━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.556 2021/06/29 コロナワクチン誕生秘話(1) 誰も注目しなかった女性科学者の研究 ウェブで読む:https://foomii.com/00065/2021062909000081865 EPUBダウンロード:https://foomii.com/00065-82100.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 世界中で、新型コロナウイルスのワクチン接種が猛スピードで進んでいる。いまや、ワクチンこそがコロナ禍から脱出できる唯一の手段になったようだ。 しかし、さまざまな報道があるというのに、なぜか日本では、ワクチンができた経緯に関しては、よく知られていない。報道されるのは、ワクチンの効果や接種の是非論ばかりだ。 そこで、今回から2回、ワクチン誕生の秘話をまとめて伝えたい。まずは、今回のワクチン誕生は、あるハンガリー人の女性科学者の研究が基になっていること。彼女がいなかったら。ファイザーとモデルナの「mRNA」ワクチンは誕生していなかった。 [目次] ────────────────────────────── ■2回目はファイザー、モデルナのほうがいい ■ウイルスベクターよりmRNAのほうが効果的 ■mRNAは必ず医療に役立つと注目する ■40年間も報われなかったmRNA研究 ■ドイツのビオンテックが研究に着目 ■ビル・ゲイツ氏が5500万ドルの資金援助 ■モデルナもまたカリコ博士の研究に注目 ■「私はヒーローではない」と言うインタビュー ────────────────────────────────── ■2回目はファイザー、モデルナのほうがいい 先日、アメリカでジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のコロナワクチン接種完了者が、再度ファイザーやモデルナのワクチンを打つ必要があるのかどうかが議論されているというニュースが伝えられた。 ご承知のように、J&Jワクチンは1回の接種で済む。しかし、インド株(デルタ株)などの「変異種」(ヴァリアント:variant)が蔓延するに際して、その効果が疑われるようになった。そこで、変異種に対しても効果が高いとされるファイザーやモデルナを、追加で打ってはどうかというのだ。 じつは、この結論は、すでに欧州では出ていると言っていい。日本では、厚労省に有効なデータも研究意欲もないので、ワクチンは単に杓子定規的に接種されているだけだが、欧州は違う。 ファイザーなら3週間後、モデルナなら4週間後という2回目接種の厳格な規定はなく、治験に基づいて6週間後から11週間後を選択する国が多い。そのほうが、「中和抗体」(Nab:neutralizing antibody)が多くできるからという。 そのため、ドイツのメルケル首相は、1回目はアストラゼネカだったが、2回目はモデルナを選択し、期間も8週間をあけている。イタリアのマリオ・ドラギ首相も、1回目はアストラゼネカだったが、2回目はファイザーを選択している。 ■ウイルスベクターよりmRNAのほうが効果的 アストラゼネカとJ&Jのワクチンは、「ウイルスベクター」(viral vector)型である。これに対してファイザーとモデルナは「メッセンジャー・アールエヌエー」(mRNA)型。つまり、欧州ではウイルスベクターの効果は十分ではなく、mRNAのほうが効果があるとされているのだ。… … …(記事全文6,646文字)