■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ <1ヶ月にビジネス書5冊を超える知識価値をe-Mailで> ビジネス知識源プレミアム(660円/月:税込):Vol.1337 <Vol.1337号:増刊:銀行とマネー信用と信用通貨(後半部)> 2023年5月14日:本稿は日曜増刊で、有料版・無料版共通とします。 ウェブで読む:https://foomii.com/00023/20230514150000109032 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ホームページと無料版申し込み http://www.cool-knowledge.com 有料版の申込み/購読管理 https://foomii.com/mypage/ 著者へのメール yoshida@cool-knowledge.com 著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 前号の正刊では、根拠を示し以下のように述べました。 1)3月の銀行危機以来の金融市場は、ソフトランディング論が広がり小康を得ている(株価、国債、社債、債券)。 2)しかし、金融危機の本番になる不動産価格と不動産ローン担保証券の下落、及び世帯のローン債券の不良化は、株・債券式市場に約1年遅れる遅行指標である。 3)ローン金利が2倍に上がった米国の不動産価格は、8月から確実に下がる。世帯のローンにも不良化が増えていく。2023年秋ころから、ハードランディング論に転換する可能性が高い。 〔原因〕金利とほぼ同時に動くのは、株価、固定金利の国債価格、固定金利の社債価格、デリバティブの債券価格です。 現象:「金利が上がっても、銀行危機の3月以降、株価が回復した」 ・しかし、今回の利上げは、1年遅れで不動産に及びます。 ・先行指標の株価の回復から、2023年末や2024年もソフトランディングになるとするとはいえない。 【考慮されていない、米国債の含み損もある】 米国債31.4兆ドル(4080兆円:日本の3.4倍)の平均金利は2%です。FRBが上げた現在短期金利は5.0%~5.25%ですが、10年債の利回りは、3.5%付近です。 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/us10yt.html 【銀行・ノンバンクのB/S(バランスシート)に隠れている、 米国債の、含み損】 米国債の返済までの平均残存期間(デュレーション)、円国債と同じ8年とすると、以下のように国債の市場価格は下がっていて、国債をもつ金融機関の含み損になっています。(注)含み損は4半期決算では示されない簿外の損失です。 〔含み損の計算〕 31.4兆ドル(額面)×1.02の8乗÷1.035の8乗=31.4×(1.17÷1.32)=31.4×0.886=時価は27.8兆ドル・・・3.6兆ドル(468兆円:11.4%)の下落。 国債をもつ米銀とノンバンクは、そのB/Sの資産に、合計では468兆円という未実現の含み損を、抱えています。 FRB+米銀+ノンバンクの自己資本は、総合計でも300兆円くらいですから、すでに、時価の資本勘定では168兆円の債務超過です。 【銀行信用の、現在】 国際決済銀行(BIS)は、満期までもつ国債は、時価評価しなくていいという会計制度を敷いているので、銀行信用があるように見えているだけです。(注)BIS: 世界の中央銀行と銀行の監督機関。世界の銀行に自己資本比率を決めています(バーゼル3)。必要な自己資本比率を割ると、銀行間取引から排除されます。 ◎最近、「満期まで所有すると銀行がしている国債の、額面での評価には問題がある」とする中央銀行関係者が増えてきました。 以下で示す2つの事実から、31.4兆ドル(4080兆円)の米国債をもつ銀行・ノンバンク信用の問題になるからです。 (1)国債担保の金融で、マージンコールが発生する 時価が下がった国債を担保にしたレポ金融(銀行間の短期貸借)では、(1-掛け目分)の「追い証(マージンコール)」が求められるからです。担保に差し出した国債が11%下がっていれば、レポ金融額の11%のマージンコールです。 信用(=借り入れ)による、先物やオプションの売買で損が出て、証券会社に預けていた証拠金が不足したときと同じです。投資家にとってマージンコールの発生は恐怖です。 期日までにマージンコールが払えないと、含み損のある株や債券がSQ値(特別清算指数)で強制決済され、投資家は、一般に金融資産を失って破産するからです。3、6、9、12月の第2金曜日が、このSQの日です。 銀行間信用のレポ金融では、短期負債の返済を迫られます。 (2)長期国債は、実際は満期までは所有されていない FRB+米銀+ノンバンクは、銀行資産の約50%占める31.4兆ドルの所有国債を売らず、あと8年、そのまま抱えるのかというとそうではない。資金繰りのため、売ることを迫られます。銀行は、31.4兆ドルもある国債を、塩漬けすることはできない。資金を得るために、売る必要が出てきます。 実際、円国債は平均保有期間1か月で、売買されているのです(日本の公社債市場)。米国でも類似するでしょう。 【含み損のある長期債の売りによる損失が、FRCの破産原因だった】 ファースト・リブリック・バンク(FRC)は、信用不安から預金取り付けが起こったとき、資産として所有していた長期国債、長期債券を売って現金化し、損失を拡大しました。 そのため預金者からの信用不安が大きくなり、取り付けが急増して破産し(資金ショート)、預金を保護した預金保険機構(FDIC)経由で、米銀最大手のJPモルガンに買収されたのです。(総資産3.7兆ドル、総負債3.4兆ドル:自己資本3000億ドル(39兆円:総資産の8%)。 【最大手銀行の、総資産のうちの自己資本】 米銀でもっとも信用が高いとされているJPモルガンすらも、総資産に対する自己資本は8%しかない。時価が11.4%下がっている所有国債とAAA格の長期債を時価評価すれば、現在すでに債務超過でしょう。 https://jp.investing.com/equities/jp-morgan-chase-financial-summary 「銀行の信用」とは、預金と負債を無効にしない自己資本のことです。それ以外ではない。 以上のことは、まだ金融業界では議論されていない。皆が黙っています。金融機関がもつ31.4兆ドル(4080兆円)の既発国債の、含み損が減る「FRBの利下げ(5.25%→3%)」を待っているのでしょう。 【金融市場の空気】 朝食のとき読んだニューズウィーク誌(5.16)では、「ファースト・リブリック・バンクだけの問題か、米銀全体の問題か、これから熱い議論になる」と書いています。 銀行のバランスシートの内容と含み損を、記者が調査・分析していないからです。上場企業ですからB/Sは公開されています。金利と既発債券の市場価格の関係を知ってさえいればいいのですが・・・。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1336号:正刊:銀行とマネー信用と信用通貨(前半部)> 2023年5月10日:有料版 【有料版の目次】 ■1.米国のMBSの価格と、不動産価格 ■2.家計のローンは、16.9兆ドル(2200兆円):2022年Q1 ■3.米国の住宅販売戸数の急減 ■4.ノンバンクの解約危機=銀行の預金取り付けと性格は同じ ■5.マネーサプライの減少:リーマン危機以来の新しい事態 ■6.銀行が、詐欺的に信用されたことの根源から ■7.ブレトン・ウッズ体制の崩壊と、通貨価値下落のインフレ 【後記:日本で住宅を買う時期について】 <Vol.1337号:増刊:銀行とマネー信用と信用通貨(後半部)> 2023年5月14日:有料版・無料版共通 【増刊の目次】 ■8.6月に迫った、米政府の債務上限 ■9.日本の賃金から考える:インフレと貨幣錯覚 ■10.貨幣錯覚が生じている、今回のインフレ ■11.1世帯当たりの金融資産の目減りは,2年で226万円 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■8.6月に迫った、米政府の債務上限 財務省のイエレン長官は、政府の債務上限の引き上げ法案が通らないと「6月1日には政府のマネーがなくなり(政府資金がショート)、国債がデフォルトする可能性がある」と議会を脅しています。 政府からの国債の返済分(1か月平均で3300億ドル:1年で3.9兆ドル)は、その返済額と同じ金額の「借り換え債の発行」で賄えば、国債残は増えない。問題は、利払いです。 年間で「31.4兆ドル×平均金利2%=6280億ドル(82兆円)の利払い」があります。毎月平均6.8兆円です。 ・国債の利払いは財政赤字の部分です。この利払いは、国債の増加発行で賄われています。 ↓ 債務上限に達し新規国債の増加発行ができないと、国債の利払いができなくなります。利払いができない国債は、返済ができない国債と同じであり、デフォルトです。 ↓ 実際にデフォルトになると、米国の国債金利は急騰し、国債価格は暴落します。 債務上限の法案が通らずに国債のデフォルトを避けるには、現在の財政支出を減らし、国債の利払いマネーを捻出するしか方法はない。これは、行政サービスを提供する政府機関が、時期を決めず一時停止することになります。 公務員でも賃金が支払われないとレイオフになります。過去、米国では、金融政策に重要な失業や物価の政府統計が出されず遅れることもありました。政府の職員が出勤しなかったからです(2011年)。 ・財政赤字を理由に公務員の雇用には手をつけたことのない日本政府と、 ・公務員でも、マネーがないとレイオフする米国政府には、価値観と文化の違いがあります 6月1日ギリギリに、債務上限の引き上げ法案または代替法(暫定措置)が通るとはみていますが、まだ、その可能性が見えない。 窮余の策は、国債のデフォルトだけは回避するための法案です(国債の利払い用の国債発行は認める法案)。 共和党で、事実上の委員長としてリーダシップをとっているトランプは、「バイデンがコロナと気候変動対策で膨ませた政府財政の削減に応じないと国債をデフォルトさせる」と物騒なことを述べています(5月10日ころ)。 一方で民主党は2年で約5兆ドル(650兆円)も膨らんだ政府財政を削減する動きを、見せていません。 「米国のねじれ国会」の動きには不可解なところがあります。「党議拘束」という、日本の政治の慣習はない。議員が個人で動きます。 民主党には、共産党に近い極左から中道がいます。共和党には国粋主義に近い極右から中道までがいます。自分では中道というバイデンの政権は左翼です。MAGAのトランプは、右派寄りです。両者の妥協ができない。 米国のような二大政党による政治の本質は党派の妥協ですが、妥協ができないのが2020年の大統領選挙以降の米国政治です。 お互いの不法行為とスキャンダルの、暴露合戦と訴訟の政治です。 なお債務引き上げ法案がギリギリの日に通っても、2011年のように、政治的な混乱による米国債の信用低下を理由に、格下げの可能性はあります。 ↓ 現在はAA+(S&P)の米国債が格下げされると、世界の銀行が買いにくくなるので、金利が一層上がり、31.4兆ドルの既発国債の価格は更に下がります。 【過去の事実】 債務上限問題で、今回より深刻ではなかった混乱が起こった2011年には、国債が1ノッチ格下げされ、米国の長期金利は2.6%→3.6%へと1ポイントも上がったのです(10年債の価格は7%下落)。 https://www.dlri.co.jp/pdf/macro/04-14/k_1108d.pdf ■9.日本の賃金から考える:インフレと貨幣錯覚 【下がり続ける日本の賃金】 経済のなかで、もっとも関心があるのは、自分の賃金でしょう。 しかし、1990年代まで、自己都合の退職以外では「終身雇用」とされていた日本では、会社への賃金の要求は米国、欧州、中国ほどは強くなかった。日本の会社は、共同体的なものです。他方、米国の会社は機能的です。 日本では、賃金の前提である、会社の業績(売上、営業利益、生産性)が上がれば、賃金は上がるとされてきたのです。 日本の、資産バブル崩壊(1990年~)のあと、金融危機(銀行の不良債権危機)だった1997年を100としたとき、先進国の賃金は以下のように変化しました。 https://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2018/180221_02.pdf 日本 100→ 89.7(2016年) スウェーデン 100→ 138.4 オーストラリア 100→ 131.8 フランス 100→ 126.4 イギリス 100→ 125.3 デンマーク 100→ 125.4 ドイツ 100→ 116.5 米国 100→ 115.3 (注)各国の通貨内で、1997年と2016年を比較。 1997年に比べ、GDPの成長がゼロ%だった19年後の日本の賃金は、円ベースで89.7(-10.3)でした。世界で一カ国、下がったのです。米欧は、年率平均で1.5%のGDPの実質成長があったのです。1.5%/年という低い成長でも、19年では「1.015の19乗=1.32」になります。 物価目標2%と、GDPの成長を目指した異次元緩和(10年)は、安倍内閣の2012年末から開始されました。しかし賃金の上昇は1%以下であり、最高の年度でも2018年の1.5%でした。これは賃金の下落が止まった程度でしかなかった。 物価目標2%と実質成長2%(名目成長4%)は、霞ヶ関の霞(かすみ)のなかでした。 異次元緩和のなかで、厚労省は内閣に忖度(そんたく)して「賃金は上がっている」という偽装統計を出していました(2019年に発覚)。 【政府統計の偽装】 政府文書の改竄と政府が行う経済統計の偽装は、官僚の犯罪ですが。仲間内の検察は摘発せず犯罪になっていません。 ・犯罪も、検察が立件しないかぎり法的な犯罪ではないからです。 https://www.asahi.com/articles/ASM103C32M10ULFA00H.html 日本の賃金は、今も26年前の1997年と同程度に低い。 (毎月勤労統計調査:2020年まで) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r03/21cp/dl/sankou21cp.pdf (同、2023年まで) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r05/2301p/2301p.html 経営者が強欲で、従業員の賃金を上げなかったから、ではない。 逆に経営は苦しくても社員の賃金を上げたいという要求は強くあったのです。 【賃金を上げることができないくらい業績が低い】 しかし、会社の業績(売上、営業利益、生産性)が、上がらない。法人280万社のうち申告利益での赤字法人が173万社(構成比62%)もあります。 3社のうちほぼ2社が赤字です(国税庁:2020年度)。 https://www.fps-net.com/topics/4322.php 3社のうち2社は、今も、賃金を上げる生産性上昇の原資がない。毎年、約2%上がってきたのは、大手企業だけです。 ・大手企業の雇用は、約1229万人(構成比31%)、 ・中小企業の雇用は、2784万人です(同69%)。 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chushoKigyouZentai9wari.pdf 2323年は31年ぶりの賃金上昇という。物価の(CPI)の3.5%上昇(4月)に対して、定期昇給とベアを合わせて、賃金が3.89%上ったからです(ただし大手308社だけの平均:日経新聞の部分的な調査)。 【一方でインフレ】 物価は4.5%上がっています。エネルギー・電気の補助金によって、一般物価のCPIとしては、3.5%になっています(4月)。 ◎昨年は2.0%のCPI上昇だったので、2年間では「1.02×1.035=1.0557」・・・2年で約6%上がっています。 生鮮商品を除く、食品の値上がりが2023年も8.9%と大きい。 生命の必需を売る、スーパーの価格上昇が、もっとも激しい。 国内企業物価(卸売物価)は7.2%(3月)上がっているので、まだ流通企業が仕入価格の上昇分を負担しています。 ◎厚労省の、調査(従業員5人以上;3万事業所;勤労統計速報)では、実質賃金(賃金上昇率-CPI)はまだマイナス2.9%と水面下です(23年3月)。 ◎物価上昇の約4%に対して、全事業所の賃金の平均上昇率は1%台と低い。(注)米国は4.6%、ユーロは5.7%の賃金上昇ですが、いずれもインフレ率より低い。 ■10.貨幣錯覚が生じている、今回のインフレ ◎今回の世界インフレの特徴は、労働者の実質賃金が切り下がったことです。ただし実質賃金下がることは、経済学的には、賃金切り下げです。 【名目賃金は減っていない】 しかし手取りの名目金額では少し上がっているので「賃金切り下げ」と考えられていない。「賃金は減らず物価が上がった」と思われているのです。 【実質賃金は減った】 しかしインフレは、通貨の金額は同じままに、その価値(購買力)を下げます。これが、ケインズがいった「貨幣錯覚」です(『一般理論』)。マクロ経済を学んだ経済学者以外では、「物価の上昇を物価が上がったとして、マネー価値の低下とは考えない」のです。 (注)インフレともに価値が上がる金為替本位では、貨幣錯覚は起こりません。仮に、物価が10%上がっても金が10%は上がって平衡するからです。 【インフレでは、資産(不動産)は膨らみ、借金は目減りする】 信用通貨の体制の中での、物価上昇の受益者は、借金の大きな政府と借金が預金より、大きな企業です。 ◎日本は1200兆円の国債がありますが、物価が2年で6%上がったので、実質的な国債は、返済があったかのにように、2年で6%(72兆円)その価値が減少しています。 米国では、2年で物価が15%上がり、 ・31.4兆ドル(4080兆円)の国債は、 ・実質では、15%(4.71兆ドル:612兆円)減っています。 ◎物価上昇は「見えない課税」です。税率を変えない累進課税では、商品のインフレで企業の利益が増え、労働者の賃金が上がった分は、実質的な増税になっていきます。 【インフレで、増税を画策する政府】 日本政府は、防衛費を2倍に引き上げることと、少子化対策の財源として、増税を画策しています。インフレの中では、とんでもないことです。 ◎防衛費の増加と、少子化対策費は、国債の実質的な目減り(国民から政府への所得移転)で、賄えるからです。 ・物価に上昇によって国民の実質預金が目減りし、 実質賃金がマイナスになったことの裏には,政府の借金の、実質額の減少があります ◎負債の実質額がインフレで減った政府は、本来、実質預金と実質賃金がともに減った国民には「所得のインフレ補助金+預金のインフレ補助金」を払わねばならない。 日本では72兆円(世帯当たり135万円)、米国は612兆円(世帯当たり408万円)です。しかし、こうした所得移転の防止政策をとる政府はない。 【例外は2023年のトルコ】 2023年の、40%のインフレの中で、最低賃金を50%上げたトルコだけです。2023年の、トルコの賃金上昇は54.7%と高い。3月のコアインフレ率は、地震もあって需要が減り47.4%に下がりました。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-03/RSJ2OQT0G1KX01 ◎物価上昇が「見えない課税」であることは国民に隠された、経済の真実です。 【名目と実質の原理】 マネーの実質価値を下げるインフレは、負債の多い政府と資産階級に、国民の所得が移転することです。実質預金と実質賃金が下がるからです。 マネーの価値を上げるデフレは、逆です。政府を資産階級から国民に所得が移転することです。高額所得者が多い資産階級は、総じて借金も大きいからです。 例えば5%のデフレでは、借金の実質が5%増えます。一方で、実質預金と、下方硬直性のある実質賃金は5%上がるからです。 ・デフレでは、政府の借金の重みが実質で増えるので、政府は2013年4月からインフレ目標つきの異次元緩和550兆円を実行したとも言えるのです。 【退職世帯の預金は、実質で120万円減った】 ◎日本の退職世帯では、ゼロ金利の銀行預金が、平均で2000万円ですが、2年間の6%のインフレで、すでに、120万円の購買力が目減りしました。これは、経済学的には120万円(6%)の預金課税と同じです。 国民は物価上昇に対してもっと政府に怒って補助金を要求していい。これは経済学的に、正当な要求です。国民の立場で政治をするという自民党と立憲民主党は、なぜここに目をつけないのでしょう。両方とも貨幣錯覚に取り込まれています。 【26年間も下がり続ける日本の実質賃金】 1)日本の名目賃金は、1997年から2017年まで10.3%下がりました。 2)2021年から2023年は、物価の上昇による実質賃金の下落です。日本人の生活は、これまで30年苦しくなり続けています。今回のインフレによる、世帯の預金の目減りと、実質賃金の減少はひどい。 ■11.1世帯当たりの金融資産の目減りは,2年で226万円 世帯の金融資産2023兆円(うち1116兆円が銀行預金)の、実質的な価値の目減りは、2年で6%の物価上昇で、2023兆円×6%=121兆円です。5300万世帯の1世帯あたりでは、平均で226万円も購買力が減っています。 民主国では、国民は国家の主人であるべきです。しかし実体は被支配階級でしょう。北欧(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー)とバルト3国の社会民主主義は、国民を国家の主人にしています。同じ民主国でも、国家の実体的な内容は国ごとに異なっています。 インフレでは、国民に悪い作用を及ぼす「貨幣錯覚」を知っていなければならない。 【後記】 貨幣錯覚の話、ご理解いただけたでしょうか。インフレは、物価の上昇の外形をとった、通貨の価値の低下です。物価が2倍に上がれば、1万円の価値(購買力)は5000円に低下します。ところが、1万円はいつまでも1万円にように見える。これが、貨幣錯覚です。 世帯の、円での金融資産の目減りである、2年で226万円は深刻です。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です。】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報 があると、今後のテーマと記述の際、より的確に書くための参考になります。 コピーして、メールに貼りつけ記入の上、気軽に送信して下さい。 感想やご意見は、励みと参考になり、うれしく読んでいます。 時間の関係で、返事や回答ができないときも全部を読みます。 時には繰り返し読みます。 【著者へのひとことメールおよび読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com 【送信先アドレスの変更や解約は以下よりお願いします】 マイページ(ログイン) https://foomii.com/mypage/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~