━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順の「週刊:未来地図」 番外編[02] 2013/03/28 新刊『2015年 磯野家の崩壊』(徳間書店)のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ おはようございます。山田順です。 今回は、勝手ながら私の新刊の案内です。この3月23日、徳間書店から『2015年 磯野家の崩壊』(徳間ポケット、1000円)を上梓しました。アベノミクスが今後、私たちの暮らしになにをもたらすのか? 日本一有名な「サザエさん一家」をモデルとして描く近未来物語です。 ────────────────────────────────────── ■新刊刊行のご挨拶 磯野家の人々は永遠に年を取りません。フィクションだから当たり前ですが、サザエさん一家がいつまでたっても3世代同居で7人という大家族であることは、いまの日本の現実とは大きくかけ離れています。 半世紀前は、日本の世帯の約半分が3世代世帯でした。しかし、いまや核家族、単独世帯が一般的で、とくに都市部では3世代世帯は極端に少なくなり、東京23区の3世代世帯が全世帯に占める割合は、なんと2.0%にすぎません。 そこで、本書では、サザエさん一家を、こうした日本の現実のなかに入れ、私たちの将来を考えてみることにしたわけです。家族の将来というより、もっと大きく、この先の日本経済、日本という国の在り方までも、考えてみたのが本書です。2012年暮れに安倍晋三内閣が誕生し、アベノミクスを打ち出して以来、日本はデフレを脱却して、やがて成長を取り戻すようなムードになっていいます。そ いかし、これは実体のないバブルにすぎません。とすると、その反動は大きく、今後予定される大増税と併せて、日本の家庭は大変な試練に直面します。 じつは、私は以前から「磯野家」をタイトルに拝借した本を書いてみたいと、ずっと思ってきました。 これまで、そういう類の多くの「磯野家」本が生まれてきました。その最初の本、ミリオンセラーになった『磯野家の謎.「サザエさん」に隠された69の驚 き』(東京サザエさん学会編 1992)をプロデュースしたのは、じつは、私とは30年近くのつき合いがある杉森昌武(出版プロデューサー、作家)です。 だから、今回、彼にならってみたというわけです。 ■はじめに(全文)を紹介します 誰もが知っているように、サザエさん一家(磯野家)は3世代が同居する7人家族である。 サザエさんの父親の磯野波平氏は54歳で山川商事課長、母親フネさんは52歳専業主婦である。そして、当のサザエさんは24歳で、夫のフグ田マスオ氏は28歳で海山商事営業課勤務のサラリーマン。夫婦には一人息子のタラオちゃん3歳がいる。また、サザエさんには2人のきょうだいがいて、弟のカツオ君は11歳でカモメ第三小学校の5年生、妹のワカメちゃんは9歳でカモメ第三小学校の3年生である。 このサザエさん一家は、都内のあさひが丘駅近くの住宅地にある庭付き一戸建て、約30坪の家で暮らしているという設定になっている。 そこで聞きたい。あなたの周囲に、こんな大家族がいるだろうか? 磯野家の人々は永遠に年を取らない。漫画では、10年後、20年後、30年後が描かれたこともあるが、アニメのなかの磯野家の時間は止まっている。フィクションだから当たり前だが、サザエさん一家がいつまでたっても3世代同居で7人という大家族であることは、いまの日本の現実とかけ離れ過ぎていて、私にはどうしてもしっくりこない。 毎週日曜日の夕方6時半から30分間、テレビで磯野家の日常生活を見るたびに、「やっぱり日本っていいな。家族っていいな」とは思うが、同時にものすごい違和感を覚える。そうして、見終わったときは虚しさが込み上げてくる。 サザエさん一家は、今日もみな元気で明るく暮らしている。いつも家族全員で食卓を囲み、そのときどきの話題をみんなで話し合っている。毎回、なんらかのトラブルはあるが、こうして食卓を囲み、みんなで話し合うことで、すべての物事が丸く収まっていく。 たしかに、昔の私たち、多くの日本の家族はこうだった。しかし、いまはどうだろう? こんな家族なんて、ほぼどこにもいないだろう。そう思うと、急に虚しくなるのだ。 アニメ『サザエさん』の放送が始まったのは1969年(昭和44年)のこと。以来、2013年現在、放送年数44年、放送回数2000回以上を記録する長寿番組として、揺るぎない人気を誇っている。 しかし、昔は、サザエさんを見て「うちもこうだわ」「サザエさんにみたいにいつも明るくありたい」などと思っていた人も、みな年を取ってしまい、いまはノスタルジーだけで見ているのではないだろうか? もう磯野家のなかに、自分と同じ日本人はいないからだ。 磯野家のような大家族は、「3世代世帯」と言われる。子供から見ると、お父さんとお母さん(両親)に、おじいちゃんとおばあちゃん(祖父母)がいっしょに住んでいる家族である。では、そんな世帯がいま全国でどれくらいあるかというと、平均して7、8世帯に1世帯しかない。日本一3世代世帯が多い山形県でさえ、全世帯に占める割合は21.5%である。 半世紀前は、日本の世帯の約半分が3世代世帯だったが、いまや核家族、単独世帯が一般的で、磯野家は世帯として絶滅種に近いのである。 とくに都市部では3世代世帯は少なくなり、東京23区の3世代世帯の割合はなんと2.0%にすぎない 本書は、永遠に年を取らないサザエさん一家を、こうした日本の現実のなかに入れ、私たちの将来を考えてみようというものだ。もっと大きく、この先の日本経済、日本という国の在り方までも、考えてみたいと思う。 おそらく、いまの日本の現実のなかでは、磯野家のような3世代同居の大家族は維持できないだろう。そう考えると、やがて磯野家は崩壊せざるをえない。これまで、多くの日本の家族が崩壊してきたように、磯野家もバラバラになるに違いない。 本書のタイトルに、2015年を持ち出したのは、この年の10月に消費税が10%になり、私たちの暮らしがいまよりいっそう厳しくなるのが確実だからだ。消費税の増税ばかりではない。所得税、相続税などもこの先上がるのは確実だ。 2012年暮れに安倍晋三内閣が誕生し、アベノミクスを打ち出して以来、日本はデフレを脱却して、やがて成長を取り戻すようなムードになった。 しかし、本当にそんな未来がやってくるのだろうか? この先には、大規模な金融緩和、インフレターゲット政策、大型の公共投資が控えている。しかし、そんなことぐらいで、ここまで低迷した日本経済が復活するだろうか? 現在、日本経済を取り巻くマイナス要因は山ほどある。それが、ことごとくなくなり、私たちの将来不安が解消される日がくるのだろうか? 本書を読みながら、磯野家の人々といっしょに考えていただければ、幸いである。 ■内容(目次)は次のようになっています 第1章 アベノミクスで家庭崩壊 ■デフレ脱却のためにカネを刷ってばらまく… … …(記事全文5,217文字)