━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順の「週刊:未来地図」 No.031 2013/04/09 やはりシェールガス革命は幻!ブームの裏で別のエネルギー革命が進行中? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ シェールガス革命でアメリカ経済が復活する、それにつられて日本経済も復活すると言われています。しかし、これはマヤカシであり、日本は騙されている可能性がああります。 専門家も投資家も、じつはシェールガス革命を信じていません。今回はそんな話しを詳しく……。 [目次]─────────────────────────────────── ■「アメリカのエネルギー100年分」はでっち上げか? ■資本主義が本来持っている矛盾がもう限界に来ている ■資本主義が進めば進むほど人間がいらなくなる ■19世紀の産業革命と20世紀のIT革命がもたらしたもの ■実用化されたので、メタンハイドレートよりはマシ ■シェールガスの輸入で3割くらいのコスト削減メリットが ■すでに倒産した会社もあり、採算割れを起こしている ■シェールガスはカモフラージュだという説も! ■資源は濃縮されて存在しなければならず、「量」より「質」! ────────────────────────────────────── ■「アメリカのエネルギー100年分」はでっち上げか? 先日、友人の政治・経済評論家で翻訳家のT君と、精密機械会社のオーナー会長S氏と会食した。その席で、「今後、アベノミクス(バブル)はどうなるのか?」という話になったが、T君の解釈が面白かった。 「安倍総理というのは、日本の歴代総理のなかで二番目に頭が悪い総理です。一番目は羽田孜です。その二番目に頭が悪い男が、なんとミイラ(浜田宏一教授)を引っ張り出してやっているのがアベノミクスです」 もうこれで、アベノミクスの行く末は、なにも言わなくてもわかってしまうだろう。そこで、3人の話は、最大の懸念、「アメリカ経済はどうなるか?」に移った。 T君は、こう言った。 「じきにクラッシュしますね。ドルは崩壊過程に入っています。なにしろ、シェールガス革命なんてインチキですからね」 これを聞いて、S氏は「やはりそうか」と、うなずいた。 T君が続ける。 「シェールガスでアメリカ経済が復活する。それにつられて日本経済も復活する。すごい時代がやってくるなんて言っている人間がいますが、単に煽られているだけですね。情報分析もなにもできていない。 シェールガスはアメリカでは無尽蔵に採掘できる。アメリカのエネルギー100年分はあるなんて、完全にでっち上げですよ」 「そうだろうな。そのシナリオで投資を呼び込んでいるだけで、実体はしれたものだと思っていたけど、やはりそう思うかね」 「ええ、もちろんです」 「では、山田さん、あなたは?」 と言うので、私はとりあえず「半信半疑ですね。まだ結論は出せません。ただ、言えるのは、まだなんにも始まっていないことです」と言うにとどめた。 ■資本主義が本来持っている矛盾がもう限界に来ている S氏はリーマンショックでかなりの資産を失っており、もうアメリカには騙されたくないという思いが強い。新聞・テレビに出ているエコノミストは一切信用せず、こうして私とT君をたまに呼んで、食事をしながら意見を聞く。 シェールガス革命を考える場合、それ以前に、アメリカ経済、つまり新自由主義による資本主義体制がどうなっていくのかを見極める必要がある。私は、これまでの著書にあるように、まだまだアメリカ支配の体制は続く。現在の財政危機は抑え込まれ、ドルの基軸通貨体制は変わらないという見方だが、T君はもっと大きく長期的に世界経済をとらえていて、いずれアメリカの資本主義は崩壊するというのだ。 「いま起こっていることは、資本主義が本来持っている矛盾がもう限界に来ているからです。2008年のリーマンショックでそれが露呈したのですが、これをアメリカも欧州も大規模な金融緩和で抑え込んだ。これがいまの姿です。 しかし、危機は資本主義が発展を続ける過程で、周期的に起こるしゃっくりのようなものなのでしょうか? 私はそうは思いませんね」 T君は米国の2つの大学院で、政治と経済を勉強してきており、資本主義をアダムス・スミス以来の歴史のなかでとらえている。そうした歴史のなかで見ると、現代における最大の資本主義国家アメリカは、もはやこの制度を維持できないというのだ。 ■資本主義が進めば進むほど人間がいらなくなる それではT君がいう「資本主義の矛盾」とはなんだろうか? 以下はT君の資本主義の歴史的考察である。… … …(記事全文7,368文字)