Foomii(フーミー)

増田悦佐の世界情勢を読む

増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)

増田悦佐

軍事技術開発競争に未曽有の大逆転劇発生 前編

●    イランは緒戦で惨敗を喫したように見えたが


2025年6月13日、イスラエル軍の爆撃機とミサイルが突如イランの首都テヘランを始め数カ所を襲い、イラン正規軍と革命防衛隊の幹部将校たちが会議を開いていた革命防衛隊本部のビルが焼失するほどの爆撃の中でほぼ全員命を落としました。

さらに、防空用迎撃ミサイルの管制指令室の入ったビルも大破して、一時イラン上空はミサイル攻撃に対してまったく無防備になりました。

当然イスラエル軍のミサイルがイランの主要都市、石油精製施設、発電所などを標的として発射され、ほとんど迎撃も受けずに標的近辺に着弾し、イラン各地で多大な被害を及ぼしました。

今でもこのニュースに接したときの暗澹たる心境は忘れられません。フーシ派イエメン軍だけは驚異的な粘りと勇敢さで紅海の要衝を守りイスラエルに寄港する船舶に対する経済封鎖を続けています。

ですが、レバノンのヒズボラ幹部が会議をしていたビルごと爆破され、主要な戦闘員の多くがポケベル爆弾によって命を失うか、手のひらから先を両手とも引きちぎられ戦闘力を大幅にそがれています

さらに、最近また内戦が再燃する気配のあるシリアも、イランからヒズボラへの武器弾薬などの供給ルート維持を許していたバシャール・アサド政権が復権する見込みはほとんどありません

1~2日経ってからイスラエルによる対イラン先制攻撃で最大の力を発揮したのは、爆撃機でもミサイルでもなかったという裏情報を入手したときには、いったいパレスチナの味方をしているイスラム諸国は、何度同じ手で騙されれば気が済むのかといらだちさえ感じました。

イスラム諸国の人々は、一般大衆だけではなく、政治家や軍人にいたるまでイスラエル軍と対峙するには人が好過ぎるのではないかとさえ思ったのです。

これはもう、米軍・イスラエル軍御用達のパランティアが、自前のデータベースとアマゾンの陸上搬送経路情報やグーグルマップのストリートビューを駆使して展開してきた、敵の有力幹部を一挙に大量暗殺するときの常套手段だったからです。

まず、標的となるビルのすぐそばに、バラバラにして搬入した武器弾薬の部品や中間財を組み立てる仮設兵器工場を設営する。そして敵軍の幹部の中に潜んでいる内通者に日時を決めて、そこで当人しか出席できない幹部級だけを集めた重要会議を開かせる

当日、実際に幹部級の将軍たちが揃っていることを確認してから、仕込んでおいた爆薬の導火線にスイッチを入れる。あとは、指揮命令系統が乱れて統率の効かなくなった敵軍兵士たちをしり目にやりたい放題というわけです。

またしても、まんまとこの手に引っかかってしまったのかと思ったのですが、当日のうちにミサイル迎撃システムが一部復旧し、またイラン側のミサイルも6重から7重の防衛網を布いたイスラエル領内に着弾しはじめたとのニュースに接して、少し希望が見えてきました。

大破した防空システム管制指令室配線を元どおりに修復するのは恐ろしく間のかかる作業です。その日のうちに部分修復できたということは、何を意味するのでしょうか。

パランティアによる敵陣後方での攪乱作戦の定石を研究し、それに備えてそっくり同じ配線をした予備の管制指令室を別の場所に設置し、スイッチだけ入れ換えれば防空システムを短期間で再稼働できるように準備していたのではないかと思い至ったのです。

だとすれば、内通者に誘い込まれるかたちで大勢の幹部級将軍たちが集まっていたのも、自分たちの命を犠牲にすることを覚悟の上での誘いの隙だったということになります。

あとからいろいろ資料を集めてみると、そう考えたほうがはるかに自然だと思える状況証拠がバラバラを出てきました。イスラエルのネタニヤフ首相が、もう30年以上執念深くイランとの開戦機会を狙っていたのは、周知の事実です。

そしてイラン側にとってもし開戦を避けたければ、絶対に踏み込んではいけないレッドラインが「イラン核兵器開発に成功」あるいは「イラン核兵器製造まであと一歩」というニュースが出ることでした。

そのへんの事情については次の年表をご覧いただくと、ネタニヤフがいかに延々と同じ「イラン核兵器保有の脅威」を訴え続けてきたかが分かります。



ですから、もしイラン側がまだ開戦の準備ができていなかったとすれば、絶対に口に出してはいけなかったのが「核兵器開発に成功した」とか「核兵器開発まであと一歩の段階に到達した」の文言でした。

… … …(記事全文8,861文字)
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