━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.576 2021/11/02 日本を襲う「円安地獄」 円を持っているだけで貧しくなる! ウェブで読む:https://foomii.com/00065/2021110209000086862 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-87048.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 単なるバラマキ合戦となった総選挙が終わり、日本は新時代を迎えることになった。しかし、先行きは最悪である。「国民の信認を得た」とはいえ、岸田文雄政権には、なにより将来に対するビジョンがない。「新しい資本主義」などと言っても中身は空っぽだ。となると、日本はこのまま、ずるずると経済衰退を続けていくだけになるだろう。 日本の経済衰退に拍車をかけるのが、“悪い円安”である。デフレはすでにインフレに転換し、この先はスタグフレーションになるのは間違いない。もう、円を持っていてはいけない。 [目次] ────────────────────────────── ■「悪い円安ではない」と言い放つ日銀総裁 ■「円安=株高」というパターンが崩壊 ■円安はデメリットのほうが大きい ■円安とともに進む原油高で貿易赤字に ■内需産業も業績悪化で経済回復は絶望的 ■スタグフレーションに突入で生活苦に ■株価も債券も下落し投資家にもダメージ ■岸田首相は相変わらずバラマキを約束 ■黒田日銀が陥った史上最大のジレンマ ────────────────────────────────── ■「悪い円安ではない」と言い放つ日銀総裁 総選挙の結果に驚きはないが、先日の日銀の黒田東彦総裁の発言には驚いた。 10月28日、金融政策決定会合後の記者会見で、1ドル=114円台まで円安が進んだ最近の為替相場について、「“悪い円安”ではなく、日本経済にとってマイナスになることはない」と言い放ったのだ。そして、円安は海外展開する企業の収益を押し上げる効果などが、輸入コストや家計の負担増といった「マイナスの影響をかなり上回っている」と強調したのである。 黒田総裁の説明によると、円安が進んでも、「日本企業はコスト上昇分をマージンの圧縮で吸収し、販売価格を可能な限り据え置こうとする」ため、物価はほとんど上がらない。欧米のような急速なインフレに見舞われるリスクは「極めて限定的」という。 ただ、それでも「じょじょに上昇していく」とし、物価上昇率の見通しを2022年度が0.9%、2023年度が1.0%としたのだった。 しかし、現実を見れば、黒田総裁の認識は甘すぎる。というより、真逆だ。円安によるマイナスの影響のほうがはるかに大きく、日本企業は収益を上げられないどころか、資源価格の高騰に苦しんでいる。 これがすでに物価に跳ね返り、家計を苦しめている。つまり、今回の円高は、これまでの円安とは様相が異なっている。 ■「円安=株高」というパターンが崩壊 円安は、今年になってから静かに進行していた。… … …(記事全文6,004文字)