━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順の「週刊:未来地図」 No.033 2013/04/23 「除染」はマヤカシ!こんな膨大な税金の無駄を続けていいのか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このメルマガは、現在の時点から「どんな未来が考えられるか?」ということにテーマを絞っています。そこで、今回は「除染」を取り上げてみました。というのも、現在行われている「除染作業」では、いくらやっても除染はできないからです。 そればかりか、やればやるほど費用がかさみ、私たちは、将来的にその負担に耐えられなくなるからです。 [目次] ────────────────────────────────── ■なぜ大手メディアは除染の本質を報道しないのか ■ガレキ受け入れで起こった激しい反対運動 ■全国で初の試みとなった「放射線授業」の成果 ■除染作業とは単に汚染された表面の土を「剥ぎ取る」こと ■「仮置き場」「中間貯蔵施設」「最終処分場」の順に移動 ■チェルノブイリの教訓「除染は無意味」 ■すべてが「仮」で放置されれば税金の膨大な無駄 ────────────────────────────────────── ■なぜ大手メディアは除染の本質を報道しないのか 不思議なことに大手メディアが報道するのは、「手抜き除染」の告発のようなことばかりで、現在行われている「除染作業」がいかに馬鹿げているか? その本質を報道しない。だから、多くの国民は除染が進み、汚染地域がじょじょに元に戻っていくかのように錯覚している。 そこで、今回は、この除染のマヤカシについて、書いてみる。 私の知人に湯乃上隆氏という半導体技術者がいる。彼は、京都大学の物理学部の出身で原発関係にも詳しく、一時期、相馬市の除染問題にもかかわっていた。そんな関係から、現在、出身地の静岡県島田市で、「子供たちに正しい放射能教育をするプログラム」の実施に協力している。 まずこの取り組みを紹介し、現在行われている除染作業が、いかに馬鹿げているかを説明してみたい。 ■ガレキ受け入れで起こった激しい反対運動 静岡県島田市は、全国の市町村のなかで真っ先に、広域ガレキ処理の受け入れを表明した自治体だ。ところが、表明後しばらくすると、激しい反対運動が起きてしまった。 せっかく、被災地を助けようとした市の幹部は、この反対運動に頭を痛め、湯之上氏に相談した。そこで、湯之上氏が提案したのが、市民に放射線についての正しい知識を持ってもらうことだった。 湯之上氏が市民に話を聞くと、たとえば、主婦たちは当初「被災地の役に立つから最初はガレキ受け入れに賛成でした」という。ところが、ガレキには放射性物質が付着している、微量でも焼却し続ければ住民は被ばくする、被ばくすると子供に癌が広がるという話を聞かされているうちに、「ガレキ受け入れ反対」になったという。 これは、科学的知識を持っているなら、完全なデマとわかる話だが、知識がないと信じてしまう。そして、ただ、感情的に反発するだけになる。 そこで湯之上氏が提案したのは、まず、小中学校の先生方すべてに放射線に関する研修を受けてもらい、先生たちが放射線を正しく理解すること。次に、小中学生に放射線教育を行い、じょじょに正しい知識に基づいた判断ができるようにしていくという方法だった。 反対派は、ただ感情的に反発しているだけなので、推進派と反対派が同じテーブルに着くためには、その前提として両者が同じ知識を持つことが大切と考えたからだ。 島田市の環境課や教育委員はこの湯之上氏の提案を受け入れ、昨年の夏に、約100人の島田市の小中学校教諭を対象とした「放射線とその影響」についての研修会が開かれた。 ■全国で初の試みとなった「放射線授業」の成果 この研修会で湯之上氏が話したのは、放射能とはなにか? 放射線とはなにか? 放射線の種類と特徴、半減期とはなにか? ベクレルおよびシーベルトとはどんな単位か? 被ばくするとはどういうことか? どこまで安全でどこから危険と言われているか? など、ごくごく基本的なことだった。 この研修会がきっかけとなり、理科の先生方を中心に「放射線教育推進部会」が組織され、その後、放射線に関する学習指導要領が作成された。 そして、秋には、島田市六合中学校2年生30人に対して、初めての「放射線授業」が行われた。これは、全国で初めての試みである。 授業終了後、NHKや地元新聞社の記者が生徒にインタビューしたが、生徒の反応はよく、「放射線がよくわかった」、「とても面白かった」と興奮して話す生徒もいた。その後、生徒たちは家に帰って、親に得た知識を得意になって話した。その後、島田市では小学校、中学校で「放射線教育」が行なわれることになった。 島田市は、2012年2月に岩手県山田町からのガレキを試験焼却し、その後、3月に正式に受け入れを表明し、5月に本格受け入れを開始した。反対運動はこの直後に起きたが、その後、こうした放射線教育で市民が正しい知識を持つなかで鎮静化し、今年の3月18日には受け入れがすべて終わった。総処理量は630トンあまりになった。 ただ、ここで付記しておくと、反対運動が激しかったのは、市長が元産廃会社社長だっため、「被災地支援の美名を装う売名だ」「単なる利権行為だ」とされたこともあった。 とはいえ、湯之上氏は、「やはり、正しい科学的知識がないと、問題は解決しない。いたずらに時間が過ぎるばかりか、かつての原発推進派と反対派がいがみあったような事態が繰り返されて、住民全体の利益が損なわれる」と言う。そして、「いま被災地で行われている除染も、同じように科学的知識に基づいたものでないから、問題はいつまでたっても解決しない」と続ける。 ■除染作業とは単に汚染された表面の土を「剥ぎ取る」こと… … …(記事全文5,411文字)