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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

はたして財政破綻は早まるのか? 金利乱高下の日本国債の今後は?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━          山田順の「週刊:未来地図」    No.035 2013/05/07   はたして財政破綻は早まるのか? 金利乱高下後の日本国債の今後は? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ゴールデンウィークが終わりました。政治家は外遊から戻り、いよいよアベノミクスは正念場を迎えます。そこで、今回は、アベノミクスを支える「異次元金融緩和」の基盤である「日本国債」について考えます。  今後、日本国債はどうなるのか? この1点に、私たち日本人と日本国の将来がかかっています。   [目次] ────────────────────────────────── ■日本国債は、政府にとってはお金を生む「打ち出の小槌」 ■異次元緩和以前の3月の水準に戻った長期金利 ■「異次元金融緩和」のなにがいったい「異次元」なのか? ■買入れる国債の平均残存年数を7年程度まで延長 ■日銀の狙いは長期金利の引き下げ安定 ■異次元緩和は米国FRBの金融緩和政策のモノマネ ■逆ザヤを恐れて早くも動いた生命保険会社 ■「長めの国債はすべて売り切った」横浜銀行 ■国債の大量発行はデフレ下の超低金利が条件 ■日本の国家破綻はすでに大メディアでも既定路線 ────────────────────────────────────── ■日本国債は、政府にとってはお金を生む「打ち出の小槌」  今年のゴールデンウィークは、投資家にとっては気が気でなかったと思う。  それは、ゴールデンウィーク前に、日本国債に関するさまざまな動きがあり、予期せぬことが起こる可能性もあったからだ。簡単な話、国債金利が上がる事態が訪れ、それが2%、3%と上昇していくようなムードになれば、金融システムが破壊され、日本の財政はにっちもさっちも行かなくなるからだ。  4月17日に発表された日銀のシステムレポートでは、「金利の1%の上昇で銀行の損失は6.6兆円になる」とされているので、現在の長期金利(10年物新発国債の利回り)の約0.60%をもとに予測すると、金利が3%でほとんどの金融機関が危機に見舞われ、倒産する銀行も出てしまう。  日本国債は、政府にとってはお金を生む「打ち出の小槌」である。しかし、金利次第で金融機関にとっては「爆弾」に変わってしまう。もちろん、私たち日本国民にとっても「爆弾」に変わってしまう。  ――というわけで、これまでの国債の動きを振り返り、今後、国債(長期金利)がどうなっていくのかを考えてみたい。 ■異次元緩和以前の3月の水準に戻った長期金利  黒田東彦・日銀総裁が「異次元緩和」のバズーカ砲を発表したのは4月4日。このときから、国債市場は大波乱になった。長期金利は記録的な乱高下を記録し、0.50%台半ばから一気に0.425%まで急降下した。2003年6月11日に記録した過去最低の0.430%をあっさり更新してしまったのだ。  さらに、翌5日になると、午前中に一段と下降して0.315%になった。これは、スイスの長期金利が2012年12月10日に記録した世界史上の最低値0.36%を塗り替えるものだった。しかし、午後になると今度は一転して急反騰。なんと、一時0.620%まで上昇したのだ。  このような乱高下のため、この日、先物市場ではサーキット・ブレーカー(値幅制限超えに伴う売買一時停止措置)が2度も発動された。これは、2008年10月14日以来の出来事だった。  国債の乱高下はその後も続いた。そうして15日に最高値の0.650%を付けた後、0.60%前後でやっと落ち着きを取り戻した。これは、日銀が長期国債買い入れオペの手法を手直しし、回数を月6回から月8回に増やし、1回当たりの買い入れ額を減らすなどしたからだ。  これを市場が評価して、売買が手控えられ、模様眺めムードになったのである。  そこで、25日になると、黒田日銀総裁は「現時点ではボラティリティが下がってきていて、 次第に安定を取り戻している」と述べて、さらなる市場の安定化を図った。以来、今日まで0.60%前後で定着している。    しかし、これは本当の落ち着きなのだろうか?    長期金利0.60%は、異次元緩和以前の3月の水準である。つまり、債券市場は元に戻って、今後の方向を探っているだけと言えるのだ。したがって、今後、なにが起こるかは、市場参加者全員が疑心暗鬼に陥っている以上、予測が難しい。 ■「異次元金融緩和」のなにがいったい「異次元」なのか?  そこで、長期金利の乱高下の引き金となった「異次元金融緩和」について、ここで改めて整理しておきたい。 異次元緩和とは、ひと言で言うと「マネタリーベースをいまの倍にする」ということ。    マネタリーベースとは「日銀券発行残高」のことで、世の中に出回るお金の元手だ。各銀行は日銀内に当座預金口座を持っており、ここに日銀は国債などを購入した代金を振り込む。このお金を銀行が個人や企業に貸し出せば、市中にお金が回り、景気がよくなるとされる。つまり、これが量的緩和政策である。
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