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山田順の「週刊:未来地図」
No.693 2023/11/07
時代錯誤、現実無視
岸田政権が招く「さらに失われる30年」の無残
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コロナ禍が明けたら、日本も世界と足並みを揃えて経済復興していくのではないかと、私は密かに期待していた。しかし、その期待はいまや完全に裏切られた。岸田政権の経済対策は、 時代錯誤、現実無視のオンパレードである。
GDPでドイツに抜かれて4位に転落したというのに、この国にはそれを深刻に受けとめる気配もない。
もう絶望するほかない現状で、これでは「失われた30年」は「さらに失われる30年」になるのは間違いない。
[目次] ─────────────────────
■岸田内閣の支持率ついに20%割れ!
■「資産所得倍増プラン」で貯金を吐き出させる
■NISA非課税の永続化のどこが経済対策
■GDP 4位を転落と思わない負け犬根性
■「ライドシェア」「EV」を議論する時代錯誤
■EV化、風力、太陽光発電を阻む石器アタマ
■再生可能エネルギー転換とCO2排出削減
■世界が進む方向はスマートシティ化
■UAEは世界でもっとも進んだスマートシティ
■世界の度肝を抜くサウジの未来都市建設
■第2のシリコンバレー、オースティン
■大阪万博とリニア新幹線が日本凋落の象徴
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■岸田内閣の支持率ついに20%割れ!
「所得税と住民税の定額減税 1人あたり年間4万円」という「減税」が目玉という経済対策が発表されて以来、岸田内閣の支持率は急落した。
その極め付けは、11月5日に発表された「社会調査研究センター」(SSRC、本社:さいたま市)のスマートフォンを対象としたインターネット調査方式「dサーベイ」である。
この調査による岸田内閣の支持率は、なんと、前回10月の調査から4ポイント減の19%と、ついに20%を割り込んでしまった。
支持率急落の原因として挙げられているのが、経済対策の不甲斐なさだ。11月2日に決定された政府の経済対策を「評価する」はたったの9%。「評価しない」は、70%にも達した。
減税が評価されないというのは、それが一時しのぎの選挙対策だと見透かされてしまったからである。ただし、ここまで支持率が低下したからといって、倒閣運動など起こらない。国民によるデモもない。いまの日本人には、なんとかこの局面を打開ししてよりよい未来をつくろうという気概がない。
■「資産所得倍増プラン」で貯金を吐き出させる
「経済、経済、経済」と3連呼した「増税メガネ」岸田首相だが、あきれるのは、その頭のなかが時代錯誤で、現実と乖離していることだ。
なにしろいまだに「デフレ脱却」などと言うのだから、空いた口が塞がらない。
今回の経済対策のなかで、「減税」と並んで最悪と思えるのが、「資産所得倍増プラン」の現実無視ぶりだ。内閣府のHPには「資産所得倍増元年」という文字が踊っているが、これはいったい誰に向けたものなのだろうか?
日本人の個人金融資産はいまや2000兆円以上に達し、その半分以上が預貯金となっている。これを投資に振り向けて経済を活性化しようというのだが、ではいったい誰がそんな資産を持っているのか?
金融庁によれば、年齢別の金融資産は、70代以上で「金融資産非保有」が約3割いる反面、金融資産「1000万円以上」は4割以上もいる。つまり、金融資産は高齢者に偏っているのだ。ただし、高齢者は「老後に2000万円必要」という脅迫から預貯金を切り崩さないでいるというのが現状だ。