━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.659 2023/03/14 脱炭素社会、EV時代が来るなら 知っておきたい「リチウム」争奪戦の現状 ウェブで読む:https://foomii.com/00065/20230314090000106663 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-106611.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ここに来て、EVシフトが一段と進もうとしている。ルノーが日産との資本提携を見直したのも、その一環と言える。そこで、今後予想されるのが、EVを動かすための電池(バッテリー)に絶対に必要な物質「リチウム」の争奪戦が激化することだ。この2、3年、EVの普及が進むにつれ、リチウムの価格は高騰し続けている しかし、“EV後進国”の日本にいると、そんなことにまったく気づかない。リチウムばかりではない、コバルト、ニッケルなどのレアメタルは、今後の脱炭素社会に欠かせない物質である。 [目次] ────────────────────────────── ■日産とルノーの資本提携見直しの意味 ■リチウムはEVコストの3分の1を占める ■リチウム価格はこの3年間で4倍に ■生産・供給は豪州、南米、中国に偏っている ■生産方法は塩湖かん水と鉱床採掘の2通り ■リチウム生産が抱えるさまざまな問題 ■脱炭素に必要なのに環境問題を招く皮肉 ■テスラは自らリチウム確保に動き出した ■ニッケル、コバルトも電池に欠かせない ■レアメタルで大きいロシア・中国の存在 ■レアメタル備蓄とリサイクルの確立 ────────────────────────────────── ■日産とルノーの資本提携見直しの意味 2023年2月6日、日産自動車とルノーは対等な出資関係に合意したことを発表した。ルノーの日産への出資比率を43%から15%に引き下げ、双方の出資比率を15%にそろえることになった。そして、ここからが重要なのだが、ルノーが欧州で設立するEVの新会社に、日産が出資することになったのである。 日産とルノーの資本提携は、1999年に経営危機に陥った日産にルノーが出資することで始まった。これにより、日産はいわゆるルノーの子会社になった。 それから20年あまり、時代は変わった。日産は、カルロス・ゴーンによって再建され、なんと、EV技術でルノーをリードするまでになったのである。こうなると、主従関係が逆転する。今回の資本提携はその現れであり、イーブンの関係になった両社は、今後、いっそうEVシフトを進めて行くことになる。 ともかくルノーは、日産・三菱が持つEV技術が欲しくてたまらなかった。それがないと、今回設立するEV新会社は成功しないと考えたと思える。 そのため、フランス人のプライドの高さを捨ててまで、これまで見下して来た日産に譲歩したのだろう。 ■リチウムはEVコストの3分の1を占める 先日のトヨタの社長交代劇もまた、世界で進むEVシフトへの対抗策である。ただ、トヨタはそれでも「全方位」を選択したが、そんなことをやっていると、さらに周回遅れになる可能性がある。… … …(記事全文6,980文字)