… … …(記事全文1,950文字)トランプ米政権の高関税政策は実のところ、ドル高がもたらす米国産業の国際競争力喪失分を取り戻す狙いがある。
ドル高と言えば、トランプ氏が相互関税を打ち出した2025年4月より40年前のワシントンを思い出す。当時、筆者は日本経済新聞ワシントン駐在だった。ドル高・円安が進行する中、米議会は対日貿易赤字の拡大にゴウを煮やし、米上院財政委員会が対日報復法案を可決していた。対日報復の手段は高関税であり、保護貿易だ。自由貿易主義者のレーガン大統領はもちろん反対だ。1930年代の大恐慌を導いたのは高関税実施を定めた1930年関税法(スムートホーレー法)だと信じている。大統領周辺は対応を迫られた。共和党の長老の戦略家で、国務長官のG・シュルツ氏はそこで、日本に対し貿易不均衡是正のための内需拡大策を求めると表明した。すると翌日には、財務長官のJ・ベーカー氏がシュルツ発言に呼応してドル高を是正するための国際会議を開く意向を示した。内需拡大策とは財政出動に結びつくので、財政規律を重視する日本の大蔵省はそれを警戒するが、ドル高・円安是正のための為替レートの調整なら同意できる。