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田村秀男(ジャーナリスト)

田村秀男

石破茂政権はなぜ経済政策迷走を続けるのか〜G7の最財政優等生にして、経済は最悪の日本

石破茂政権の経済政策の迷走が止まらない。

石破首相は先週、カナダで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席した。最大の懸案はトランプ米大統領の鉄鋼、自動車などに対する高関税である。首相は「国難」だと言って、赤沢亮正経済再生担当相を頻繁に渡米させて、高関税撤回を求めてきた。カナダでトランプ氏と会って決着をもくろんだが、トランプ氏は30分間、会談に応じただけで、首相は何の成果も得られなかった。

ここで留意すべきは、日本は対米など輸出偏重の経済構造になっていることだ。かつて、日本は「輸出立国」だといわれた1970年代でも輸出総額の対国内総生産(GDP)比率は10%程度だった。90年代後半の平成バブル崩壊不況後、経済再生のため政府がとった方策は外需重視だ。じわじわと輸出比率を引き上げてきた。2024年度は23%に上り、中国の20%を超えた。日本の対米輸出はGDPの約4%を占め、1割減るだけでもゼロ・コンマ台の実質成長率の日本の景気は沈みかねない。輸出依存が強まってきた背景には、慢性デフレに伴う内需不振がある。内需の柱である家計消費を支える実質賃金は30年間も下降トレンドが続いている。

G7の財政最優等生日本は過去最大規模の緊縮予算を組む

石破政権が6月13日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」は「減税政策よりも賃上げ政策こそが成長戦略の要」とうたった。「1%程度の実質賃金」上昇に向け、「中小企業・小規模事業者への適切な価格転嫁、生産性向上、経営基盤を強化する事業承継・M&Aを後押しする」という。だが、企業は実質需要が増えないことには物価上昇を超す賃上げには踏み切れない。当然、政府の出番である。何しろ政府予算規模は一般会計、特別会計合わせてGDPの6割近くを占める。なのに、25年度政府予算の一般歳出は0・5兆円増やしているだけで、税収は8・8兆円増。つまり、国民からネットで8・3兆円分の需要を吸い上げ、民間に戻さない。この緊縮額は当初予算としては過去最大規模である。

ところが、メディアは2025年度政府予算案が決まったとき「税収増、予算再び膨張 来年度案決定 最大の115兆円」(日本経済新聞朝刊2024年12月28日1面トップ)と,歳出の膨張を問題にした。財務官僚のブリーフィングを鵜呑みするから、膨張だ、大変だと騒ぐのである。GDPの5割以上を占める政府部門の歳出が膨らんでいるように見えても、当該年度の経済への影響をみるためには、増える税収をどれだけ歳出で民間に還流させるか、税収と歳出はどれだけ増えているのかに注目すべきなのは、経済常識なのに、その常識に欠けているから読者をミスリードする。

財務官僚はそんな財研記者を「ポチ」と呼ぶが、かれらもまた、経済無知なのである。

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