■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ <1ヶ月にビジネス書5冊を超える知識価値をe-Mailで> ビジネス知識源プレミアム(660円/月:税込):Vol.1334 <Vol.1334号:増刊:世界的な金融危機は終わったのか?> 2023年4月30日:米国のMBS12兆ドル(1560兆円)の下落は約1年遅れてやって来る 【テーマ(4月30日増刊:有料版・無料版共通)】 1.2023年3月の銀行危機以来、世界の株式市場には楽観ムードが広がっている。 2.植田日銀は、金融緩和の継続を表明し、世界の通貨に対する円は下落(1ドル136円:1ユーロ151円:1スイスフラン152円) 3.金融危機では、国債に次ぐ米銀の資産になっているMBS(不動産ローン担保証券:12兆ドル:1560兆円)の先行きの予想が欠かせない。 ◎しかし,世界の金融市場では米欧のMBSの長期予想がされていない。本稿では、MBSの価格分析と2024年までの長期予想を示す。 ウェブで読む:https://foomii.com/00023/20230430180147108541 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ホームページと無料版申し込み http://www.cool-knowledge.com 有料版の申込み/購読管理 https://foomii.com/mypage/ 著者へのメール yoshida@cool-knowledge.com 著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ *本稿は、有料版・無料版に共通の、日曜増刊とします* 【知識と判断】 ビジネス知識源では、知識を体系化し、原則にすることを目的にしています。情報は、「事実→データと情報→理論→体系化」のプロセスを経てあなたの「知識資産」になっていきます。 知識資産は個人的なものです。近年、日本の産業の「生産性上昇→賃金上昇」に必要な「人的資本」と言われるもの内容は、ビジネスの知識資産です。 知識は「言葉と数字のテキスト(本、論文、小冊子、あるいは口頭)」で、コミュニケーションされます。 知識資産は、事実(経済的事象)の変化にあたっては、将来予想を確実にするものです。 〔原理〕あらゆる経済取引(=交換)は、近い将来の期待価値(=財の効用)の、個人での判断によって発生します。 〔事例〕金を買う行動は、「金の将来価値を高く見て、通貨の将来価値を金より低く見るという判断」から生じます。 この判断は、 ・金価格の、変動の原因についての知識と、 ・通貨の変動の原因についての知識の関連付けから来るものです。 投資は、職業以外で所得を得る方法です。ある経営者の言葉を思い出します。「経営での利益を、25年貯めても小さかった。現在の私の資産は投資で得たものです。」 【増刊号のテーマ】 1)2023年3月の銀行危機以来1.5か月。 現在、世界の株式市場に楽観ムードが広がっています。 ↓ 2)新総裁の植田日銀は、金融緩和の継続を表明し、世界の通貨に対する円は、下落しました(1ドル136円:ユーロ151円:スイスフラン152円) ↓ 3)金融危機については、国債に次ぐ米銀の資産になっているMBS(不動産ローン担保証券:12兆ドル:1560兆円)の先行きの予想が欠かせない。 ところが、世界の金融市場では、米欧のMBSの長期予想がされてません。本稿では、MBSの価格分析と2024年までの長期予想を示します。株価の短期予想は、価格波動があり、当てにくい。一方、住宅価格の長期予想は、ローン金利に左右されるので、予想しやすいのです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1334号:増刊:世界的な金融危機は終わったのか?> 2023年4月20日:有料版・無料版共通 【増刊の目次】 ■1.金融市場には楽観ムード ■2投資家が織り込んでいない、約1年後のMBS(住宅ローン担保証券)の下落 ■3.商業用不動産は、住宅より約2年早く低下した ■4.時流には、2面がある:肯定的な側面を見よう ■5.米国のMBS(不動産ローン担保証券)は12兆ドル(1560兆円)と巨大 ■6.C-MBSとR-MBSの下落は確定した ■7.後記:関連記述 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.金融市場には楽観ムード 年初来の株価は以下です。株価投資は,投資家の金額が大きいので、金融・経済の体温に当たるものです。 株価は、一般に、3か月から6か月先の投資家の予想(集合知)を織り込みます。 1月5日 3月22日 4月25日(年初来) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 日経平均 2万5820円 2万6850円 2万8860円 (112%) 米S&P500 3,850 3,980 4,170 (108%) 英FTSE100 7,555 7,400 7,870 (104%) 独DAX 14,070 14,950 15,922 (113%) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ いずれの国でも、23年3月の銀行危機はなかったかのように、株価指数は年初来4%から13%上がっています。これは株式投資家の、金融危機の進行に対する「楽観」を示すものです。 一方で、ドルの危機を示す金価格(1オンス:ドル)は、以下の動きです。23年1月5日 1900ドル→4月27日 2150ドル(113%) https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/#gold_1year 金価格はドルの実効レート(世界の通貨に対するドルレート)と逆に動く性質をもっています。 ・ドルの実効レートが上がる時期は、金の売り(=ドル買い)が増えて金価格は下がり、 ・ドル実効レートが下がる時期は金の買い(=ドル売り)が増えて、金価格は下がる傾向です。 金価格を左右するドルの実質実効レート(インフレ率を引いた実効レート)は、以下のように下がっています。 22年10月 121 → 23年3月23日 115(95%) https://www.ceicdata.com/ja/indicator/united-states/real-effective-exchange-rate ドルの実質実効レートは、「ドル/円」だけではなく世界の通貨に対するレートを示します。(注)ドルの価値(100ドルの購買力)は実質実効レートで計るべきものです。 2023年はドルの実質実効レートが5%下がり、金は4か月で13%上がっています。 「ドル5%マイナス→金13%上昇」になるのは、金融投資家の「心理的な増幅効果」からでしょう。下がるという心理(感情)は数値的なものではない。 投資家が、感情で判断しています。このため2022年10月までは年率10%で上がっていたドルの実質実効レートが、5%下がると、15%下がったような感覚になる。 これが、2023年の金価格が13%上がった主因でしょう。投資家集合は株価、通貨、金の価格変動を「過去と比較の感情」で判断しています。 ◎AIには感情はなく、上昇や下降を数値だけで見ます。しかし、人間は、コミットした金融商品の利益や損に対して感情を込めて価格を見ています。(行動経済学での検証あり)。 ◎「客観的な数値傾向(理性)+自分のポジションの損得の主観的な感情=投資家の判断」です。 5%の損と5%利益の利益は、数値ではプラス・マイナス幅で同じです。しかし保有ポジションの5%の損は、5%の利益よりはるかに大きく感じるのが、人の感情です。 行動は分析的な理性より感情(=感覚)によって、起こります。スポーツでのとっさの行動が分析的でなく瞬時の反応であることからも分かるでしょう。 頭で考えて、高速の打球を打つことはできない。感覚と行動は瞬間的で、反応的です。動物の動作と同じです。いったん起こった感覚には、持続の時間と、他人への伝播があります。 このためあらゆるスポーツのゲームには感情の伝播である「流れ」がある。株価にも、これが通じます。判断は、感覚(=感情)です。 「5%の損=感情的には10%の利益」と等価でしょうか。 ドルの、実質実効レートの5%下落が、ドルの反通貨である金価格の、13%上昇に反映していているように見えるのです(仮説)。 【新たな銀行破産】 今日、危機が言われていた「ファースト・リパブリック・バンク(総資産約30兆円:中堅銀行)」は、株価が1/50に下がり、売買が停止されて政府預金保険機構(FDIC)の管理下に入りました。 預金にリスクを感じた預金者が、13兆円(銀行資産33%)を引き出した結果の、資金ショートによる倒産です(スマホでのデジタル取り付け:23年4月28日)。 ファースト・リパブリック・バンクには、IT富裕者の預金が多い。保証上限の25万ドル以上の預金がどうなるか不明です。たぶん、政府が保証するでしょう。保証しないと、預金パニックになるからです。 ・13兆円のBank Run(取りつけ)といっても、現代では銀行には並ばない。スマホで預金を移動します。 ・損失の噂がSNSで広がると、突然資金ショートになります。 SNSは、銀行破産の形態を変えました。今回も、そして今後も。 https://finance.yahoo.co.jp/quote/FRC ■2投資家が織り込んでいない、約1年後のMBS(住宅ローン担保証券)の下落 住宅価格は、景気から約1年は、遅れる遅行指標です。 景気の、3か月から6か月の先行指標は、株価です。 1年くらい遅れるのが住宅価格でしょう。 理由は、既存の住宅戸数に対し販売数が多い米国でも1年に、8%(12軒に1軒)しか売買がないからです。 既存住宅1億2000万戸のうち、1000万戸が年間販売です。販売は平均12.5年サイクルです。日本では中古の流通が少なく、住宅の全体では30年サイクルの販売です 住宅価格は、上がるときも、株価に、1年は遅れます。 ローン金利が上がり住宅価格が下がるときも1.5年は遅れます。 (注)日本の、1990年の株価バブルの崩壊のときは、不動産価格の下落は、1992年からでした。1990年の年初からの、株価の崩壊(-50%)から、約2年遅れでした。 〔当方の経験〕1990年の年初から株価が大きく下がっていたとき、まだ不動産価格が上がっているなかで、不動産の価格も下がると当方がいうと、「そんなことは絶対にない。日本の不動産は下がらない」という周囲の反応でした。当方の親戚も、遅れた不動産投資で破産したのです。 財務省が日本の不動産価格の下落を公式に認めたのは、更に2年後の2024年でした。地価の統計(公示地価)も発表されるのは1年後です。不動産統計は、1年以上もゆっくりしています。世界的に、不動産価格への認識には、相当なタイムラグがあります。 FRBはどう見ているでしょうか。たぶん、不動産価格は、考慮の外です。パウエル議長の発言にはインフレ対策という言葉はたくさん出てきても、住宅ローン金利が2倍に上がったという発言は皆無です。 【原則】 ・株価と金利の、長期的な動きに対しては、1年~1.5年、 ・景気(GDP)に対しては、約1年遅れるのが、住宅価格です。 米国で、住宅ローンの金利が上がり始めたのは、FRBの利上げ開始の2022年3月からです。 ・7か月後の22年10月には住宅ローン金利は、7%台に上がりました。2021年までは3%台と低かったので、2倍超への上昇です。 1)ローン金利3%のときのローン額、毎月の支払い、支払総額の計算をします。30年固定金利のローンとします。5000万円を借りるとします。 ・毎月の返済 27万7200円 ・30年の支払総額 27万7200円×360か月=9979万円。 2)ローン金利6%のときの支配総額 ・毎月の返済 35万8200円 ・30年の支払総額 35万8200円×360か月=1億2895万円 (計算サイト) https://keisan.casio.jp/exec/system/1256183644 9979万円÷1億2895万円=77% 【原理】 住宅価格が23%下がれば、3%ローンと6%ローンの支払総額は等価になる。 ↓ このため、住宅ローン金利が3%から6%に上がると、住宅価格は23%下がる傾向を示す(理論値)。 米国の住宅価格は、2%のインフレ込みの名目GDPに比例し、約3%/年上がって行くことがノーマルでした。 事実、2020年までの価格上昇は、3%台/年だったのです。 ところが、コロナ対策として、米政府が財政支出を急拡大し、FRBは4兆ドルのドルを増発したことから、2020年からは前年比5%→10%→20%と上昇したのです。 価格上昇率がピークだった2022年6月の、全米20都市の住宅価格指数は21.2%でした。日本で、1年に20%も住宅価格が上がれば、パニック買いになるでしょう。 世界的に、「コロナバブル」というべき、不動産価格の急騰(3年で1.05×1.2×1.2≒1.51・・・51%上昇)が起こったのです。 (ケース・シラー住宅価格指数) https://jp.investing.com/economic-calendar/s-p-cs-hpi-composite-20-n.s.a.-329 原因は、「急激なマネー増による金融バブルの株価と不動産への波及」以外ではない。 コロナの2020年からの3年間、経済成長という住宅需要増加の背景はなかった。ロックダウンとレイオフでリモートワークで、経済活動は、低下していました。(注)米国のGDP成長は1%台と低い。 その後、FRBの利上げにともなって、ローン金利が2倍の6%台、7%台に向かって上昇したことから、価格の上昇率は「20%→15%→10%→5%→0%(23年4月)」と下がっています。 23年5月からはマイナスになって行くでしょう。 (注)日本の不動産価格はまだ上がっています。これも、2年の遅行指標でしょう。 https://sumai-step.com/column/article/2046/ 住宅価格の下落幅の理論値(23%)を示すのが、上記の3%と6%の金利での、ローン支払額のシミュレーションです。 【米国の住宅市場の特徴】 しかし、米国では、ローン金利が上がると既存住宅の乗り換えの売りが増えて住宅価格は、理論値の-23%ではなく30%、40%と下がる可能性もあります。 その理由を示します。 1)米国の住宅ローンは、ノンリコース型(非遡及型)であり、住宅に貸し付けられる。担保を差し出せば、個人保証は残らない。 2)ローンで買った住宅価格が大きく下がったとき、その世帯では価格が高い時期のローンを支払うのは損になる。前の住宅ローンの支払いを停止し、住宅を手放す(ローン会社の担保:フォアクロージャー)。 3)世帯は、価格が大きく下がった大型物件の中古住宅を買って、新しいローンを組む行動をする。一般に、面積が広い高級物件ほど価格の下落率は高くなります。 2年前に買った、40%から50%は高かった価格のローンを支払うよりローン金利は上がっても、その後のローンの支払総額が減るときは、価格が下がった新しい住宅に乗り換える。ヤドカリの移転のような感じです(移動型文化の米国では8年サイクルで転居します;定住型の日本では、平均30年サイクルです)。 担保を差し出しても、個人保証分が残る日本には、これは少ない。 以上から、米国では住宅価格が、一定率以上下がると、既存住宅にも売りが増え、ローン金利比較での-23%の理論値より不動産市場の価格が下がる傾向が出るのです。 ケース・シラー(全米20都市)の価格指数の動きを見ると、2022年度には20%上がった住宅が、2023年5月から、下落期にはいることが確定したと言っていい。 住宅価格の底は、10か月後の2024年初頭になると見ています。 底値は-30%か? 米国の不動産価格の指数は、 ・2000年を100とすれば、 ・2008年のリーマン危機の前が226(8年で126%上昇:2.26倍)、 ・リーマン危機で180まで20%下がり、 ・2011年の180から2022年は400まで、11年で122%も上がっていました(2.2倍) https://jp.investing.com/economic-calendar/monthly-home-price-index-1287 22年間で、4倍です(年率平均6.5%上昇)。2000年代の米国では、平均2%の金利で預金するよりはるかに大きな資産を、不動産と株価(2000年の5倍)への投資によって、作ることができました。低金利とドル増刷による資産価格の高騰が23年間も続き、株価は5倍に、不動産は4倍に高騰したとみていいのです。 ◎2023年の夏以降2024年末まで、これが大きく下がります。 たぶん、不動産+株で、30%の下落です。 米国の2023年の夏以降、1990年から1997年の日本の株価と不動産バブルの崩壊に似ているでしょう。時間的には7年ではなく3年に短縮されるでしょう。 ■3.商業用不動産は、住宅より約2年早く低下した 住宅価格より約2年先駆け、商業用不動産のREITは、2022年4月の3200をピークにして、1年後の23年4月は、2450へと24%下がっています。ここで下げ止まりではない。もっと下げるでしょう。 REITは、投資家(銀行やファンド)から集めた資金で不動産への投資を行い、収益(賃貸料収入や売却益)を投資家に分配する上場証券です。 対象の不動産はオフィスビル、商店やションピングセンター、ホテル、サービス業の建物などです。空きスペースが増え、賃料が下がり、ビルの転売価格も下がると、不動産の株であるREITが下がります。REITの変動は、商業用不動産の賃料と同時です。 住宅価格には1.5年先行します。 REITの24%の下落は、商業用不動産の賃料と価格が、リアルタイムで、24%下がったことを示します。REITと商業用の不動産価格は、住宅価格に約2年は先行する指標と見ていいでししょう。 ◎コロナ後に、大都市ではリモートワークが社員の40%に増えています。自宅勤務が激増したのです。大都市のオフィスには、面積の20%の空きができ、賃料も20%下がりました。 REIT価格の下落は、需要が減ったオフィス・スペースを示しています。米国の、商業用不動産の開発とREITの発行会社には倒産が出始めています。 リモートワークへの変化は、構造的です。2023年、2024年、2025年に、出勤が復活することはない。マネジャーは会社に行っても個人のコンパートメントでPC画面に向かって仕事をします。高速インターネットでサーバーにつなぐと、自宅で勤務することと同じです。 上司や同僚との会議や打ち合わせは、ZOOMやTEAM、ネットワーク上の仮想オフィスで、十分になった。全米平均で20%は下がっているオオフォス用ビルの価格が。復活することはない。 コロナが不可逆的に作った「新しい現実」のひとつです。 10年先をいえばメタバースとマルチワークへの変化は必然です。 ■4.時流には、2面がある:肯定的な側面を見よう 不動産の価格では否定的な物事の変化にも、表と裏の2面があります。 近代化(モダニズム)で密集を促してきた都市化は、居住の分散(ポストモダン)への時代を迎えています。これは世紀的な変化です。学校の教室や、留学も、バーチャル化していくでしょう。youtubeでの有名教授の講義が、その先駆けです。 リモートワークでは、自宅で、国際的な仕事ができます。今日はアメリカ、明日はドイツ、来週は中国。店舗がアマゾンの仮想店になったのと同じ変化です。 アマゾンへの変化は1995年から2010年まで15年でした。chatGPTのような対話側AIも加担して、オフィスは仮想化して行くでしょう。 (注)現在のchatGPTには、根拠がないことを答える欠陥があることが、当方の質問でわかりました。知っていることを訊ねると、「間違った答え」を返してきて平気です。「それ、違いますよ」というと、簡単に謝ってきて、「別の根拠のない答え」を返してきます。「自分が知らないこと」をchatGPTに聞くことは危険です。しかし、長文を入れて「要約してください」と要求すると、見事な概要を作って返してくれます。 言語の壁は、リアルタイムの音声自動翻訳(AIはこれが最も得意)になっていきます。しばらくすれば(3年か?)、外国語への心配は要らないでしょう。ロシア語、アラビア語、モンゴル語でもいい。 言語の壁がなくなると、一流の仕事は、狭い会社や、日本も飛び出し世界で評価されます。タレントがメディアで世界化してきたことと同じです。AIの、職業を瞬間マッチングするアプリも登場しています。 【仮想オフィスが会社】 ◎「リモートワークによる仮想オフィスがこれからの会社」になっていくでしょう。変化は10年か。業務をユニット化(単位化、部品化)してトップの専門家にアウトソースするコア会社です。 細分化されてきたソフト開発は、すでにアウトソース化されています。財務コンサル、商品開発コンサル、デザイン、医薬品製造、設計・・・あらゆる領域(ドメイン)に拡大するでしょう。ハイパーな総合大学のイメージです。その分野の一流の教授はアウトソース。 ◎基本の姿勢は、「変化には必ずある、肯定的な側面も見ること」です。日本人の血である「無情論」(典型が鴨長明や吉田兼好)は、時代変化を否定的に見て、山に隠居していました。これとは、逆です。「時流の変化に乗ること」です。 【事業発想の原点になること】 講演の打ち上げが、確か東北だったか、その地方の老舗の寿司屋であったときのことです(1990年だったか)。会食のとき、この寿司は確かに美味しい、一流の味です。 ・しかし、事業(ビジネス)への発想では、1店だけしか作れない老舗寿司屋を目指すのではなく、その寿司作りの技術を標準化し、回転寿司の高品質化を構想すれば、10年で世界的な大チェーンを作ることもできる。 事業は、顧客数の多さから考えるものです。最初は電子おもちゃだったパソコンのメインフレームへの勝利(20年)が、顧客数の多さの事例です。 30年前の回転寿司は、価格は安く、内装は安っぽく、味は不味かった。 聴衆には、経営者の二世が多かった。何人が、これを理解したか。 ■5.米国のMBS(不動産ローン担保証券)は12兆ドル(1560兆円)と巨大 全米の商業銀行の総資産は、約20兆ドル(2600兆円)です。日本の約2倍です。それに、規制外のシャドーバンクが20兆ドル(2600兆円)あります。年金基金やインデックスファンドです。合計で40兆ドル(5200兆円)。これらの証券+銀行が、貸し付けをし、債券(国債、MBS、社債、株式)でマネーを運用しています。 債券の種類別に全体を見ると、以下です(2022年) https://www.sifma.org/resources/research/fixed-income-chart/ 【米国の負債債券の総額】 ・社債 10.2兆ドル(1330兆円:事業会社が発行) ・MBS 12.2兆ドル(1590兆円:不動産ローン担保証券) ・ABS 0.15兆ドル(20兆円 :資産担保証券) ・国債 23.3兆ドル(3030兆円:連邦政府の負債) ・州債 4.0兆ドル(520兆円):州政府の負債) ・政府証券 0.19兆ドル(25兆円):連邦政府の負債) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 合計 55.1兆ドル(7160兆円:証券化された負債;GDPの2.5倍) 23年前の2000年には、合計が16兆ドル(2080兆円)でした。 日本の、現在の金融機関の規模と等しかった。日本は、同時のGDPで2倍の米国に匹敵する、金融大国でした。2022年には、米国の証券化された負債(=証券の合計)は、55.1兆ドル(7160兆円)へと3.4倍に膨らんでいます。 【増加率は、GDP成長率の2倍だった】 債券の総体の、年率の増加は、5.7%です。22年間の、GDPの年間増加の約2倍です。 ・GDPの増加率に比例する債券の増加が、正常です。 ・年率で22年間、2倍の負債債券の増加は異常です。 金融バブルを発生させ、その後、バブル崩壊を生みます。 ・売上が3%しか伸びていない会社(22年で1.9倍)が、年間6%の負債の増加を22年続けたと考えてください(22年で3.6倍)。会社は、確実に倒産するでしょう。 ↓ 2000年代の米国経済では、「過度の金融化=負債の証券化」が進んでいます。金利の上昇の時期に、サイクル的に「資産のバブルとバブル崩壊を繰り返す」ことが、負債証券の多さ(55.1兆ドル)から分かるのです。 ↓ これが ・2008年のリーマン危機であり、 ・2023年3月10日からの、銀行危機です。 いずれも負債債券の増加が、資産(株、不動産、債券)の価格を押し上げて、不動産と株価の資産バブルを作ったあとです(資産バババル2000年~2006年→崩壊2008年9月:2020年~2022年→崩壊2024年の春から夏) FRBの利上げとともに、 1)負債債権(国債、MBS、社債)の時価価値が下落し、 2)銀行とシャドーバンクの損失と危機になって、 3)結局は資産バブルの崩壊(=マネー量の縮小)に向かうことを示しています。 ◎2008年のリーマン危機、 ・そして今回の、コロナ下のゼロ金利で、負債が増えたあとFRBが1年で4.75ポイントの利上げをしたあと、2023年から24年の金融危機がこれです。 ・資産価格(不動産、株、債券)のコロナバブル(現在)のあとの、 2023年からの金融危機(=信用収縮)の必然性が、55.1兆ドルという金融負債の過大からも分かります。 米国は、2000年代の23年間で、ファイナンスが過剰になっています。債券は、マネーの調達のために発行する証券です。 金融資産=金融負債です。金融資産の価値は、その裏付けである金融負債の正常な利払いができ、負債が返済されるという「借り手信用に依存」しています。 社債の価値が、発行会社の事業の利益信用に依存することと同じです。 全米の、55.1兆ドル(7160兆円)の負債債券の中に、 ・金利が上がって、利払いと返済ができなくなった「不良な債券」が増えると、 ・銀行預金や証券である金融資産の価値は減ります(これが信用収縮=マネー量の減少です)。 不良債券が増えるのが「金融機関(銀行とシャドーバンク)の危機」です。 ◎金融機関の危機は、上記の55.1兆円の債券が、金利の上昇によって下落することから起こります。 ■6.C-MBSとR-MBSの下落は確定した 今回は、金利の上昇による、 ・ゼロ金利のとき発行された、国債と社債の時価の下落ではなく、 ・不動産ローン証券、MBS(12.2兆ドル:1590兆円)の2023年から24年の下落を述べます。これが確実になったからです。 12.2兆ドルの残高のMBSには大別して、 ・C-MBS(商業用不動産ローン担保証券:約2.2兆ドル)と、 ・R-MBS(住宅ローン担保証券:約10兆ドル)があります。 米国の不動産ローンでは、貸付金の利払いと返済金は多数が合成され、証券化されて販売されています。 銀行(資産20兆ドル)とシャドーバンク(資産20兆ドル)にとっては、MBSは、 ・国債(金融機関の保有残高23.3兆ドル)につぐ、 ・大きな債券が、MBSです(保有残高12.2兆ドル)。 不動産REIT(上場投信)の、24%下落の項で示したように、 ・商業不動産は、すでに価格が約20%低下していて、 ・C-MBSも、20%以上、時価(転売価格)が低下しているでしょう。 商業用不動産価格は、FRBの利上げと同時に、下がっています。 ローン金利が3%台から6%台と2倍になった住宅用不動産は、1年から1年半遅れて、下がります。 3%と6%の30年固定金利のローンの、支払いシミュレーションで計算したように、ローン金利が6%上がると、住宅価格は23%下がります(理論値)。 全米の住宅価格は、2023年5月から、前年の価格からの下落が始まり、2023年夏、秋、冬・・・とマイナス20%に向かって下がって行くでしょう。2024年春には、マイナス25%に近づくと推計しています。 23年5月から、住宅価格の下落が始まると、10兆ドルのR-MSBの価格は、住宅価格下落幅より大きく下がります。 仮にマイナス30%とします。 残高12.2兆ドルのMBSの価格が30%下がると、銀行とシャドーバンクの合計損失が12.2×30%=3.66兆ドル(475兆円)になります。 ↓ 大手までの金融危機を惹起するのに十分な損失です。 銀行とシャドーバンクの合計自己資本は、リスク資産を含む総資産(40兆ドル)の約5%の2兆ドル(260兆円)しかないからです。 金利上昇よる国債価格の下落(23.3兆ドル×20%≒4.66兆ドル(605兆円)の時価の低下(含み損)がB/Sの底にあるので、MBSの下落が加わると、全米の銀行と、シャドーバンク(総資産40兆ドル)は、保有資産への信用を失って壊滅するでしょう。 (2024年の春から夏) 【対策】 リーマン危機の約4倍の金融危機に対しては、1つの方策しかない。 ↓ FRBが、緊急に10兆ドル(1300兆円)を増発して、自己資本が消えた金融機関に、貸し付けること(劣後債)、あるいは出資です。 (注)全部の銀行が、資本の面では、かつての「ゆうちょ(総資金量が250兆円)」のように国有化されることになります。 FRBが、10兆ドル(1300兆円)のドルを増発すればどうなるか。 激しいドル安でしょう。1ドル80円以下の70円かも知れない。 国民の預金(20兆ドル:2600兆円)を、名目金額で100%保護するには、FRBが、10兆ドル(1300兆円)のドルを増発するしか方策はない。10兆ドルは、リーマン危機のときの4倍です。 ■7.後記:関連記述 第1次世界大戦のあと、1929年-33年の「大恐慌」のときは1万の銀行が閉鎖され、紙幣での預金引き出しは制限されました。 しかしマネーのデジタル化が進んだ現在では、銀行の窓口を閉じる効果はない。PCやスマホで預金の移動ができるからです。デジタル送金の停止をすれば銀行が決済機能を果たさなくなって、経済取引は停止します。給料も払われず、買い物もできない。預金の凍結はできないのです。 この点からも、FRBが10兆ドル(1300兆円)のドルを増発するしか方策はない。そうでなければ、20兆ドル(2600兆円)の銀行預金の50%を無効にするしかない。これは、政治的にムリです。 今回は書きませんでしたが、欧州も米国の金融状況と類似しています。ただし、EU(26カ国)の金融バブルは米国よりは多少穏やかです。 日本には、まだ利上げがないので(0.25%→0.5%のみ)、ゼロ金利の金融バブルの崩壊は起こっていません。 日本の金融危機は、保有するドル債券(総額1000兆円:米国債、外貨準備、ドル株、ドル債券)の20%下落から起こります。20%の円高(ドル安)でも同じ損害が生じます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です。】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報 があると、今後のテーマと記述の際、より的確に書くための参考になります。 コピーして、メールに貼りつけ記入の上、気軽に送信して下さい。 感想やご意見は、励みと参考になり、うれしく読んでいます。 時間の関係で、返事や回答ができないときも全部を読みます。 時には繰り返し読みます。 【著者へのひとことメールおよび読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com 【送信先アドレスの変更や解約は以下よりお願いします】 マイページ(ログイン) https://foomii.com/mypage/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~