━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.062 2013/11/12 国家(国際収支)の発展段階説から見た日本の近未来 ウェブで読む:http://foomii.com/00065/2013111209000018153 EPUBダウンロード:http://foomii.com/00065-18817.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 現在、日本経済は莫大な貿易赤字を続けています。しかも、データが比較可能な1979年度以降では、過去最大を記録しています。この赤字の最大の原因は、円安でエネルギー(石油、天然ガス)の輸入価格が上がり、さらに輸入量が増加したからですが、根本原因は、日本という国のかたちが大きく変わってしまったことにあります。 ではどう変わったのか? 変わったことで、この先に日本はどうなるのか?今回は、この問題を考えます。 [目次]────────────────────────────────── ■貿易赤字が常態化してしまった日本経済 ■「脱原発」と「貿易赤字解消」とどちらが大事か? ■円安で「金額」は増えたが「数量」は減った ■本当の業績改善がなければ、給料アップはできない ■クローサーが唱えた「国際収支の発展段階説」 ■「国際収支の発展段階説」の6つのステージとは? ■はたして日本は「成熟債権国」と言えるのか? ■株価が1万4000円台、円が100円だった頃 ■リーマンショック以前の日本のほうが明るかった ■「第7ステージ」はない、誰も予測がつかない ────────────────────────────────────── ■貿易赤字が常態化してしまった日本経済 日本の貿易赤字は、現在、拡大を続けている。 これはもう恒常化したと言ってよく、やがて黒字転換するなどという兆しはまったくない。つまり、日本はもう「輸出立国」ではなく、輸出では稼げない国家になったと言っていい。 財務省は、10月21日に、2013年度上半期(4月~9月)の貿易統計(速報、通関ベース)を発表している。それによると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4兆9892億円の赤字となり、比較可能な1979年度以降、半期ベースとしては過去最大の赤字幅を記録している。 この赤字は、なんと5期連続である。 このことに危機感を持つメディアは多く、たとえば読売新聞は社説で、「 貿易赤字15か月 原発再稼働で早期に歯止めを」(10月22日付)と訴えた。 現在、「脱原発」は国民世論の主流とされるが、これには経済的合理性がまったくない。原発を止めれば、私たちの暮らしは貧しくなり、日本経済の衰退は止まらなくなる。そういう視点のまったくない「脱原発」論に、読売の社説は、あえて一石を投じているのだ。 ■「脱原発」と「貿易赤字解消」とどちらが大事か? 最近の貿易赤字の原因は、単純である。円安でエネルギー(石油、天然ガス)の輸入価格があがり、さらに輸入量が増加したからだ。原発がなければ、電力は石油、天然ガスに頼るほかにないから、こうなって当然だ。 日本がエネルギー資源を持たないということは、戦前戦後をとおして、いまも変わらぬ日本のアキレス腱なのだ。 読売社説は、以下のように説く。 《貿易赤字の拡大に歯止めがかからない。国富の流出が続けば、日本経済再生への道は一段と険しくなるだろう。政府は「貿易立国」の復活に向け、全力を挙げなければならない。》 《燃料費の増大に伴う電気料金の上昇も深刻だ。東京電力の管内では、標準家庭の料金が震災前より約30%、月額で1800円近く値上がりした。 企業向けの電気料金は、家庭より値上げ幅が大きい。企業がコスト増を敬遠し、生産拠点を海外に移す「産業空洞化」が再び加速しかねない状況だ。空洞化で輸出が減り、貿易赤字がさらに拡大する悪循環も懸念される。 《安倍首相は規制緩和など成長戦略を推進し、日本を「世界で一番企業が活躍しやすい国」とする考えを示している。その実現には、安価な電力の安定供給体制を確立することが不可欠だろう。 中国からの太陽光パネルやスマートフォンの輸入が増える一方、アジアなど新興国向け輸出が伸び悩んでいるのは気がかりだ。》 《政府は法人税実効税率を引き下げ、企業の競争力強化策を後押しすべきである。官民連携による、原発や高速鉄道などインフラ輸出の促進も求められる。 肝心なのは、民間企業が創意工夫で魅力的な商品やサービスを生み出すことである。チャレンジ精神を発揮し、国際競争を勝ち抜いてもらいたい。》… … …(記事全文7,298文字)