━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.639 2022/11/09 岸田政権は「脱炭素」も無理解・無策。 なぜ日本は“環境後進国”に転落したのか? (下) ウェブで読む:https://foomii.com/00065/20221109090000101612 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-101640.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 世界規模で「SDGs」(持続可能な開発目標)が叫ばれるいま、国も企業も「気候変動対策」(脱炭素:カーボンニュートラル)に真剣に取り組まなければ生き残れない。その意味で、現在、開催中の「COP27」(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)は重要な意味を持つが、日本政府、日本国民の関心は薄い。岸田政権も、“得意”の検討を重ねているだけだ。 かつて“環境先進国”と言われた日本は、いまや見る影もなく、“環境後進国”に転落してしまった。いったいなぜ、こんなことになったのか? 昨日に続いて検証する。 [目次] ────────────────────────────── ■議論が進んでいくだけの「GX実行会議」 ■突然決まった原発再稼働という大転換 ■担当大臣に見る岸田政権の気候変動無関心 ■「炭素税」導入に向けてのハードル ■日本で排出権取引が始まるのは2026年 ■いまもなお石炭火力を削減できない ■「ゼロ・エミッション」を原子力に頼った ■原子力の代替電源は火力一択しかなかった ■リードしていた太陽光発電でも遅れを ■「気候変動か、経済か」という二者択一はない ────────────────────────────────── ■議論が進んでいくだけの「GX実行会議」 岸田政権の気候変動対策は、はっきり言って「口先」だけに終わる可能性がある。これまで日本は国際社会を意識して、官僚中心で気候変動対策案をつくってきた。そこには、日本の独自性はまったくなく、しかも、多くの点で世界から遅れている。 岸田首相にいたっては、これまで検討されてきた案を理解せず、ただ丸呑みにして会議で表明しているだけに過ぎない。 たとえば、この7月、軽井沢で開かれた経団連の夏季フォーラムで、首相は「GX(グリーントランスフォーメーション)担当相」を新設することを表明した。さらに、脱炭素に向けての「カーボンプライシング(炭素の価格付け)などの政策に関して、「10年のロードマップを示し、企業の予見可能性を高めたい」と述べたうえで、「GX経済移行債」(GX債)を20兆円規模で発行するとぶち上げた。 GX債というのは、経済産業省が考えたもので、いわゆる赤字国債である。気候変動対策といっても、財源がないから、それを国債に求めたのである。しかし、国債となると財務省マターだから、両省の駆け引きにより、今後どうなるかはまったくわからない。 いずれにせよ、このような経緯で、官邸に「GX実行会議」が設置され、気候変動対策が議論されることになった。そして、これまで何回か会議が開かれたが、議論が進んでいるだけで、具体的なことはまだなにも見えてこない。 結局、岸田首相が“得意”とする「聞くこと」と「検討」が行われているだけのようだ。 ■突然決まった原発再稼働という大転換… … …(記事全文6,521文字)