… … …(記事全文2,339文字)日本は未だにデフレーション(総需要不足)が継続しているが、物価は上昇している。
そもそも、デフレーションの語源であるDeflateとは「萎む」という意味である。すなわち、需要が萎む経済現象だ。
需要がDeflateしていたとしても、物価が上昇することはあり得る。具体的には、二つの要因による。
一つ目は、消費税の増税だ。
取引に課税される消費税が増税されると、企業はコスト増分を価格転嫁し、需給とは無関係に物価が上昇する。
二つ目は、輸入物価の上昇である。
輸入物価や消費税率が上昇し、消費者物価が上昇したとしても、別に需要不足が解消されているとは限らない。
需要とは、つまりはGDPだ。GDPとは、
「生産者が財やサービスを生産し、顧客が支出し、生産者が所得を得る」
という、生産活動そのものである。上記所得創出のプロセスにおいて、生産、支出、所得の三つは、必ずイコールになる。
単純に物価が上昇しただけであれば、生産者が生産する財やサービスの価格が引き上げられたということで、少なくとも生産者の名目所得は必ず増える。
とはいえ、上記に当てはまらないケースがある。すなわち、消費増税と輸入物価上昇だ。
消費税が増税されると、確かに物価は上昇するが、増加した所得分は「政府」に納税されてしまうため、生産者所得は増えない。
輸入物価が上昇した場合、所得増分は外国の生産者が受け取る。日本国民の所得が増えるわけではない。
消費税増税や輸入物価上昇は、物価が上昇しているにも関わらず、日本国民の所得は全く増えていない。
つまりは、実質賃金が下がる。実質賃金の下落は、当たり前だが国内の需要抑制要因になる。つまりは、デフレ化だ。
要するに、インフレ・デフレをナイーブ(幼稚という意味)に「物価の上昇・下落」と認識することは、そもそも言葉の定義からして間違っている上に、現実を正しく認識することが不可能になるという話なのだ。
週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~
三橋貴明(経世論研究所所長)