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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

「国家と国民は利害が一致しない」と理解することが資産運用の基本

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━       山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」    No.000 2013/00/00 「国家と国民は利害が一致しない」と理解することが資産運用の基本     ウェブで読む:http://foomii.com/00065/2013060409000015816     EPUBダウンロード:http://foomii.com/00065-16490.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  前回に引き続き、アベノミクス後の資産防衛について考えます。なぜ、資産を国家と切り離せなければならのいのか? その根本理由について解説していきます。現在、行われている議論は、一つの大きな視点を欠いています。  それは、国家と国民は利害が一致しないということです。これがわかれば、私たちがなにをしなければいけないのかがわかるでしょう。 [目次]─────────────────────────────────── ■日本国とあなたの利害が一致するとは限らない ■政府と関係なくよくなる人もいれば悪くなる人もいる ■日本の保守派はなぜか「大きな政府」を志向する ■「経済の自虐主義を排す」と言って屁理屈をこねる評論家 ■なぜ彼らは国民と国家をいっしょに考えるのか? ■「財政破綻しない」ほうが国民は苦しむ ■印刷機で刷ったお金で借金が返せるのか? ■「日本の成長を妨げたい人たち」は彼ら自身 ■金(ゴールド)はなぜ最終資産と言えるのか? ■アメリカは世界一金を持っている国家である ■「日本は破綻しない。大丈夫だ」と喜んでいていいのか? ■ピーター・シフの『なぜ政府は信頼できないのか』に学べ ────────────────────────────────────── ■日本国とあなたの利害が一致するとは限らない  前回に引き続き、アベノミクス後の資産防衛について考えてみたい。前回では、国家と資産をできる限り切り離すことを提唱した。日本という国のリスクはアベノミクスにより以前にも増して膨張し、それが顕在化したときは、国家によって資産を奪われる可能性が高いからである。  しかし、この単純な理屈をどうしても受け入れられない人たちがいる。その人たちは、どうやら自分と国家は一体、運命共同体でなければならないと考えているようだ。これは、とくに保守派と言われる人々、リフレ派とされるエコノミスト、さらに「日本は財政破綻しない」という論調で本を書いている人々に多く見られる、不思議な現象だ。  このメルマガを読んでいただいている人たちは、そんなレベルにはないと思うので、これまでこのことを書かなかったが、今回はこの話を中心に書いておきたい。なぜなら、投資家はあくまで個人であり、国家(政府)とは違う立場にあるからだ。また、国民もあくまで個人であり、政府の利害とは必ずしも一致しないからだ。つまり、日本国とあなたの利害が一致するとは限らないのである。 ■政府と関係なくよくなる人もいれば悪くなる人もいる  この世界には、国民と政府の利害が一致しない国はいっぱいある。たとえば、北朝鮮はどうだろうか? あの国の政府は国民がつくりだす富をなにに使っているだろうか? それでは中国はどうだろうか? 戦前の大日本帝国はどうだろうか? 国民の利害と政府の利害は一致していただろうか?  歴史的に見て、20世紀になって多くの国が民主主義国家になるまで、国家と国民の利益は相反するほうが自然だった。しかも、民主主義国家になったとはいえ、いまだに国民と国家の利益が一致しない例のほうが多いのだ。  だから、憲法により、国民は国家権力の暴走を縛っている。  簡単な話、アベノミクスで日本経済が復活しようと、ある特定の個人の経済状況がよくなるとは限らない。よくなる人もいれば悪くなる人もいる。逆に、日本経済がここまで衰退しても、経済的に豊かになった個人も多い。 しかし、情報弱者(情弱)と言われる人々は、この単純な理屈がわからず、日本がよくなれば自分もよくなると思い込んでいる。 ■日本の保守派はなぜか「大きな政府」を志向する  5月後半の2週間で株価は大暴落した。これをエコノミストの多くが「調整」と言っているが、投資家の不安心理は拭えない。アベノミクスに踊らされて、ヘッジファンドがつくる相場に乗った人々は、「売り」のタイミングを失って狼狽している。ヘッジファンドに日本株を「いつか売り崩すために買う」口実を与えたのは、日本国政府である。  しかし、政府は株価暴落の責任を取ってくれるだろうか?  私がこれまで繰り返し言ってきたのは、最終的には個人は自分の手で自分を守るしかないということだ。これは、ほぼ全世界共通の「保守」の考え方だ。とくに、アメリカの保守派の代表たるリバタリアンは、“独立自尊”をもっとも大事にする。だから、彼らは常に「小さな政府」志向だ。  ところが、この日本では保守もリベラルもみな「大きな政府」である。だから、政府がことごとく個人の生活に手を突っ込んでくる。なんでもかんでもお役所を通さないと物事が進まない仕組みをつくりあげ、公共工事や福祉に税金が際限なく投入される。
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