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週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~

三橋貴明(経世論研究所所長)

三橋貴明

二つの付加価値税

付加価値税の生みの親は、アメリカのC.S.シャウプである。

シャウプといえば、日本における1949年の「シャウプ勧告」で有名だ。

シャウプ勧告とは、GHQの要請により結成された、シャウプを団長とする日本税制使節団の、日本の租税に関する報告書になる。正式名称を「シャウプ使節団日本税制報告書」だ。

シャウプ勧告において、実は付加価値税が提案されていた。

時は遡り、1943年。シャウプは企業が生産する財やサービスではなく、売上から仕入(売上原価)を控除し、さらに減価償却を差し引いた「付加価値」に対して課税することが提案している。

シャウプの付加価値税の場合は、単純に、売上-売上原価で計算される粗利益に、減価償却を考慮し税率をかけるだけであるため、インボイスは不要である。

要するに、企業の「粗利益≒付加価値」に課税するに過ぎない。シャウプ案の場合、当然ながら「課税売上」「課税仕入」といった概念がないため、輸出戻し税は存在し得ない。そういう意味で、シャウプの付加価値税こそが、本来的な「付加価値」税だ。

1954年、モーリス・ローレがシャウプのアイデアをアレンジする形で、現代の付加価値税を考案する。ローレ案の特徴をまとめると、

1.財とサービスの提供の「全て」に課税される

2.全ての取引段階に課税される(というわけで、筆者は消費税を「取引税」と呼んでいる)

3.仕入税額控除を全ての段階に適用する

であった。

シャウプ案との相違は、仕送状、つまりはインボイスを単位とする課税の延長線上の「付加価値税」であるという点である。

課税売上から課税仕入を控除する方式であり、これを「インボイス方式」と呼ぶ。

シャウプの付加価値税では、輸出戻し税は存在し得ない。各事業者単体の付加価値に課税するだけだからだ。企業単体への租税なのである。

それに対し、ローレ案はバリューチェーン(価値連鎖)全体、つまりは商流全体に課税する。

その上で、輸出企業の課税売上に対する税率を0とすることで、輸出補助金が実現する。具体的には、それまでの商流全体が負担した税金を、輸出企業に「全額」還付するわけだ。

… … …(記事全文2,259文字)
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