━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.566 2021/08/31 アフガン敗戦の悪夢: アメリカ覇権の衰退とドル危機の再来か? ウェブで読む:https://foomii.com/00065/2021083109000084283 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-84496.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ タリバンによって制圧されたアフガニスタンの今後に、世界中が注目している。しかし、救出劇が終わり、アメリカが完全に手を引けば、中国、ロシア次第だが、タリバンは内紛を始め、アフガニスタンは泥沼と化すだろう。 しかし、もっと大きな問題は、この敗戦によって、アメリカの世界覇権、ドル支配体制がどうなるかだ。アメリカは、アフガンで2兆ドルを失ったとされる。ベトナム戦争の敗戦時を思い起こせば、ドルショックが頭をよぎる。あの悪夢が、ふたたび繰り返されるのだろうか? [目次] ────────────────────────────── ■人材不足、資金不足でまともな国をつくれない ■対外債務を返済できずデフォルトの危機に ■自国通貨の急落で過熱化するインフレ ■信じがたい資金源のケシ栽培の中止 ■歴史的に見てアフガンは「大国の墓場」 ■蘇るニクソン時代「ドルショック」の記憶 ■ベトナム敗戦とアフガン敗戦の違いとは? ■経済面とスケール面から見ると深刻 ■バイデンの大盤振る舞いで加速する赤字 ■基軸通貨が抱える大きな矛盾とは? ■「暗号資産」と「法定通貨」のデジタル化 ■デジタル通貨によるゲームチェンジ ────────────────────────────────── ■人材不足、資金不足でまともな国をつくれない 首都カブールを陥落させ、アフガニスタン全土を制圧したはいいが、タリバンには、まともな政府をつくる能力もなければ人材もいない。さらに、資金が底をついている。そのため、今後、国際社会からの援助が得られなければ、アフガニスタンは泥沼と化すと、私は思っている。 中国とロシア、そして隣国のイラン、パキスタン次第だが、アメリカが出ていった穴は自分たちでは埋められない。 タリバンは、「イスラム原理主義集団」「イスラム神学校の生徒集団」などと言われてきたが、もともとは1979年から10年間にわたったソ連のアフガニスタン侵略に抵抗した「ムジャヒディン」(イスラム・ゲリラの戦士たち)である。 つまり、彼らは、単なる武装集団、軍閥であって、組織そのものは一枚岩でなく、いくつかの武装集団、軍閥の集合体である。したがって、アメリカという共通の敵がいなくなれば、武装集団や軍閥同士で内紛を起こすのはほぼ間違いない。 しかも、資金がないので、離反する相手を引き止めておけないうえ、兵士たちに給料も払えない。 アフガン政府の資金、つまりアフガン中央銀行が保有する資産は約90億ドル(約9900億円)と言われるが、そのうちの約70億ドルはニューヨーク連銀に保管されている。これは、アメリカ政府によってすでに凍結された。 また、中央銀行保有以外の国外の資金は、タリバンが国家として承認されない限り引き出すことはできない。… … …(記事全文8,140文字)