━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.640 2022/11/15 間に合うのかトヨタ 「EV大転換」はもはや確実な未来に! ウェブで読む:https://foomii.com/00065/20221115090000101898 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-101922.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 先日、ロイターが報道したトヨタのEV開発の方針大転換は、その後、大きな反響を呼んだ。「ついにトヨタもEVシフトを徹底させるのか」という驚きとともに、「はたして間に合うのか」と心配する声も出た。これに追い討ちをかけたのが、『トヨタとテスラ、「1台の格差」8倍に 初の純利益逆転』という日本経済新聞の記事だ。 いまやトヨタぐらいしかリーディングカンパニーがなくなった日本にとって、トヨタがコケてしまうことは、計り知れないダメージである。 いずれにしても、ガソリンエンジン車がEVに置き換わる未来は、もう目前に迫っている。 [目次] ────────────────────────────── ■新車販売の75%がEVとなったノルウェー ■EV化と並行して進む「脱クルマ化」社会 ■資源豊かな金持ち国家だからできた ■EV生産をプラットフォームから見直す ■世界の新車販売は10台に1台がEVに ■「イノベーションのジレンマ」に陥る ■水素にこだわり続けると致命傷に ■トヨタはテスラを過小評価していた ■テスラに次いで躍進する中国「BYD」 ■2025年市場急拡大に間に合うのか ────────────────────────────────── ■新車販売の75%がEVとなったノルウェー トヨタの話に入る前に、EV化が世界一進んだノルウェーの話から入ってみたい。ノルウェーの首都オスロでは、いまやガソリン車が完全に姿を消そうとしている。 街中にあるガソリンスタンドには必ず充電設備が併設され、ガソリンを入れるクルマより充電するクルマのほうがはるかに多い。もちろん、街角やショッピングモールなどの駐車場にも充電設備がある。日本車も見かけるが、ほんのわずか。いちばん多く見かけるのは、EVで世界の最先端を行くテスラ車だ。 現在、ノルウェーのEV化率はダントツの世界一で、90%に迫っている。新車販売においては、もはやEV以外は売れていない。 2021年の新車販売台数に占めるEV(BEV)の比率は64.5%、プラグインハイブリッド車(PHV)は21.7%で、合わせて86.2%。今年はこれまでにBEVが75%を超え、PHVが11〜13%に減ったため、ノルウェーは完全な「EV王国」になった。これは、PHVを購入する際の税率が変更され、EVの税率を上回ったからだ。 ノルウェーでは、2025年までに販売される新車のすべてを「CO2排出ゼロ車」(ゼロエミッション・カー)にする目標を定め、それに向かってさまざまな取り組みがなされてきた。そのなかで、EV普及にもっとも効果的だったのは、税制だ。 なんとノルウェー政府は、ガソリン車に課す取得税や付加価値税(VAT)を、EVにはゼロにしてしまった。その結果、相対的にガソリン車よりEVの値段が安くなり、販売台数が一気に伸びたというわけだ。 ■EV化と並行して進む「脱クルマ化」社会… … …(記事全文7,075文字)