━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.614 2022/06/14 円安、株安、賃金安の3重苦は止まるのか? 行動経済学の罠に落ちた日本 ウェブで読む:https://foomii.com/00065/2022061409000095662 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-95748.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 世界経済はスタグフレーション(不況下のインフレ)に突入した。とくに日本は、「円安、株安、賃金安」の「3重苦」で目も当てられない状況だ。 しかし、これに対する有効な対策などない。この結果は、ほとんど国民心理が招いたことなので、いまさら、国に対策を求めても、もう打つ手はない。身も蓋もないが、「岸田無策」を受け入れて、日本はこのまま全員で貧しくなっていくほかない。それがイヤなら、国外に出て、日本の衰退の影響を受けない暮らしを追求するほかないだろう。 なぜ、そう思わざるをえないのか? 今回は、その理由を記す。 [目次] ────────────────────────────── ■「損出回避」でずっと行動してきた日本 ■期待値を考えれば必ず勝つことすぐわかる ■「株安、円安、賃金安」の三重苦と日銀 ■金利を上げたら国家財政も中小企業ももたない ■製造業の国内回帰などありえない ■緊張感がない首相はインフレに無頓着 ■与野党ともバラマキで国民の要望に応える ■国防費GDP比で2%増の財源は国債発行 ■コロナ鎖国を続けていると誰も来なくなる ■今後の注目は6月15日の「FOMC」 ────────────────────────────────── ■「損出回避」でずっと行動してきた日本 行動経済学によれば、人は必ずしも合理的な判断をしない。人の経済行動を決めているのは、「損得勘定」より「損出回避」である。これをこの「失われた30年」でずっと続けてきたのが、日本人であり、日本企業であり、すなわち日本国である。 行動経済学では、これまでに様々な法則や理論が提唱されてきたが、そのなかで、もっとも「なるほど」と納得できるのが、「損失回避の法則」だ。これは、1979年に「プロスペクト理論」という論文の中で発表された行動経済学の基本的理論だ。 この理論を説明するためによく引き合いに出されるのが、次のようなゲームだ。 《100万円を払ってコインを投げ、表が出たら150万円差し上げます。しかし、裏が出たら100万円は没収です。このゲームを10回やりますが、参加なさいますか?》 こう言われた場合、多くの人間はまずこう答える。 「手持ち資金に余裕があればやってみたい。でもそんな余裕はないのでやめときます」 しかし、この答えは完全に間違っている。なぜなのだろうか?… … …(記事全文7,168文字)