━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順の「週刊:未来地図」 No.013 2012/12/04 中国が支配する世界とアメリカが支配する世界とどちらがいいか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今後、中国とどうかかわっていくか? これが現在、日本国と、私たち日本人にとっての大きなテーマです。この問題を考えるポイントは、はたしてこのまま中国は発展と拡大を続けていくのかどうか、それを見極めることにあります。 10年後、20年後……50年後の中国が見えれば、私たちの「未来の歩き方」は変わります。 [目次] ────────────────────────────────── ■中国とかかわっているとさらに衰退する ■毎年、社員の給料を10%以上げる義務が! ■「全部置いて出て行く」しかない中国脱出 ■いまから50年後、中国は米を超える世界一の経済大国 ■そんなバカな? アメリカ人も中国人もみな金持ちに? ■将来はこれまでとはまったく異なったものになる ■中国が支配する世界とアメリカが支配する世界 ■「世界中が中国になったらどこで暮らせばいいんだ?」 ■いまや中国共産党では無能者ほど出世する ■中国人になろうとしたあるイギリス人の挫折 ■世界の誰一人、中国人自身でさえも、それを望んでいない ────────────────────────────────────── ■中国とかかわっているとさらに衰退する 尖閣諸島問題が起こってから、どんな人と会っても中国についての考えを聞くようになった。評論家、学者、ジャーナリストで中国通と言われる人より、ビジネスなどで実際に中国とかかわってきた人の意見を積極的に聞くようになった。 そうしてみて、いま私が思うのは、「もう中国はたくさんだ」ということ。これまでのように、深くかかわる必要はないということ。中国に行くことも、よほどのことがなければ控えようと思うようになった。 なぜなら、もう中国はピークをすぎ、今後は徐々に衰えていく。そう確信したからだ。日本も今後衰えていく。それも、中国よりもっと速いスピードで衰えていくが、中国の衰退は日本と違って、国内の大混乱を招く可能性が強い。場合によっては、北京の現体制は持たないかもしれないからだ。 ■毎年、社員の給料を10%以上げる義務が! 先週、重慶と上海に2つ工場を持っているある中堅精密企業の社長と会ったら、こんな話を聞かされた。 「工場を閉めて売却したいと地方政府に申請したら、全部接収する、従業員の解雇は契約違反だから給料30カ月分払えと言われた。中国とはそういう国と知ってはいたが、やはりショックだった。エクジットしたくてもできないのが中国。それでも、なんとか脱出しようと思っている」 そこで、「なぜ、まだ儲かっているのに、脱出するのか?」と聞くと、その答はこうだった。 「もう中国には将来はないと思うからだ。中国に行ったのは、人件費が安いから。しかし、いまは毎年10%以上給料を上げることを法律で義務付けられ、メッリットはなくなった。メリットがあるとしてもあと2、3年だろう。中国人は、毎年、給料が上がるのを当たり前と思っているから、上げないと、すぐほかの会社に行ってしまう。 さいわい。うちはタイとベトナムにも早くから進出したので、今後はそちらを主力にしていこうと思う」 ■「全部置いて出て行く」しかない中国脱出 この社長にかぎらず、多くの中国進出企業が、いま、中国の将来に対して懐疑的になっている。中国撤退など、1年前には考えもしなかったが、いまでは真剣に考えるようになったという。いままでは、気持ちのどこかで「このまま中国が持つわけがない」と思ってきたが、日中関係がこじれてみると、本気で思うようになったという。 こうした本音を聞くと、トヨタ、ニッサン、イトーヨーカドー、資生堂など、中国市場と深くかかわってしまった大企業は別として、生産だけで中国に進出した企業は、今後、脱中国化が進むのは間違いないと、私も確信するようになった。 実際、もう、日本企業の中国熱は冷め、中国脱出が始まっている。ただ、悩ましいのは、中国がほかの国と違って、「全部置いて出て行く」しかないことだ。だから、投資が未回収の企業は出るに出られない。 「それでも出て行こうとしている会社はある。うちはすでに回収が終わっているからいいが、そういう会社はつらい。でも、この際、損しても出てほうがいいと私は言っている」 と、前出の社長は言う。 ■いまから50年後、中国は米を超える世界一の経済大国 こうして日本企業の脱中国が進むなか、信じ難い「未来予測」が発表された。 11月9日、経済協力開発機構(OECD)は、2060年の世界経済に関する超長期予測レポートのなかで、「中国は世界一の経済大国になっている」と発表したのだ。… … …(記事全文6,640文字)