… … …(記事全文2,581文字)アメリカでは財政指標として「政府のネットの利払費対GDP比率」が重視されてきてはいるが、グローバルには未だに政府の「債務対GDP比率」が主流である。
すなわち、国債を初めとする政府の負債とGDPを比較し、上昇を「悪化」、下落を「改善」とみなす考え方だ。
そもそも、ストック(政府の負債)とフロー(GDP)を比較するという発想が意味不明だ。さらには「政府債務対GDP比率」が上昇しようが下落しようが、
「国債が自国通貨建ての国は財政破綻しない」
ただ、これだけの話なのである。
しかも、格付け会社などが「政府債務対GDP比率」を見る場合に、なぜか「通貨」が考慮されない。
当たり前だが、「外貨(ドルなど)建て国債」と「自国通貨建て国債」とでは、同じ「国債」という言葉が使われているものの、意味が全く違う。
自国通貨建て国債の債務不履行などあり得ない。何しろ、その国の中央銀行は「自国通貨建て国債」であれば、キーボードを叩くだけで購入できる。
それに対し、外貨建て国債の債務不履行は、当然、あり得る。
国債の通貨や中央銀行の存在が意識されない「債務対GDP比率」に、財政指標としての意味はない。
とはいえ、とりあえずはグローバルに採用されている「債務対GDP比率」で考えてみることにしよう。
そもそも、日本の財政目標が「プライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)」に重点が置かれているのは、「債務対GDP比率」を意識したものだ。
債務対GDP比率を変更する要因は、
1.名目GDP
2.国債金利
3.PB
の三つになる。国債金利とPB赤字が、政府債務残高の増加要因である。
週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~
三橋貴明(経世論研究所所長)