廃墟としてしまったイスラエル軍の蛮行に約3ヵ月さらされた後の、今年正月元旦の同じ街区の見るも無惨な姿です。

これほど多くの女性や子どもを中心とする民間人を殺傷し、その資産を破壊することを正当化する論理など、存在しません

イスラエルの現政権や軍人兵士たちは「ユダヤ人ひとりの命にはパレスチナ人数百人数千人分の価値があるから、ユダヤ人ひとりが殺されたらパレスチナ人、数百人、数千人を殺しても正当な対価を払わせただけだ」と信じている人種差別主義者です。

ですから、論理はでたらめでも彼らの暴虐には彼らなりの「確信」がこめられています。しかし、現バイデン政権を擁護するアメリカ国民は、イスラエルの極右政権や軍人兵士たちと同じような人種差別主義者集団なのでしょうか

アメリカ国民のあいだでは「去年の10月6日にハマスが突然イスラエル領内で大勢の民間人に対する殺傷行為をおこなったから、パレスチナ人は当然の報復を受けているだけだ」と主張する人が多いようです。

ですが、これは完全な歴史的事実の歪曲です。次の図表のうち右側にある年表部分でかんたんに確認できることです。



上から5番目までのユダヤ人シオニスト集団によるパレスチナ人虐殺は、第二次世界大戦前から勃発直後に起きていた事件です。

大衆暴動としてのユダヤ人虐殺がドイツ語圏各地で起きた「水晶の夜」事件が1938年、ヒトラーによる「ユダヤ人問題の最終解決」提唱が1942年ですから、シオニスト集団によるパレスチナ人虐殺がユダヤ人に対する迫害への報復だったという説は、まったく筋が通りません

もし報復説が正しかったとしても、なぜドイツ人に報復せずに平和にユダヤ人と共存していたパレスチナ人を狙うのかと言えば、強い相手ではなく弱い相手ばかりに襲いかかるシオニストたちの卑劣さがよく出ているとしか考えようがないでしょう。

1947年にじつに6ヵ所にわたってシオニスト集団によるパレスチナ人虐殺が起きていたのも、非常に重要な事実です。このとき、まだイスラエルという国は地球上に存在していませんでした。

… … …(記事全文15,841文字)
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