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週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~

三橋貴明(経世論研究所所長)

三橋貴明

103万円という年収の壁

第五十回衆議院選挙で自民党・公明党という与党が敗北。過半数割れに追い込まれた。

「手取りを増やす」と公約に掲げた国民民主党が躍進し、現在「103万円」という年収の壁を「178万円」に引き上げる議論が行われている。

誤解している人が少なくないが、年収の壁引き上げは「全ての勤労者」に恩恵が及ぶ政策である。

そもそも、103万円の壁とは何なのか?

まずは、所得税には基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)がある。両控除額の合計が103万円なのだ。

というわけで、年収103万円以下の勤労者は、その所得に課税されない。

103万円という金額は、何と1995年に決まったものだ。

その後、最低賃金はおよそ1.7倍に上昇しているため、基礎控除額と給与所得控除額の合計を178万円に引き上げる必要がある、という政策で、至極真っ当である。

しかも、学生やフリーターなどで、家族の扶養に入っている人は、年収が103万円を超えると扶養から外れる。

結果、両親などの扶養者の所得税と住民税が増えてしまう。

特に、19歳から22歳は他の年齢よりも控除額が大きく、所得税63万円、住民税45万円が控除されている。

仮に、両親などの扶養者の所得税率が10%だとすると、単純計算で6万3千円、住民税は一律10%であるため4万5千円と、合計で10万8千円の税負担が増えることになってしまうのだ。

というわけで、パートやアルバイトの方々は、年収合計が103万円に近づくと、毎年11月頃からシフトを減らし始める。

繁忙期に人手を確保することが困難になるため、103万円という年収の壁引き上げは企業側からも求められている政策なのだ。

自民党は、衆院選の公約に「最低時給を2020年代に1500円に」という公約を掲げていた。

とはいえ、年収の壁を放置したまま、最低時給を引き上げたところで、パート・アルバイトの「年収調整」の時期が早まるだけだ。下手をすると、10月、9月の頃から企業は人手不足に苦しむことになる。

というわけで、103万円という年収の壁引き上げは必須なのだが、

「年収が100万円前後の勤労者だけが恩恵を受ける」

と、勘違いしている人が少なくない。

実際には、全ての勤労者が減税の恩恵を受けることになる。

なぜか。

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