━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.672 2023/06/13 中国デカップリングは日本を確実に貧しくする。 耐えられるのか、日本経済? ウェブで読む:https://foomii.com/00065/20230613090000110227 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-110141.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ アメリカと中国との間で、貿易戦争が起こり、それが発展して「新冷戦」になって以来、日本にとって、「中国デカップリング」(China decoupling)は最大の問題である。 ここ数年、日本企業は中国撤退を進めてきたが、はたして、どの程度まで進んだのだろうか? 現在、半導体分野はそうせざるをえなくなったが、まだ撤退できないでいる企業も多い。 日本の保守言論は安易に「脱中国」「反中国」を唱えるが、中国デカップリンをやればやるほど、日本経済は大きな打撃を受ける。日本は確実に貧しくなる。はたして、日本経済はそれに耐えられるのだろうか? [目次] ────────────────────────────── ■「中国撤退は難しい」はすでに昔話 ■3通りあるなかで「会社売却」が有利 ■問題は利益をどの程度捨てられるか ■コロナ禍により撤退は加速する一方に ■経済産業省の「中国撤退」補助金 ■半導体装置にみる中国禁輸のジレンマ ■「デカップリング」ではなく「デリスキング」 ■「フレンドシェアリング」によるリスク分散 ■中台有事でGDPの53兆円が消失 ■インド、ASEANにおいては脱中国は不可能 ■米トップ企業CEOは脱中国に反対 ■ロシア敗退で中国外交が変わることも ────────────────────────────────── ■「中国撤退は難しい」はすでに昔話 かつては誰に聞いても、「中国撤退は難しい」と言っていた。メディアも「中国でのビジネスは出ていくよりも撤退するほうががはるかに難しい」と言っていた。 それは、中国が共産党独裁国家で、なにをするにも当局の許認可が必要だからだ。当局の許認可がなければ、外資系企業は清算ができない。清算して撤退されたら、中国側、とくに地方政府は税収が減るうえに雇用も減るので大いに困る。そのため、あの手この手の嫌がらせをする。 その実態が、メディアを通して報じられることが多かった。 しかし、最近の中国は違う。撤退は、わりとスムーズにできるようになった。外資規制は強くなったものの、清算に関しては法整備が整い、手続きさえ踏めば可能になった。また、かつてできなかった配当送金も可能になった。さらに、地方政府は、企業誘致を最重点とした政策を取らなくなった。 つまり、「出て行くなら、出ていってください」という姿勢に、中国は転換している。 ならば、どんどん出ていけばいいと思うだろうが、そうはいかない。なぜなら、中国は大市場であり、進出した日本企業の多くは儲かっているからだ。儲かっているのに、それを自ら捨てる。そのことが問題なのである。… … …(記事全文7,439文字)