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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

TPP参加と米シェールガス革命が日本にもたらすものはなにか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━          山田順の「週刊:未来地図」    No.030 2013/04/02        TPP参加と米シェールガス革命が日本にもたらすものはなにか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  TPPへの参加表明で、日本はアメリカ経済圏に組み込まれることが確実になりました。では、今後、アメリカ経済はどうなるのか? 前回のメルマガに引き続き、世界通貨、基軸通貨の「ドル」がどうなるかという見地から、考えてみましょう。  今後の日本がどうなるかも、すべてアメリカにかかっているからです。 [目次]────────────────────────────────── ■遅れて参加する日本がルールをつくれる可能性はない ■早ければ今年6月、遅くとも10 月には交渉開始 ■アメリカの従属国なのだから反対するだけムダ ■2013年9月以降に政府支出の強制削減が始まる ■世界最大のエネルギー輸入国が一転して資源大国に ■TPP交渉参加でシェールガスの輸入が可能になる ■通貨が価値の裏付けを失うと経済は大混乱する ■ドルの価値を裏付けているのは「石油」である ■アメリカは世界でただ1国貿易をしていない国 ■紙幣の発行量は中央銀行が保有する金に比例する ■いまも「金」はアメリカのコントロール下にある ■「金本位制」への復帰と「国内ドル国外ドル分離」政策 ■あのグリーンスパンFRB前議長も金本位制論者だった ■アメリカはルールメーカー、日本は単なるプレーヤー ────────────────────────────────────── ■遅れて参加する日本がルールをつくれる可能性はない  TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加を表明した安倍政権では、交渉に向けての体制づくりが始まっている。すでに、100人規模の対策本部の設置が決まり、本部長には甘利明TPP担当相が就くことになった。また、対外交渉の担当者約70人を指揮する首席交渉官には鶴岡外務審議官、国内対策担当者30人を束ねる国内調整総括官には、佐々木豊成官房副長官補が起用される。  しかし、ここまで政府が本腰を入れても、「国益を守る」「言うべきことは言う」などは茶番である。また、これまで出された政府の試算も確かな根拠のあるものではない。昨年12月から参加したカナダとメキシコは、すでに口出しできない状態になっていて、もっとも遅れて参加する日本がルールをつくれる可能性はほとんどないのだ。 ■早ければ今年6月、遅くとも10 月には交渉開始  それではTPPとは、なんだろう?  時事解説的に言えば、「環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定(EPA)」となるが、その本質は、最終的にアメリカを中心とするアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)をつくることである。  つまり、環太平洋地域の国々において、関税が撤廃され、資本の移動も人間の移動も自由になり、経済ルールはアメリカ式に統一されるということである。  TPPは、2006年5月28日に、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国で発効した後に、2010年3月にはアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムが参加して8カ国で交渉が開始された。その後、マレーシア、メキシコ、カナダが交渉に参加し、今回、日本が加わる。この日本の参加表明で、早ければ今年6月、遅くとも10 月には日本を含む12カ国での交渉が開始される。  この交渉がどこでまとまるかはわからない。ただ、数年も要すということはく、それほど遠くないうちにはまとまるはずだ。 ■アメリカの従属国なのだから反対するだけムダ  では、交渉がまとまると、どうなるのだろうか?  すでに、アメリカはカナダとメキシコの間にNFTA(北米貿易協定)を結んでいる。 このNAFTAで北米市場は統合されている。だから、TPPが発効すれば、アメリカはNAFTAを環太平洋圏にまで拡大できることになる。また、韓国は米韓FTAを結んでいるから、韓国も含めて、環太平洋地域は、完全にアメリカ経済と一体化するのだ。  TPPに日本が参加した場合、交渉参加国の経済規模のシェアを見ると、なんと日米で9割を占めている。ということは、実質的には日米FTAなのである。  日本は太平洋戦争の敗戦でアメリカに占領されて以来、今日までずっとアメリカのトリビュータリー・ステイト(従属国)として繁栄してきた。だから、TPPでさらに主従関係が深まることになるが、それは仕方がないことである。  国内に根強い反対論があるが、この国はアメリカなくして生存できないシステムになっているので、反対するだけ労力のムダである。それより、この際、中国との関係を考えなおし、現在の日本の生命線である東南アジア圏の国々を巻き込んで、TPP経済圏に適応していったほうが、よほど賢い。  そこでいちばん考えなければいけないのが、今後、盟主のアメリカがどうなっていくのか? はたしてアメリカ経済は復活するのか?ということになる。 ■2013年9月以降に政府支出の強制削減が始まる
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