… … …(記事全文13,428文字)後世「ああ、世界が転換する節目を知らせる号砲は、あれだったんだな」と思える事件が、当初は実にさりげないありきたりのニュースに見えるのは、よくあることです。
今年8月1日に世界3大格付会社の1社、フィッチが米国債をトリプルAから1段階格下げしたのも、そんなふうに後から重大さがわかるニュースでしょう。
ちょうど2年前の2011年8月には、もうひとつの大手格付け会社、S&Pグローバルも米国債を格下げをしていましたし、発表された当時の印象としてはどちらかと言えば既視感のある格下げでした。
ところが、このニュースをきっかけにそれまでもじりじり上がりつづけていたアメリカ中のあらゆる確定利付き商品(かんたんに言えば金利支払い義務のある借金全体)の金利上昇が急激に加速したのです。
● フィッチの格下げをきっかけに米国債カラ売りが史上最大に
その変化の激しさは次の2段組グラフにもはっきり表れています。
上段には米国債の流通残高が出ていますが、今年に入ってから伸びが加速して、責任ある格付け機関としては「このまま進むとハイパーインフレで元利返済負担を激減させるしか手のないところに追いこまれる」と警鐘を鳴らしたのも無理ありません。
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増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)