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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #157:ソロモン諸島にて政変が起こる!①

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

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第157号(2024年5月5日発行)、今回のラインアップです。

①世界各国の地理情報

 ~ソロモン諸島にて政変が起こる!①

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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で157回目のメルマガ配信となります。


5月となりました。

本メルマガのご購読を継続していただいたみなさま、大変感謝いたします。

ありがとうございます。


伝統的な国家の概念は、「国民、主権、領域」という三つの要素によって定義され、国家が独立して機能するための基本的な要件とされてきました。しかし、現代世界においては、これらの要素だけでは国家の独立を完全には語れなくなりつつあるように思います。グローバリゼーション、世界各国の相互依存が深化しつつあるため、一国だけで完結する国家は事実上存在しなくなっています。逆に言えば、「仲間同士」という集まりが世界には複数できあがる土壌があるともいえます。


しかし国家間の連携は避けられない現実であり、食料、エネルギー、教育、テクノロジーなど、あらゆる安全保障の要素が国境を越えて影響を及ぼしています。たとえば、多くの国が食料安全保障のために輸入に依存しており、異常気象や国際的な市場の変動が直接的に国民の生活に影響を及ぼすことがあります。だからこそモノカルチャー経済は危ういものであり、産業の多角化を目指してきたわけです。そして相互依存の深化は、各国が自国の資源だけで完全な自給自足を目指すことの難しさを浮き彫りにしています。


テクノロジーにおいては、デジタル技術の進展が国境を越えて急速に進み、サイバーセキュリティの問題からデータのプライバシー保護まで、新たな課題が生じています。これらの技術的な問題は国単独で解決するには限界があり、国際的なルール作りや共同対応が必要不可欠です。


これらの事例から明らかなように、国家の独立性は相対的なものとなり、国際社会における協調と協力がますます重要になっています。真の意味での独立とは、外部との健全な関係を築きながら、国内の安定と発展を図ることにあると言えるでしょう。


このバランスをどのようにとるかが、現代の国家運営の大きな課題となっています。


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!


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①世界各国の地理情報


 ~ソロモン諸島にて政変が起こる!①


南太平洋に位置する国に、「ソロモン諸島」があります。

わたくしがここでいう「ソロモン諸島」とは国を指しているのであって、複数の島が集まって形成される、地理的な「ソロモン諸島」ではありません。


一般的に、島しょが広い範囲に散らばっている地域が政治的、または文化的にまとまっている場合に「諸島」と呼ぶのに対し、島しょが比較的近しい範囲にまとまっている地域を「群島」といいます。明確な違いがあるわけではないのですが、文脈によって恣意的に使われることが多いため、使い分けは結構曖昧です。


国としての「ソロモン諸島(Solomon Islands)」は、主要6島と100以上を数える小さい島々から形成されます。陸続きであれば共有する文化があろうかと思いますが、それぞれの島しょには固有の文化があるようで、100を超える民族が存在するといわれます。つまり多民族国家といえますが、英語が公用語であり、70万7851人(2021年、世界銀行)いる国民のほとんどがピジン語を話しますので、それぞれの国民が用いる言語が異なり会話が成立しないほどの多民族国家ではなさそうです。


ちなみにピジン語は「ピジン英語」とも表記されることがあり(外務省の「ソロモン諸島」の紹介ページなど)、英語をベースとした現地言語と混合してできた言葉です。現地人と現地語を話せない人との間で共有する言語を「ピジン語」といい、英語がベースとなれば「ピジン英語」と呼ばれます。「pidgin(ピジン)」は「business」を語源とする説があり、中国読み風に読んだことがはじまりのようです。


こうした生まれたピジン語は、その話者たちの子孫にとっては母語となっていくわけで、こうして母語として定着した言語をクレオール言語といいます。例えば、世界初の黒人主権国家であるハイチは、かつてフランスの植民地だったこともあり、ピジンフランス語が生まれました。これが定着してクレオール言語となったのがハイチ語というわけです。


ソロモン諸島は1893年にイギリス領となり、先の大戦中、一時的に日本が占領したこともありましたが、およそ7か月におよぶガダルカナル島の戦い(1942.8~1943.2)に敗れると、アメリカ合衆国によって占領されました。1978年に英連邦加盟国、かつ英連邦王国として独立しました。英連邦王国とは「イギリス国王を自国の君主として戴く主権国家」ですから、ソロモン諸島の大統領は存在せず、英国王チャールズ3世がソロモン諸島国王であり、行政府の長として首相の職が設置されています。


当メルマガにおいて、過去に「ソロモン諸島」を取り上げたことが5回あります。


▼#69:スリランカの国歌は炭とラジャパクサ大統領の辞任表明

https://foomii.com/00223/2022071100033096821

▼#71:「欧米vs中露」のパワーバランスに翻弄される小国

https://foomii.com/00223/2022073121300097606

▼#83:インドネシアを「楯」にするオーストラリア

https://foomii.com/00223/20221023210000101021

▼#111:フィジーが見据えるオセアニアでの存在感

https://foomii.com/00223/20230521234058109326

▼#125:ソロモン諸島が、なぜ中国に同調するのかを理解する

https://foomii.com/00223/20230903220000113625


過去にソロモン諸島を取り上げたときは、

… … …(記事全文6,907文字)
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