━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.626 2022/08/16 「日の丸半導体」の復活はあるのか? TSMC誘致は懲りない経産省の“哀しき願望” ウェブで読む:https://foomii.com/00065/2022081609000098202 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-98261.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ コロナ禍、気候変動、インフレの三重苦に日本中があえぐなか、経済産業省は、またしても巨額の税金を日本経済復活のための事業につぎ込んでいる。今回の目玉は、「日の丸半導体」の復活で、台湾のTSMCの誘致に4760億円もつぎ込んだ。 世界的な半導体不足もあって、この誘致はメリットが大きいとされるが、はたして本当なのか? 専門家の見方は懐疑的だ。 半導体は「産業のコメ」として、最重要な戦略物資で、その調達に失敗すれば、自動産業を核とした日本の最後のものづくりも崩壊しかねない。 [目次] ────────────────────────────── ■TSMCの工場建設が始まった熊本県菊陽町 ■経済効果1兆8000億円に湧く地元 ■“願望”だけ。それも哀しき願望の産物 ■背景にある世界的な半導体不足 ■日台連携エルピーダの悲劇を繰り返すのか ■熊本工場の生産ラインは何世代も前のもの ■半導体は「経済安全保障」の戦略物資 ■シリコンバレー「起業家1000人派遣」の愚 ────────────────────────────────── ■TSMCの工場建設が始まった熊本県菊陽町 熊本県菊陽町は、熊本市中心部から約15キロの郊外に位置する人口約4万4000人の町。農業が盛んだが、東京エレクトロン、ソニーセミコンダクタ九州、富士フイルム九州の工場などがあり、「シリコンアイランド」九州の一画を形成している。 そんな町で、いま、1兆円規模の巨大プロジェクトが進行している。ニンジンやキャベツ畑が広がる農地のなかを、ブルドーザーや大型トラックが行き交い、クレーンが立ち、新工場の建設が行われているのだ。 新工場の敷地は23万平方メートルで、福岡のペイペイドームの3.3個分の広さ。2023年6月までに工場棟の建設を終え、2024年12月に操業が開始される予定という。 新工場のオーナーは台湾TSMC。TSMCの子会社「JASM」が工場を運営し、ソニーグループとデンソーも出資し、日本政府(経済産業省)がなんと投資額の約半分にあたる4760億円を援助する。 TSMC(台湾積体電路製造股份有限公司、略称:台積電、英語名:Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.)は、言うまでもなく、世界最大の半導体ファウンドリ。世界の半導体シェアの5割以上を占める巨人である。 これまで、「日の丸半導体」の復活にことごとく失敗してきた経済産業省は、日本企業ではなく、なんと台湾の巨人を誘致する策に打って出たのである。 はたして、この策は成功するのだろうか? 賛否両論があるが、今日まで私が専門家の意見を聞いたところでは、きわめて懐疑的だ。 ■経済効果1兆8000億円に湧く地元… … …(記事全文6,150文字)