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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.691:政府支援では問題は解決しない!「ホタテを食べよう」キャンペーンのバカバカしさ


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            山田順の「週刊:未来地図」                 

                          No.000 2023/10/24

             政府支援では問題は解決しない!

    「ホタテを食べよう」キャンペーンのバカバカしさ 

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「増税メガネ」と言われるのを嫌って、岸田首相が打ち出した期間限定の「所得減税」の評判がサイテーだ。ともかく、なにをするにもバラマキと政府支援。ほかに政策がない。これでは、日本は完全な社会主義国である。

 原発処理水放出による中国の日本の海産物の輸入禁止による漁業者への補償も、同じバラマキでビジョンがない。その目玉とされているのが「ホタテ」で、政府は自ら「ホタテを食べよう」キャンペーンに乗り出している。

 しかし、いくら日本国民とはいえ、中国の嫌がらせへの対抗心だけで、価格も下がらないホタテをもっと食べるだろうか? ホタテの現状を知れば知るほど、食べるのがバカバカしくなってくる。 

 [目次]  ─────────────────────

■首相自らが「2日連続で食べた」とアピール

■中国リスクを顧みなかった業者をなぜ救う?

■利益確保のために在庫を積み上げるだけ

■最北の村「猿払村」に立ち並ぶ“ホタテ御殿”

■中国経由の流通チェーンに乗っただけのこと

■天然物などない、ホタテはほぼ100%養殖

■食品輸出のための認証を取らないで丸投げ

■禁輸を迂回できる道はいくらでもある

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■首相自らが「2日連続で食べた」とアピール

 

 中国の日本の海産物の輸入禁止が始まってから、いつの間にか、日本の産海産物の主役にホタテが躍り出た。最近は、スーパーやデパート、回転寿司などで、「ホタテを食べよう」キャンペーンが盛んに行われている。

 なにしろ、政府自らがキャンペーンに乗り出しているのだから、民間が便乗しないわけがない。

 

 先月の29日には、宮下一郎農林水産相自らが、記者会見で、「#食べるぜニッポン!」と書かれたプラカードを掲げ、「毎月1粒ずつ年12粒食べてほしいが、1粒ずつはちょっと無理なので、数個入ったホタテ料理を年に2回食べて応援してほしい」などと訴えた。

 岸田文雄首相にいたっては、10月17日、官邸を訪れた北海道の鈴木直道知事や地元の漁連関係者と面会し、ホタテの刺身を試食して、こう言った。

「肉厚感と、それからなめらかさ、この舌触り、その喉越しというか、なんかこう…豊かでいいですよね。きのう関係大臣と昼飯食ったときに、ホタテのフライをいただきました。2日連続ホタテです。もう一個いいですか?」

 岸田首相はすでに、9月の段階で、これまでの風評被害に対するための約800億円の補助金に加え、新たに207億円を水産業への緊急支援に投じると宣言している。

 その目玉がホタテで、「ホタテはオレが守る」と豪語していた。

 しかし、物事はそんな単純なものではない。

 

■中国リスクを顧みなかった業者をなぜ救う?

 

 農林水産省によると、2022年の日本の水産物の輸出額は、3873億円。このうち、ホタテの輸出額は1070億円で、品目別のトップの座を占めている。そして、ホタテの輸出先の約半分が中国となっている。

[日本のホタテ 輸出先トップ3] 

  1.中国(467億円)

  2.台湾(111億円)

  3.アメリカ(78億円)

 しかも、中国向けの輸出の約8割が、北海道の水産業者からのもので、試算では、今回の中国の輸入禁止で約400億円を北海道は失うことになる。

 つまり、その穴埋めを、日本国民がもっとホタテを食べることで補填する。そうして、北海道のホタテ業者を守ろうというのが、政府の狙いなのだが、「冗談ではない」という反対の声がある。

 その最大の理由は、「中国リスクを顧みず、中国一辺倒で儲けてきた業者をなぜ救わなければならないのか。こうなったら、中国以外の販路を開拓すればいいではないか。税金や国民の善意に突け込むのはおかしい」というものだ。

 

… … …(記事全文5,757文字)
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