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山田順の「週刊:未来地図」
No.692 2023/10/31
「経済」の3連呼が虚しい国家衰退
もう国を出ないと若者たちに未来はない
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岸田文雄首相は、「経済、経済、経済…」と3回連呼したが、「減税」政策などの中身を見ると、なにをしたいのかさっぱりわからない。このままでは、日本は限りなく落ちていくだけだろう。
いまだに「デフレ脱却」などと言い、「資産運用特区」をぶち上げるなど、あきれるほど「お花畑アタマ」だ。もう手遅れとは思うが、このまま、この国のシステムのなかで生きていくと未来を誤る。「シュリンクジャパン」から一刻も早く脱出せよ。
[目次] ─────────────────────
■学習塾通いの子供たちを見て思う
■新宿・歌舞伎町は本当に日本なのか?
■虚しい「経済、経済、経済…」の3連呼
■いまだに「デフレ」と言う「お花畑アタマ」
■インフレを放置すればいずれ破綻する
■日本の経済力は1970年代前半まで落ちた
■GDPドイツに抜かれ世界第4位転落に無反応
■「日本は四季がある美しい国」はどこに?
■「シュリンクジャパン」から脱出せよ
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■学習塾通いの子供たちを見て思う
私の家の近所には、学習塾がいくつかある。夕方になると、そこに子供たちが自転車でやって来て、駆け足で塾のあるビルに入っていく。そうして、8時、9時ぐらいまで明かりが煌々とともった教室で授業を受けて、終わると大急ぎで帰っていく。これから家で夕飯なのだろう。
そんな姿を見ながら、この子たちの将来はどうなるのだろうと思うと、暗澹たる気分になる。「いったいいつまでこんなことを続けているのか?」と、日本の教育の在り方、日本社会の在り方の旧態依然、時代錯誤ぶりに腹が立ってくる。
もはや、日本の教育制度の下でいくら勝ち抜いても、将来は保証されない。人生は豊かにならない。受験に勝って「いい大学」→「いい会社」に入ったとしても、給料は先進国水準の半分にもならない。すでに、受験地獄はなく、「総合型選抜」「推薦選抜」が主流になったので、大学教育のレベルは以前にも増して低下している。
そのうえ、日本の教育では、必要な「ITスキル」も「英語」(あえて「世界標準語」としておきたい)も身につかない。
コロナ禍の2020年、一時、「9月新学期案」が盛り上がったことがある。しかし、文科省および政府が「直ちに導入するのは困難」と表明し、あっという間にたち消えになった。これを見て、私はもう日本は立ち直ることはないだろうと思った。
■新宿・歌舞伎町は本当に日本なのか?
今年もいろいろなところに行ったが、日本の街の光景はもはや日本ではない。インバウンドで、観光地はどこも外国人旅行者で溢れ、昔のアジア諸国の観光地に紛れ込んだ気分になる。
とくに新宿に行くと、ここは日本ではないと思う。
「新宿東宝ビル」、西武新宿駅近くに今年誕生した「東急歌舞伎町タワー」、「ゴールデン街」は、外国人旅行客で溢れかえっている。とくに、新宿東宝ビルは、ビルの8階からゴジラが街を見下ろし、お決まりのBGMとともに咆哮している。その姿をスマホで撮影している外国人旅行客の、なんと多いことか。
夜の東急歌舞伎町タワーの屋台、そしてゴールデン街の飲み屋は、もう外国人だらけ。完全なお祭り状態だ。
こういう光景を見て、私が思い浮かべるのは、昔のバンコクや上海である。20年ぐらい前まで、外国人旅行客は日本などより、外国人ツーリズムに幅広く門戸を開いたタイや中国に殺到していた。観光スポットに行くと、外国人だらけだった。
その光景と、いまの新宿・歌舞伎町はそっくりである。
だから私は、ここは日本ではなくなったと思うのだが、
歌舞伎町に来ている外国人旅行者に聞くと、ここが「This is Japan」と言うのである。かつて出版社勤務時代、ゴールデン街には作家やライターなどとよく行ったが、あそこはカウンターで外国人と「Where from?」と言って飲むところではない。