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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

東京スカイツリーがクリスマスの特別点灯開始。「摩天楼の呪い」は起こるのか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━          山田順の「週刊:未来地図」   No.011 2012/11/20  東京スカイツリーがクリスマス点灯開始。「摩天楼の呪い」は起こるのか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  お早うございます。今年もあと一カ月足らずとなり、どんな年だったかと振り返ることが多くなりました。暗い話題、明るい話題、いろいろありましたが、なかでも東京スカイツリーの完成は明るい話題の一つだったと思います。  しかし、経済には「摩天楼の呪い」という法則があります。摩天楼・超高層ビルが完成すると必ず不況になるという法則です。 [目次] ───────────────────────────────── ■東京スカイツリーが世界一高いクリスマスツリーに ■偶然とは思えない符号は今日まで続いている ■クライスラービル、エンパイアステートビルと大恐慌 ■世界貿易センタービル(WTC)とオイルショック ■「3丁目の夕日」東京タワー完成と「なべ底不況」 ■東京都庁ビルとバブル崩壊、六本木ヒルズと日経平均最安値 ■東京スカイツリーと「家電ショック」大不況 ■いま「摩天楼の呪い」は中国経済を直撃中 ■中国の摩天楼は5年後に800棟、アメリカの4倍になる ■高い塔をつくると神の怒りに触れるのか? ■「あべのハルカス」とともにやってくる消費税増税 ───────────────────────────────────── ■東京スカイツリーが世界一高いクリスマスツリーに  この11月15日から、東京スカイツリーのクリスマスに向けの限定ライティングが始まった。夜空に輝くスカイツリーは本当に美しく、しばし見とれてしまう。まるで、ライティングされた一つの強大なクリスマリツリーが、東京全体を照らしているように見える。  東武鉄道によると、ライティングのテーマは、「Tokyo Skytree Dream Christmas:世界一のクリスマスツリーからのおくりもの」。まさに、そのとおりの演出になっている。  この後、クリスマスまでの期間中は、週末を中心にさまざまな限定ライティングを行うというから、いまから本当に楽しみだ。  さて、今年もあと1カ月あまり。年末になれば「10大ニュース」を選ぶときがやってくるが、東京スカイツリーの完成・オープンは、間違いなくその一つだろう。しかも、不景気で暗いなか、明るい話題の一つだ。  しかし、超高層ビルや摩天楼が建った後は、景気がさらに悪くなるという法則がある。  この法則は、1999年に独ドレスナークラインオートのアナリストだったアンドリュー・ローレンスが発見したもので、「Skyscraper Index」(摩天楼の呪い)と呼ばれている。ローレンスは、超高層ビルの建設と景気循環の関係を調べているうちに、この法則(というか偶然の符合)を発見した。 ■偶然とは思えない符号は今日まで続いている  たとえば、世界で最初の高層ビルとされるニューヨークのエクイタブル生命ビル (Equitable Life Assurance Building、全高40メートル) は、1870年に着工され1873年に完成した。その後アメリカは5年間の不況に陥っている。また、初期の摩天楼の傑作とされるニューヨークのクライスラービルは、1920 年代後半に着工されたが、完成したときは世界大恐慌が始まっていた。  なんだ、これだけではただの偶然、都市伝説の類では?と思われるかもしれない。しかし、事例はこれだけでなく、今日までこうした偶然とは思えない符号は続いているのだ。  1973年、ニューヨークに世界貿易センタービル(World Trade Center)が完成すると、その直後にオイルショックが発生。1997年、マレーシアのクアランプールにペトロナス・ツインタワー(Petronas Twin Towers)が建てられて世界一高いビルになると、アジア通貨危機が発生した。2007年、中国の上海で上海金融センター完成すると、上海株式市場は8%以上も暴落し、その後世界中で連鎖株安が起こった。そうして、サブ・プライムローン問題が一気に表面化し、翌年にはリーマンショックが起こっている。  さらに、2009年にドバイに828メートルのタワー「ブルジュ・ハリーファ」(Buri Khalifa Tower)が完成すると、ドバイショックが起こっている。 ■クライスラービル、エンパイアステートビルと大恐慌  はたしてこのような符号は偶然なのか? それとも、景気循環となんらかの関係があるのだろうか?  前記したクライスラービルは、1928年に、ウォール街のウォールタワーと世界一の高さを競って着工された。しかし、結局、高さ283 mで完成したため、ウォールタワーの高さ284 mに1m届かなかった。そこで、設計者ウィリアム・ヴァン・アレンは一計を案じた。ビルの上に36 mの尖塔を追加し、高さを319mとしたのである。こうして、クライスラービルは、世界一高いビルの座についたのだった。  しかし、このように、ビルの高さで世界一競争をしている間、地上ではなにが起こっていたかというと、「大恐慌」の発生である。1929年10月24日、NY株式市場は暴落(ブラックサースデイと呼ばれる)し、それをきっかけとして数年間にわたる大恐慌に発展していった。アメリカの株価は8割も下落し、工業生産は3分の1以上落ち込み、失業者が街にあふれた。1929~1932年の間に、世界貿易は70.8%減少し、世界中で失業者は5000万人に達したのである。  こんななか、さらに高さを競って建てられたのが、1931年に完成したエンパイアステートビルだ。エンパイアステートビルは、その後、1972年に世界貿易センター(WTC)のノースタワーが竣工するまでの42年間、世界一の高さを誇った。
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