□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」~ 2021年7月21日(水)発行 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ =================================== 実質金利低下とドル高に挟まれる金相場、連邦債務上限問題の期限迫る =================================== <連邦債務上限問題に新たな動きなし> 米連邦政府の債務上限を定める法律の2年間の適用停止が、7月末に期限を迎えるが、これまでの所、議会では上限引き上げの明確な計画を設定できておらず、債務上限が復活するリスクに注意が求められる状況にある。イエレン財務長官は6月23日、債務上限を早急に引き上げるか更に上限適用の運用を停止するように議会に要請していたが、その後の1カ月間に大きな進展が見られたとは言い難い。イエレン長官は、このままだと8月中にも米国が債務不履行(デフォルト)に陥る可能性があるとして、経済に壊滅的な影響が生じるリスクを警告しており、「安全資産」としての金投資環境にも大きな影響が及ぶ可能性がある。 債務上限とは、連邦政府が国債発行などで抱えることができる債務残高の枠であり、法律によって規定されている。そして、その上限を引き上げるためには、議会の同意が必要とされる。仮に8月1日から債務上限が復活すれば、米政府は歳入と歳出を均衡させる必要性があり、税収などの歳入規模に見合った活動に留めざるを得なくなる。特に米国債の償還や利払いに対しては大きなリスクが生じることになる。この問題は、2011年、13年、15年などにもマーケットで材料視されてきたが、特に11年は8月2日にぎりぎりのタイミングで債務上限の引き上げが議会で承認されたが、格付け会社S&Pが8月5日に米国債の格下げに踏み切ったことは、投資環境に大きな混乱をもたらした。最近では、13年のオバマ政権時代に、いわゆる「オバマケア」を巡って議会で共和党と民主党の対立が激化し、政府機関閉鎖で大きな混乱が生じたことは記憶に新しい。 債務上限は政府による債務膨張に歯止めを掛けるためのものであり、財政規律の安定化のために重要な法律である。一方で、大きな経済危機が発生して歳出が膨張する事態になると、景気対策を重視するのか財政規律を重視するのかで、議会の調整は難航し易くなる。そして、昨年に続いて今年も新型コロナウイルス対策で大規模な歳出を迫られているだけに、議会が債務上限問題をコントロールできるのか先行き不透明感が高まっている。… … …(記事全文4,542文字)