━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.051 2013/08/27 人口減社会は恐ろしい。国内企業のあの東急電鉄すら日本を捨てる! ウェブで読む:http://foomii.com/00065/2013082709000016972 EPUBダウンロード:http://foomii.com/00065-17643.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 小田急線は成城学園前止まりに、西武秩父線は廃止されている。こういう日が、あと20年もしないうちに訪れると言ったら、驚きますか? すでに過疎化が進んだ地方都市では続々とローカル線が廃線になっていますが、これが都心部まで及ぶのです。 それがわかっていて、郊外に物件を購入する人間がいるのが私には信じられません。今回は、人口減社会の恐ろしさを展望します。 [目次]────────────────────────────────── ■東急電鉄がベトナムでニュータウン建設 ■沿線開発を組み合わせた鉄道のビジネスモデル ■東急と東武鉄道を比較してみて言えること ■不動産大手もこぞって海外進出 ■リー・クアンユー氏の日本に対する見方 ■すでに人口減に対する企業レポートが出ている ■どんなビジネスも人口減には勝てない ■外資というと敵視する日本のメディア ■企業レポートが伝える希望なき未来 ■移民受け入れで、あと数年しか日本には時間がない ────────────────────────────────────── ■東急電鉄がベトナムでニュータウン建設 先日、日経新聞に、「東急電鉄 海外でニュータウン」(『ザ・ブロジェクト2』、2013年8月15日)という記事が載った。 それによると、ベトナム南部のビンズン省で、6月1日、サッカー・Jリーグの川崎フロンターレと地元チームが対戦した。その名は「東急ビンズンガーデンシティカップ」。約1万8000人の観衆でスタジアムは満員になったという。 東急電鉄といえば、日本を代表する首都圏の優良電鉄会社である。それがなぜ、海外に進出し、このようなイベントを開催したのだろうか? じつは、東急電鉄は、ベトナム不動産開発大手のベカメックスIDCと合弁会社「ベカメックス東急」をつくり、2011年からビンズン省の新都市計画のかなめとなるニュータウン「東急ビンズンガーデンシティ」の建設を進めているのだ。 「東急ビンズンガーデンシティ」の居住エリアは、総面積110ヘクタールと広大なもの。計画によれば、2020年ごろまでに、街区にマンション7500戸をはじめ、複合商業施設、レジャー施設、オフィスビルなどが建設される。将来的には12万5000人の居住人口と、40万人の就労人口を見込んでいるという。 この計画の第1弾として5月1日から、2014年秋完成予定の高層マンションの販売が開始され、その販促の一環として催されたのが、このサッカー大会だったのである。 日経記事によると、マンションは、省エネ設備だけでなく壁面緑化も施すなど「日本品質」を前面に押し出した造り。「サッカーや日本の夏祭りイベントを通じてTOKYOUの知名度も高まった」とプロジェクトを指揮する星野俊幸取締役国際事業部長は強調したという。 ■沿線開発を組み合わせた鉄道のビジネスモデル 鉄道会社の経営と不動産などによる沿線開発。この2つは、セットになった事業であることは、よく知られている。このビジネスモデルを確立したのは、世界的にも類例のない、独創的な経営者と言われた阪急電鉄のファウンダー小林一三である。 1907年に三井銀行を退職して箕面有馬電気軌道(阪急電鉄の前身)の設立に参加した小林一三は、1910年に箕面の動物園、1911年に大浴場「宝塚新温泉」、1913年に「宝塚唱歌隊」(宝塚少女歌劇団の前身)、1925年に日本初のターミナルデパート「阪急百貨店」と集客施設と沿線のターミナル駅を結びつけて大成功を収めた。 また、郊外住宅地の開発にも力を入れ、以後、これらが私鉄経営の根幹となり、利益を生み出してきた。 このビジネスモデルを、日本の各鉄道会社は今日まで忠実に踏襲してきたと言っていい。しかし、人口減社会になると、このビジネスモデルは通用しなくなる。なにしろ、沿線の住民が減っていく。そうなれば、安定的な定期旅客収入が見込めなくなる。しかも、それに追い討ちをかけるのが、郊外の住宅地の高齢化の進行であり、それに伴う都心回帰現象だ。 つまり、人気路線沿線は人口が増えて、不動産価格も上昇する一方、不人気路線はその逆で人口が減り、不動産価格も下がるという悪循環に陥るのだ。 これを打開する方策は、ほぼない。東武鉄道は、そんな危機感のなかで、東京スカイツリーという「日本一」の集客力を目指した大規模プロジェクトを立ち上げた。これは現在のところ大成功を収めているが、東急電鉄は東武とは別の道、海外進出に賭けたというわけだ。 ■東急と東武鉄道を比較してみて言えること… … …(記事全文7,321文字)