━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.073 2013/01/21 世界の高級ブランドは日本人と中国人によって買い占められている ウェブで読む:http://foomii.com/00065/2014012109000019285 EPUBダウンロード:http://foomii.com/00065-19944.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 最近、欧米の高級ブランドを巡る2つのニュースが交錯しています。一つは、アベノミクスによる景気浮揚効果で、日本でまた高級ブランドが売れるようになったこと。もう一つは、それと反比例するように中国国内で高級ブランドが売れなくなったことです。 いったい、なぜこんなことが起こっているのか? 今回は、景気の動向を知るのに重要とされる高級ブランド市場と、それを買う消費者の動向について考えてみたいと思います。 [目次]────────────────────────────────── ■百貨店売上高16年ぶりに増加、高級品が売れた! ■都心の百貨店だけ売上増、地方店は売上減少 ■訪日外国人数が初めて1000万人を突破 ■「観光立国」にほど遠い日本の世界観光順位 ■日本とは正反対、中国では高級ブランド店が撤退 ■「贅沢禁止令」によって、高級品市場は崩壊 ■ヴィトンはいまや中国であまりにも大衆化し過ぎた ■じつは、日本の高級ブランド市場も崩壊している ■ブランドの世界も一般社会と同じく2極化が進んだ ■ラグジュアリー・ウオッチ (高級時計)が売れたころ ■銀座が世界の大都市に必ずある高級ブランド街に変身 ■いまの銀座は東京ジェントリフィケーションの中心 ■お金持ちの「ワガママ」にすべて応える会員制クラブ ■日本と中国に次に来る高級品マーケットはどこか? ■今年も中国人は海外で高級ブランドを買い漁る ■春節を前に世界中の都市でチャイナビジネスの準備が ■日本人と中国人によって高級ブランドは堕落した ────────────────────────────────────── ■百貨店売上高16年ぶりに増加、高級品が売れた! 先週、「百貨店市場の縮小に16年ぶりに歯止めがかかった」というニュースが伝えられた。日本百貨店協会が1月17日発表した2013年の全国百貨店売上高(全店ベース)は、6兆2171億円。これは、前年に比べて1.2%増というのだ。 その原因として、どの報道も「株高による資産効果」「訪日外国人の増加」を挙げていた。つまり百貨店では、昨年、高級ブランド品が例年になく売れたのである。 その証拠に、商品別では、腕時計などを含む美術・宝飾・貴金属の販売額が16%増と大きく伸びた。たとえば、伊勢丹新宿本店では、ロレックスなど高級腕時計の販売額が昨年春以降、約6割もアップ。三越日本橋本店も、4割もアップしたという。 こうした高級ブランド品消費を支えたのは、アベノミクスの資産効果で潤った富裕層と訪日外国人である。とくに訪日外国人による百貨店での購入額は増加の一途で、調査対象百貨店43店の免税売上高は384億円と、なんと9割も増加した。 ■都心の百貨店だけ売上増、地方店は売上減少 現在、新宿や銀座のデパートは、その多くが外国人の観光コースに組み込まれている。外国人といっても、そのほとんどは中国人。彼らの日本観光の一環として、日本のデパートでのショッピングが組まれているのだ。 そうした観光コースの一つ、高島屋新宿店の免税売上高は、店舗全体の約4%に達したという。また、高島屋新宿店では、海外の高級ブランド品だけではなく「免税対象外の国内メーカーの化粧品も好調」とのことだ。 ただし、こういう都心のデパート以外、つまり、地方の百貨店の売上は落ちている。東京や大阪など主要都市の百貨店の売上高は約3%増えたが、地方店は逆に1%の減収となっているのだ。 ちなみに、日本の百貨店売上高のピークは、1991年の9兆7130億円。昨年、やっと売上高が下げ止まったとはいえ、市場規模はピーク時の6割強でしかない。 ■訪日外国人数が初めて1000万人を突破 百貨店売上が増加に転じたニュースと前後して、昨年の訪日外国人数が、初めて1000万人を突破したという政府発表があった。日本政府観光局(JNTO)によると、昨年の訪日外国人旅行者数は、累計で1036万人と大台を突破した。 このニュースは、上記した百貨店の売上の増加と結びついているのは言うまでもない。… … …(記事全文12,932文字)